第230話

「こほん。に、兄様。改めてお久し振りです」

「あ、お、おう。久しぶり。結嶺」

 訪ねてきたのは我が優秀なる妹――天良寺結嶺。

 こんな時間に誰かが来るっていうのがもうおかしいのに来た人間がこれまた珍しいというかなんというか俺はもうパニックです。

「それで。兄様。お聞きしたいことがあるのですが?」

「あ、はい。どうぞ」

 鋭い目付きに変わり、冷たい空気を出されて思わず敬語になってしまった。俺、曲がりなりにも兄貴なのに。

「その子は?」

 目線の先には未だ寝ているコロナ。室内へはまだ注意がいってないところを見るに他三人にはまだ気づいてない……っ。

 どうにかコロナだけを紹介して追い返そうそうしよう。

「こいつはコロナ。俺の契約し――」

「なんだ? 新しい女か?」

 どうしてこのタイミングで顔出してんのこんのクソ野郎リリン

 お前さっきまでゲームしてたじゃん!? 来客とか興味なさそうじゃん!? なんで来ちゃうの!? そしてなんでふざけた発言しちゃうの!? 殴るぞ!?

「あ、あ、あ、新しい女って……。どういうことでしょうか? いえ、まず貴女は兄様といったいどういうご関係なのですか……?」

 わぁ~怒ってる~……。身内が知らないうちに女にだらしなくなってると思ったらそら怒るよね~。

 でも誤解なんだ。俺が弄んでるのはカナラだけだ。信じてくれ。

 ……もしかして、一人いる時点でアウトなのかな? じゃあ弁解できない詰んだ。

「ほう。妹か……だが……。いや、そういう事もあるのか。それでどういう関係、か。フム。そうさな。強いて言えば――」

 言葉を切って俺の顎を掴むリリン。

 え、ちょ、おいまさか!?

「あ、おま――ぅむっ!」

「!?!!?!!?!?!?!!?」

「ぷはっ。肉体関係?」

 本当に詰んだ。事もあろうにリリンのヤツ。結嶺の前でキスしやがった!

 お前……! お前ぇ! バカじゃないの!? いや本当にバカだろ! ふざけんな! 語彙力失うレベルでふざけたことすんな! バカ! 無駄にキメ顔で「肉体関係?」じゃねぇよバカ! なんかもう……バカ!

「に、に、に、に、に、に……っ!」

「に?」

「……っ! 兄様のヤ○チン!!!」

 なに口走ってんの!? っていうかどこで覚えてきたそんな言葉!? お兄ちゃんちょっとお前の今の生活が心配になってきたよ!?

 って、それどこじゃねぇわ。

 なにを血迷ったのか俺の顔面目掛けて妹の拳が迫ってるわけだからな!

 しかも人域魔法を使ってやがる。当たれば普通に死ぬぞ。まともな人間ならだけど。

 もちろん俺は当たっても痛いなぁくらいで済む威力なんだけど。耐えたら耐えたでまた変なことになりそうだし……どうしよう?

 と、考えてるうちにももう拳は目と鼻の先。当たるのはダメだし。とりあえずギリギリでかわし……おっと。その必要はなくなったっぽい。

「!?」

 リリンとキスしたときよりかは驚きは少ないようだが。……それもどうかと思うけど。結嶺は驚愕の表情を浮かべる。

 なぜなら拳は俺に当たる前に手首を掴まれて止められたからな。コロナに。

 こいつめ。めちゃくちゃかっこいい止め方しやがって。憎いヤツめ。

「むふぅ~!」

 鼻息を漏らしながら結嶺に敵意を向けるコロナ。いつの間に起きてたかはわからないが、俺が手を出すよりか言い訳が利きそうなことしてくれたしどうでも良いか。

「食事が出来たぞ。じゃれてないで早く食え。今日も授業があるんだろ」

「お話少し聞こえとったけど妹さんなんやて? 良かったら一緒に朝食あさげ如何ぁ?」

「………………お言葉に甘えて」

 止められた驚き冷めやらぬまま飯に誘われ思わず承諾する我が妹。

 追加された二人の女性に対しても思うところがあるのか俺を見る目がさらに鋭くなって怖い。怖いなぁ~……。

 お、俺。怒られるようなこと。してないはずなんだけどなぁ~……。

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