第263話

「はい坊どうぞぉ~♪ あ~んしてぇ~♪ あぁ~ん♪」

「……あむ」

「上手上手ぅ~♪ ちゃんとこぼさんと食べれて偉いなぁ~♪ んふふ♪」

 食事の時間になってくれたお陰で一時休戦? みたいな感じでコロナはおとなしくなった。一人黙々と飯を食ってるよ。

 が、今度はカナラにとっ捕まりました。ひたすら口に食い物を運ばれてます。

「……むぐむぐ」

「んもう♪ そないちっちゃなお口でもぐもぐしてぇ~♪ 可愛かあいなぁ♪ 可愛いなぁ~♪」

 幸せそうですね。何よりだよ。

 でもな? 俺は一人で食えるんだよ? お分かりになられてます? なられてませんね。仮になっててもきっとお前は食わすのをやめないだろうな。その面じゃ。

「ところで一つ気になるんだが」

「ん? なぁにろうちゃん」

「才の服はそれだけなのか?」

「そうねぇ~。これしかもらってないけど……」

 ロッテの言葉で気づいたけどそういや元々着てた制服とこの服以外特別変わった物持ってなかったな。

 パンツは……最悪売店やらで買えるけど。パジャマとか部屋着とか複数必要だよな。一張羅だけじゃ衣食住の衣はまかなえませんぞカナラママ。

「あ……あ~……。えっとぉ~……」

「まさかとは思うが……」

 この反応十中八九……。

「も、貰い損ねました……」

「「……」」

 だよね~。このうっかり者め~。

 さてさて着替えがないってことはさ? 俺はこのあと風呂に入ったら同じのを着なきゃいけないんですかね? それとも全裸でいろと?

「あ、あ、で、でもな? お家帰れば着物あるからね? 甚平さんとかよう似合いそうやわ~。早速取ってくるね!」

 と、言ってカナラは煙の中に消えていったとさ。

 ふぅ~。一時はどうなるかと思ったけど。なにはともあれ俺は着替えを手に入れ、母性からも解放されたのであったぁ~。

「にゃーにゃー。あ~」

 と、思ったら今度はお前かい。こんにゃろう。黙々と食ってた理由はこれかい。こざかしいヤツ。

 しかしその差し出してるフォークはお前の。俺には俺のお箸がある! カナラが置いていったお箸がな! これで食えば万事解け――。

「あん」

「うぶ……っ!」

 こ、この野郎……! 人が口に物入れてるときに無理矢理突っ込んできやがって!

 俺の口は定員オーバーなんです! 駆け込み乗車はお止めください!

「あん! あん! あん! むふ~♪」

 ちょ、ちょっと待って! 楽しくなってませんかコロナさん!? 詰め込みすぎだって! あ、顎外れるから! 脱臼しちゃうのぉ~!!!

「ただいま~……って! ころちゃんなにやってはるん!? そない馬乗りになってご飯食べさせたらあかんよ!?」

「ぶぅ~」

 か、カナラ! 戻ったか! は、早くこの猛獣を止めてくれ! 顎はもう外れちまって手遅れだが今度は喉から胃にかけて渋滞が起こってるんです!

 早くしないと僕は胃の破裂後体内に散らばった飯の残骸を影で掃除するハメになっちゃう!

「お腹に乗ったら戻って来ちゃうでしょう!?」

 違うそうじゃない。そうじゃないぞカナラ。

 まずやっちゃダメってことを教えてくださいお母さん。

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