第242話
「
D組の担任――童麻瑛夏が人域魔法師側のサポーターとしてついた。
D組はE組程よりもやる気がある者は
これについてもA組担任手地濱に突っかかれたが、「人域魔法師になにか教えられんの?w」と言ったら癇癪を起こしたとか起こしてないとか。
「あ、先輩チーッス。お世話になりまーす」
思い出したかのように充のところへ挨拶にやってくる。現役時代の上下関係は今も続いてる様子だ。
「お前の世話をするつもりは毛頭ないしお前は世話をする側だろうがこっち来るな」
「あ、ひっでぇー! 後輩の挨拶無下にしたら酷い目に合いますよ?」
「他人を敬う事と協調性がほぼほぼないお前に言われても説得力ないからな?」
「協調性に至っては先輩もそこまで……」
(ギロッ)
「おっとお前ら~。さっさと特別指導始めっぞ~」
睨まれた瑛夏は人域魔法師たちの方へ戻っていく。
「はぁ……まったく……」
相も変わらぬ
「おらおら! 異界の生物ってことわかってんのかクソガキども! 火噴く当たり前! 見えない攻撃当たり前! なんなら気づいたら体ぁ爆散されるなんざ当たり前だ! 視える攻撃だけじゃなく挙動全部で判断しろルーキー!」
あんな様子を見せつつも。瑛夏の指導は厳しく、またとても参考になるもの。
ただ、問題があるとすれば……。
(は、早い! それにやりづらい!)
(デタラメな角度とタイミングで体動かしやがって! ドピンク並みに気持ち悪いなこいつ! こんなもん挙動読めってほうが無理だってのクソ野郎が!)
(どわァ!? 気づいたら人域魔法を発動されてるんだぞォ!? こっちが攻めッ気出したら即牽制ってどんな勘!?)
(しかも打撃全てが重いな! ははは! ガードしてるのにガードした部位が壊されそうだ!)
(私ら全員相手にして
(こっちは途中入れ替わりで休憩もしてるのになんであの人は休まずに動き続けられるんだ……?)
瑛夏が人域魔法師の中でも異質というか異次元の戦闘方法なので彼らを混乱させてしまう事。
だがある意味では丁度良いとも言える。
実際。召喚魔法師はそれぞれ契約している生物は違うわけで、どんな相手が来るかわからない。
特に選抜された召喚魔法師は中でも異質中の異質六人。瑛夏に戸惑ってるようじゃ苦戦は免れないだろう。
「おいボケ! なんだこの温い攻めは!? 今どんな教育方針してんだよ政府のカスジジイどもは!?」
「「「……」」」
有意義な指導なのは認めるが、政府批判は聞かなかった事にしようと人域魔法師選抜組は心に決めた。
変わったことが起きてるのは人域魔法師達だけではない。
召喚魔法師側ではロッテも訓練に参加するようになったし、伊鶴と夕美斗はアレクサンドラの相手をするのも慣れてきた。
ボコボコされるのは変わらないが、倒れる事は減ってきているのだ。
ジュリアナもハイスピード&ハイパワーのアレクサンドラのお陰で戦闘スタイルがさらに洗練されていく。
そんな中で変わらないのはA組の御伽氷巳である。
彼はずっと訓練の様子を楽しそうに眺めているだけ。それ以外にはなにもしていない。
だが、彼には訓練の必要がないので仕方ない。その理由も交流戦で明らかになるだろう。
ここで、憐名についても触れておこう。
彼も表立っては変わらない。契約者を呼び出して全面的に任せている。
訓練でも大体同じ。
ただ、裏では違う。彼はいつだって裏でナニかを画策している。
今現在はと言うと――。
「ペシナーラの様子はどう?」
「……順調だよ。もう知性も声もない。痛覚もないし。あるのは破壊衝動と快感くらい」
「それは良かった♪」
手持ちの中でも強い部類のペシナーラで実験を行っていた。その報告を自室にてペシナーラの妹であるシャロメから受けているところ。
才との演習後、ペシナーラはずっとリベンジを渇望していた。
だがあまりにもしつこいので憐名は条件と称してペシナーラをおもちゃにした。
元々蟲を喰らって快感を得ていた女。実験なんて軽いモノだと思っていた。むしろその実験とやらで戦力を上げられるなら儲けモノだと思っていたくらいだ。
だが、ペシナーラの予想は外れ、今ではほとんど元の生物の原型を留めていない。
それはそうだ。憐名は始めから壊すつもりでペシナーラに細胞を侵し、変質させる薬を投与していたのだから。
「ところでシャロメ」
「……ん?」
「自分の姉が壊れていくところを見させてごめんね? 感想聞いて良い?」
「……謝っといて聞くことじゃないだろ」
「だって気になるんだも~ん♪」
「……ふん。別に。元々頭のおかしい人だったし。あんまり変わらない」
「あ、そ。つまんない」
シャロメの素っ気ない反応に興味をなくす憐名。その様子を見て、用事はもうないとばかりにシャロメも帰っていく。
(ペシナーラにも飽きたし。そろそろ処分しよっかな。無駄にマナ食うし。あ、どうせなら交流戦で使っちゃお♪ それで人域魔法師に処理してもらおうそうしよ♪)
部屋に残された憐名は一人。新たな遊びに心を踊らせ始める。
(楽しませてねペシナーラ。それから人域魔法師さん♪)
などと色々ありつつも時の流れは早いもので。
とうとう本日。全校生徒の強制見学の下。交流戦を迎えた。
観覧席は満員。入りきらなかった者はあらゆる場所でリアルタイムライブを観る。
また、このライブ配信は学園の公式サイトにて公開される事になってる。
まるで公式の場での試合さながら。選抜組どころか見ているだけの生徒達にも緊張が走っていて、今か今かと開戦を待ちわびる。
控え室にて、生徒同士で順番を決める。
まずは召喚魔法師側の会話。
「一番手は重要って言う……よね。どうしようか?」
「別に誰でも良いっしょ。あっちも誰来るかわかんないし。つかどんくらい強いか正確にわかんないし」
「私は……できればもう少し心の準備がしたいな……。本番に弱いから……」
「僕も最初は嫌かな~」
「あ、俺は最後で」
「大トリとか勇者かよ。それとも目立ちたがりかぁ~?」
「そんなんじゃねぇよ。妹が俺とやりたいんだと」
「……その言い方中々にえちぃな?」
「殺すぞ?」
「ごめんて。マジトーンやめれ?」
「とにかく。向こうのラストも決まってる……ということだな」
「天良寺くんの妹さん。結嶺さんと当たらないのは僕たちにとってラッキーかもね。彼女、国が定めた
「そんな化物だったのかよさっちゃんの妹!? あ、いやさっちゃんの妹だし当然っちゃ当然か」
「……どういう意味だ。つかあいつそんなことになってんのかよ」
「魔帝候補の一人だしね。もう一人いるけど。あれとも当たりたくないなぁ~」
「ほう? 誰が候補なんだ?」
「ん~……内緒♪」
「死ね」
「いやん♪」
「そろそろ……時間だよ? 早く決めない……と。さっきから静かだけど……どうかした?」
「……いえ、気持ちを落ち着けていただけです。お話はちゃんと聞いてましたよ。順番の話ですよね?」
「うん。ジュラちゃんは何番が良いの?」
「……では、最初で」
「うおマジかよ。ここにも勇者がいたわ」
「復帰戦で緊張してるので早く解放されたいだけですよ」
「さっちゃんに病院送りにされたんだっけ?」
「人聞き悪いぞ。事実だけど」
「あれは自業自得ですから。むしろご迷惑をかけた側ですし。……とりあえず。他に希望する方がいないなら行かせてもらいますね」
静かに立ち上がり、控え室を出るのはジュリアナ・フローラ。
召喚魔法師側のトップバッターはジュリアナ・フローラに決まった。
人域魔法師側。
「俺が行こう!」
「あ、そ。勝手にしろ」
「私はもう少し蓄えてからにすっぞ。雑炊とバナナをミックスベリープロテインで流し込んでる最中だからな唐揚げ」
「私も異論はありません」
「きさらは最後希望だぞォ! 全員の試合を忘れさせてやるぞォ!」
「あ、ごめんなさい。お互い最後に出ようって兄と約束してて……」
「ぐぬゥ! じゃあ最後から二番目! 結嶺ちゃんの影薄くしてやるぞォ!」
「いやドピンクじゃ無理だろ」
「やったるぞォ!」
「はっはっは! 賑やかな割りに応援の言葉が欠片もないな! いつも通りだが!」
「あ~……とにかくいってらっしゃい……」
「おう!」
逸る気持ちを隠す様子もなく勢いよく出ていくのは岬草鵬治郎。
彼は待ちきれないのだ。未知の相手と対するのが。
(世間のイメージをはね除けるほどの好敵手であることを祈るぞ! 召喚魔法師!)
『これより国立人域魔法師育成高等学園日本校と第一召喚魔法師育成高等学園による交流戦を始めます。第一戦は……人域魔法師岬草鵬治郎。召喚魔法師ジュリアナ・フローラ。では、お互いタイミングを合わせ、始めてください』
余談。対戦者両名が映された直後の人域魔法師側の控え室にて。
「あ! あいつが初っぱなかよ!? クソ! 最初に出るんだった!」
雨花はジュリアナとの対戦を希望してたので鵬治郎が相手になった事に頭を抱えていた。
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