第258話
「ご苦労後輩。もう行っていいぞ」
「あ、はーい。じゃあこれで」
「!?」
「ちょい待って!?」
先輩にコロナとカナラを引き渡したら当人たちが目を見開いて引き止めてきた。怖い。
「なに?」
「いや、なにって……。坊どこ行きはるん?」
「ふんふん!」
「どこってそりゃあ……帰ろうかなって」
「なんでぇ!?」
「……!?」
目がさらに開いた。怖い。
薄々気づいてたけどやっぱ比較的俺にベッタリするタイプの二人を置き去りにするのは無理だったか。
特にコロナは強行したら鳴き叫んで先輩たちの鼓膜を全滅させかねない。
だけどこれはせっかくの機会とも言えるんだよな。
留守番はできるし、保育のプロ相手なら任せられる。
が! 先輩という珍獣に預けても良い子にしていられなければ真の良い子とは呼べないだろう。
ってわけでコロナよ。俺はお前を突き放す。とても心苦しいがな。とても心苦しいがな!
「コロナ。あとでちゃんと迎えに来るからあの珍獣と少しの間過ごしてみるんだ。もしかしたら新たな世界に連れてかれるかもしれないけれど。そうなっても俺はお前のことを大切にするよ」
「にゃ、にゃーにゃー……!」
うん。それはなんとなく感動的なニュアンス出しときゃ良いと思って言ったやつだな。空気が読めて偉いぞー。
「じゃ、先輩あとで迎えに来るんで終わったら連絡ください。カナラ。先輩の度が過ぎたら殺して良いぞ」
「酷い言い様だけどモチベ上がるための生け贄を用意」
「わ、わかった……。置いてかれるって事も含めて。はぁ……。ころちゃんに何かされそうになったら素っ首千切るわ」
「あっはっはー! 桃之生さんの言葉が冗談に聞こえないなぁ!」
冗談じゃないからね。そいつ殺ると言ったら殺る女ですよ先輩。
運が良かったらまた会いましょう。自重しなかったら即死だとしたら……。
………………。
さよなら先輩。あんたなんだかんだ良い先輩だったよ。
さて、珍獣に(二人の見た目年齢を足してから割って)美少女を預けたは良いけど。迎えに行くことを考えるとどっかで時間を潰さないとな。
つっても俺に暇潰しになる場所の当てなんてないんだが――。
「あ、れ? 天良寺……くん。なにしてる……の?」
廊下を歩いていると真正面から知った顔が。交流戦でも一緒だった御伽のヤツだ。
「ちょっと先輩に届け物をな」
とりあえず質問には答えておこう。特に隠すことでもないし。会話をしてちょっとでも時間を潰せたら儲けものってことで。
「へぇ……じゃあ今は帰り……かな?」
「いや、暇を持て余してるだけ」
「そう……なんだ。じゃあ、もし良ければうちの部室に来な……い?」
「お前のとこの? 他の部員に迷惑じゃないか?」
「ううん。平気。僕が入ってからしばらくして皆やめちゃったから」
「へ、へぇ~……。じゃあ遠慮する必要ないなー」
でも俺はせっかくの誘いを遠慮したい。
だって全員やめるって普通に異常だもの。
「そう、だね。寂しいけど気楽だ……よ」
でしょうね。俺も一人っきりの部活ならやってみたいかもなー。帰宅部とか。
「それでどうす……る? 来てみ……る?」
他にやることもないし……行く……かぁ~?
あ、でもその前に。
「……わかった。行く。でも先に一つだけ聞きたいんだけど」
「ん? どう……ぞ」
「お前の部活ってなに?」
「あ~……。言ってなかった……ね。僕は……ね。現代魔法研究部に入ってるん……だ」
なるほど。色々納得したわ。
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