第281話
「その節は誠に申し訳ございませんでした……っ」
部屋に戻ると
本当見事な土下座だな。もうね。本場って感じ。……なんのだよってな。
ただ本当に綺麗な土下座だわ~。惚れ惚れするわ~。気品さえ感じるわ~。これなら大概のことには目をつぶろうってなるよね~。
だが許さん。俺はお前をいじめると決めている。
「お前はなにを謝っているんだ? なにを悪いと思って頭を下げているんだ?」
「にゃーにゃー!」
「……」
邪魔をしてきたコロナを持ち上げてっと。よし、仕切り直し。
お前もあとでとっちめてやるから覚悟しとけよ。
「ほら。なにを悪いと思って謝ってるのか。お前の口から聞かせろよ」
「……っ」
「さぁ。早くぅ~」
マナを垂れ流して圧をかけてく。
肩がプルプル震えて耳は真っ赤。たぶん半泣きになってることだろう。
ミケがいたらレディにうんたら~とか抗議してくる状況だね。
でも残念ヤツはいない。いたところでやめるつもりはない。俺に慈悲はない。故にカナラが助かる道はない。
「……ぼ、坊に。子供の坊に大人としてしてはならぬ行為等をしてしまいまして」
等ってつけんな。なんかいっぱいあるみたいだろ。
……もしかして、あるの?
え、俺の知らないところでお前なにかしてたの?
そこんとこ詳しく……。
「ち、ちなみにどんな?」
「お、お風呂に入った時色々なところあむあむしたり……」
それは知ってる。
「膝枕してもろて甘えたり……」
それも知ってる。
「使った後のお箸ねぶったり……」
ちょっと待ってそれ知らない。
「洗濯物の下着嗅いだり……」
それも知らない!
「舐めたり……」
舐めんな。
「それから――」
その後。かれこれ俺の知らないことを含め十数個の余罪を吐露させまして。うん。
あのね。思ったより出てきたもんだから。ちょっと混乱してるわ。
「ひ、酷いよ坊……。わかってるのにわざわざ全部言わせはるなんて……」
いやむしろ俺の知ってることのが少なかったんだけど。
お前俺が縮んでるときにとんでも変態行為に及びすぎだわ。さすがにちゃんと引いた。俺、カナラに引いた。
まだちょっと精神的ショックから立ち直るには時間がほしいけど無理矢理気を取り直しまして。
罪を吐かせたことだし。今度は罰を与えなくてはいけない。
この暴露が罰かと言われたら反論できないけど。こいつのことだ。そのへんは俺がごり押せばなにもできないだろう。
色々やらかしても都合の良い女代表は変わらない。変態と都合の良い女は共存できる。
ってことで判決を下す。
「カナラよ。お前は人道を外れた行いをしました」
「まぁ、鬼やし……」
「……」
それ言われたらぐぅの音も出ないだろうが。正論だけで押しきれないよバカ野郎。
……いや待て待て。鬼ならまぁって思いかけちゃったけど。これは屁理屈。そんなもんで俺が引き下がる道理はない。
「とにかく。お前はやらかした。であれば償わなければいけないよなぁ?」
「……そ、そうね。うん。わかった。どんな事でもします」
覚悟を決めたキリッとした顔。幼い子供に欲情した面と同じとは思えないな……。
「その言葉に偽りはないな?」
「女に二言はあらへんよ」
わお。今度は男前。
なるほどなるほど。ちゃんと反省してるし覚悟もあると。
じゃあ俺が与える罰も思ったよりかは軽いのかもしれないな。
「それじゃしばらく俺との接触禁止で♪ 話したりは良いけど触るのはダメ。そうだな。一週間くらいでどうよ?」
「……」
おや? 黙り込んでというか固まって、様子がおかしくなったぞ?
なんでお前青ざめた顔で俺の顔を見てくるの?
まるで「正気か?」とか「鬼!」とでも言いたげな面だけど。まさか……ねぇ?
「ぼ、坊……もうちょっと考えへん……? そ、それはあまりにあんまりで私も耐えられる気がせぇへんっていうか……」
即緩和を求めるんじゃないよ。さっきの覚悟どこ行った?
「お願いじまずぅ~……! 七日も坊に触れられへん地獄味わうくらいなら腹切りますからぁ……!」
ぶっちゃけそれ大したことないだろ。腹切ったくらいじゃ死なないだろうからな!
「却下だ。潔くお仕置きされてろ」
「お仕置き言うんならおしりぺんぺんでもええと思うんよ!」
「却下だ」
「しょんなぁ~!」
魅力的な提案だけどむしろお前にとってご褒美だろ。嬉々としてひっぱたかれてるのが目に浮かぶわ。
「……ふふん♪」
カナラがしばらく俺との接触を禁止されるのが確定したと察し、
おいおい。コロナよ。もうお前の世界はそんなに甘くないんだぜ?
「コロナ。お前も同罪だ。同じお仕置きを受けてもらう」
「……や――」
「お前良い子にしてても時間ちょっと空いたらすぐまたワガママになってるが。あれ計算だろ? もうわかってるから。それにお姉さんにも目覚めたんだ。だったら甘えなんて許されなくなってくるよな? ってわけでこれからはちゃんと厳しくしてく。泣き叫ぼうが絶対に妥協しねぇから覚悟しとけよ」
イヤイヤをする前に先回り。コロナは沈黙。
「……」
感情表現は豊かだが表情筋が固いコロナにしては珍しくあからさまに、そしてみるみると絶望的な面になった。
普通ならここでさらに駄々をこねるところなんだろうけど。お姉さんってワードと俺の本気が伝わったんだろう。反抗の兆しは見えない。
こいつ実は頭良いからな。もう同じ手は通じないとわかったろ。
これも良い機会だし。これを気に完全に一歩成長したまえよコロナ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます