第276話

「とりあえず、食事はまだもう少しかかるから適当に待っていてくれ」

「「「はぁ~い」」」

 まるで母親と子供の友人見たいなやり取りやめい。ロッテはまだ膜張り娘だったはずなんだからよ。

 いやまぁ群れでは他の雌の子供の世話もちらほらしてたとか聞いたけども。

「うっし! じゃあ待ってる間に家捜しすっか!」

 お約束その2をかますな。伊鶴バカ

 てか俺の私物なんてほとんどねぇよ。

 普段からそこそこ人口密度高ぇわ。久茂井先輩からもらった女共の服の置き場もあるわ。毎日キロ単位で消化されるリリンのおやつもあるわ。

 そんな状況で俺のもんどこに置くってんだ。

 まずもって元々そこまで物欲強いほうじゃないからリリンたちがいようがいまいがそこまで散らかった部屋にはならなかったろうけどさ。

 むしろロッテやカナラが掃除してるとはいえどもこいつらの物があるぶん今のが汚いまである。

 言い方めっちゃ悪くなったけど。たぶんそうなってた。

「うぉおおおおお!? さっちゃんこんなパンツはいてんのか!? 今時ブリーフとかウケる!」

 違ぇわ。それはコロナの。

 こいつケツデケェから間に合わせとして一応ストックしてんだよ。

 本人はノーパンだろうが全裸だろうが気にしないたちでも俺が気にするからな。

「にょわぁあん!? こ、こんなエロティックなパンツまで! さっちゃんの趣味か!? えっぐ!」

 違う。それは先輩が寄越したリリンの。

 てかお前さっきからなに本当に家捜ししてんだよ。

 しかも手に取るのがことごとくパンツって頭沸きすぎだろ。落ち着くべきだと思うぞさすがに。

 あれ? っていうかこういうときいつも止めてくれる人が今日はおとなしくないな? いったいどうし――

「……」

 おい嘘だろ。顔赤らめてパンツから目背けてるよ……。

 遊んでそうな見た目なのに純情ぶりやがってあざといぞ。

 ……いや、冷静に考えたら女子としてはこれが普通な反応か。

 パンツ持ってはしゃいでる伊鶴がおかしい。

「あんまり散らかしちゃダメですよー。人の部屋なんですから」

「才君の物以外もあるだろうしな。程々に」

 ついでに男のパンツ見てケロッとしてるこの二人も結構おかしい。

 てか俺を労れよ。

 散らかしちゃダメって片付けるであろうロッテを気遣ってのことで、俺以外ってつまり俺はどうでも良いってことじゃねぇか。

「まったく……淑女レディのすることじゃないよ……」

 と、言いつつミケも止めるつもりないんだな。

 そりゃそうか。下手に動いたら見られちゃうもんな。一部大変になってる部位を他のヤツに。

 表情に出さないようにしてるけど、匂いにやられて反応してることはわかってんだからな。俺かその気になれば超気まずい思いさせてやれるぞ。ぐへへ。

「あれ? なんじゃこの透け透けの服は。またさっちゃんの趣味か?」

 だからそれは先輩の寄越したやつ。

 サイズ的に最初らへんにもらったリリンの寝間着ベビードールだな。

 最初ん頃はリリンも身長130なかったから超背徳的だけど。雰囲気は今と変わらないから似合うっちゃ似合う。が、幸運なことにパーカーとかラフなほうが好みみたいで着ることはほとんどなかったけどな。

 ドレス一番着なれてるのにベビードールよりラフスタイルが良いってのもよくわかんねぇ女だよ。

「あ! ちょっとさっちゃんひんむいてこれ着せようぜ!」

 トチ狂ったこと抜かすのも大概にしろよテメェ。人がちんちくりんになってることを良いことに調子ぶっこきやがって。

 いやすまん。お前は仮に俺がいつも通りでも同じことしてそうだな。失言だった。

 お前はいつだってイカれてる。

「ほらぁ~こっちおいで~。おねえちゃんとイイことしようぜぇ~」

 こっち来い言っときながらテメェから近づいてきてんじゃねぇか!

「はぁはぁ……。やっぱちっちゃいと可愛い……。さっちゃんの分際で生意気だわぁ……」

 欲にまみれたその汚ぇ面で近づいてくるんじゃねぇ! あ、触んな!

「いった!? 子供なのに力強っ!? くそう。そっちがその気ならこっちも大人げなくいかせてもらうかんな!?」

 ちくしょう。顔面はたいたのに全然堪えてねぇ……!

 さすがに殴られ慣れてやがるなこの野郎!

「こん……のぉ! さっさと脱げぇい!」「……っ」

 ほ、本当に力強くしてきやがった! どんだけ俺を剥きたいんだよ!

 しかも人前だぞ! 普通の子供ならトラウマ覚える可能性だってあるだろが! お前に慈悲も良心もねぇのか!?

「いい加減に……諦めろぉい!」

 こっちの台詞だド畜生ォ!


 ――すっぽーん!


「「「あ」」」

 なぜ、俺たちが気の抜けた声を出したのか。

 それはまずもって伊鶴が下着含め俺の服を奪ってぶん投げたから。

 次に、から。

 どういうことかというと、ようはただいつもの俺が全裸になって伊鶴に押し倒される形になってるってだけ。

 うん。大問題。

「しょ、食事前になんてもの見せんだバカ野郎!?」

 食事前に子供の服を奪おうとしたお前に言われたくねぇ!!!

 しかも見えたのはお前が後ろに飛び退きながら視線を落としたからだからな! 自業自得だよ!

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