第274話
まったく。妙な流れになったもんだ。
まさか俺が自室に誰かを招くことになるとは。
いや俺自身は許可してないしできるなら拒否したいところなんだけどね?
現状そのあたりの全権を握ってるのがカナラなもんでどうにもできない。
くそう。縮んでなきゃ絶対に許さねぇのに……。
戻ったら覚えてやがれよ。俺の許可なく部屋に足を踏み入れたヤツ全員に報復してやるからな。
まだ入られてないから誰にやるかは未定だけど。
「お。やっと伊鶴の番か」
「前の試合が長引いてましたからね~」
「まぁ始まっちゃえばすぐに終わらせてきそうだけどね。最近の彼女は特にすごいし」
と、その前に。まずは試合観戦からだな。
なんだかこうやって全員集まっていつもの試合を見るのも久しぶりな気がする。
俺以外の面子は結構集まるらしいから主に俺のせいでそろわないんですけどねー。
「あむあむ」
「あらあら。お口の周りそないにして~。仕方のない子やねぇころちゃんは」
「んむゅ……やぁ~」
「やぁやないのぉ~」
「ふん!」
「あいたっ」
伊鶴の演習試合直前ってのに隣では菓子を貪るコロナと世話をするカナラ。
別にそれは良いんだけど俺を挟んでやるのはやめてくれませんかね?
おっぱい押し付けられて視界が半分なくなるんで。
『勝者賀古治伊鶴』
「しゃおらぁ!」
はっや。
開始五秒で終わらせやがった。
しかもしょっぱなハウラウランと限界同調とか容赦無さすぎだろお前。
登場時から妙に気合入ってるとは思ってたけどさ……。もうちょい手加減してやれよ……。相手が不憫過ぎるから。
「長引いてたさっきと打って変わりすぎ笑う」
「こうなってくると試合より普段の訓練のがキツく思えてきますよねー」
「よし! ミスターに言って彼女のメニューをさらにハードにしてもらおう!」
ミケよ。もしそれを実行してバレたらきっとタコ殴りにされるぞ。
だが構わん。やれ。被害を受けるのはお前と伊鶴の二人だからな。俺に害はない。
「次はゆみちゃんの番か」
「こっちも早く終わる方にジュース一本」
「じゃあ私は意外と手こずる方で」
「友達で賭け事すんのやめなよ……」
ミケと八千葉が賭け始めたのでたしなめる多美。
毎回思うけどなんでこいつが一番真面目なんだろうか。
やっぱり、人間って見た目じゃないんだね。
俺もこんなんだけどなんかいわゆるハーレム的な状況に置かれてるしな。
ま、一般的なハーレムみたいな甘い雰囲気になることがあんまりないんだけども。
基本襲うか襲われるかだもんなぁ~……。あ~不健全な俺の生活。
せめて、平和であってほしいと願う。すでに果たされてないけれど。
『勝者和宮内夕美斗』
「結構……苦戦というか……思ったより時間かかったね」
「ということは賭けは私の勝ちですね。やったー! ごちです」
「くぅ~……! 男に二言はない! 買ってくる!」
「あ、今は別にいらないんでまた今度で」
「あ、そうですか……」
駆け出しそうになるミケをしれっとすかしていく八千葉。
こいつも最初は弱気な感じだったけど最近は伊鶴の影響かつかみどころのない感じに変わってきたよなぁ~……。
あいつは良くも悪くも影響力あるな……。良い影響が思いあたらないのがなんともだけど。
「にしても、なんか今日様子違かったね」
「確かに。やりづらそうでしたね」
「心境の変化でもあったのかな?」
いくら付き合いの悪い俺でも、夕美斗の変化は感じ取れたな。
あいつの場合召喚魔法師としては最初っから独特だったからなぁ~……。
何気に伊鶴や俺の前に自分の体使って最初に試合に出たのは夕美斗だし。
今でも俺たちと違って
あ~いや、今でもってのは間違いだな。
今回のぎこちなさの理由はそのニスニルも前に出てたことだから。
頑なに自分だけ前に出る戦い方から共闘っぽくしようとしてたんだよな。初めて。
……最終的には力押しになってたけどな。慣れないことをするから。
いずれにせよ、変化があったのは確かだ。
はぁ~……。気合の入った伊鶴にスタイルを変えようとしてる夕美斗……ねぇ。
これまた面倒事の予兆じゃない……よね?
俺はそう信じたい。
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