第228話
「ただいま……」
あの後。すぐに俺たちも解散し、特にやることもない俺は一直線に帰宅。
「あ、お帰りなさい」
そして出迎える和服に割烹着のカナラ。超似合う。その姿に免じてなんでいるのかは突っ込まないでおいてやる。
「にゃーにゃー!」
「っと」
宙に舞う
昼食後。カナラに預けていたせいで抱きつく力が強いな……。痛い。
まぁ、嫌々でも大人しくついていってたしこのくらいは良いか。
こうやって安定してメリハリつけられるようになってくれよ~。それだけで手間も減るから。
「坊これからどないしはる? 早いけどお風呂もご飯も準備終わっとるんやけど」
……手早いな。
つかまだ夕方にすらなってないんだけど。今からどっちもは早いわ。かといって特にやることも……。
あ、今日もう暇だしちょうど良いわ。
「カナラ。頼みがあるんだけど」
「……? 坊のお願いなら何でもどうぞ♪」
小首傾げてから答えやがって。あざといな。
なんだお前? 誘ってんのか?
「ここなら特に使っとらんから坊にあげられるよ。好きにどうぞ♪」
「……………………」
カナラに頼んで空き地をもらった。
いや、貸してくれつったんだけど。もらった。
100km²くらいの島一つを。
ま、まぁ俺のしたいことにはちょっと面積必要だから助かるけども。
だからって島……あぁ、もういいや。こいつが俺に甘いのは今に始まったことじゃない。出会った頃から結構なもんだったし。
「ふぅ……」
切り替えていこう。どうせ広い場所は欲しかったんだ。ポジティブポジティブ。苦手分野だよクソ。
「じゃあ始めるけど。危なそうなら逃げろよ?」
「はぁ……。危ない事しはるの? そんなら私もいた方が……」
「いや、危ないのは俺以外の俺の周りだから」
「……っ!?」
俺の雰囲気が変わったのを感じ取ったか。少し血の気が引いてるぞ。
ま、カナラを追い詰めた影を一瞬で島全体に広げてるんだから危機感くらい覚えるわな。
島全体に広げてるつっても本当に全体に広がってるかわかんないけども。
とりあえずこんくらいかな? って感じで展開しただけだし。
さて、大雑把だけど規模はこんなもんだろ。次段階に行こう。
久しぶりの……存在の投影。リリンの感覚器官を……少しずつ。
俺はリリンみたくまだ影を手足のようには使えない。見えてる範囲ならともかくな。
だけどあいつは見えてない範囲も正確に把握してる。影に触覚があるかのように。
たぶんマナを感じ取る部分が敏感で、俺がまだ至ってないんだ。だからその部分を自分のモノにしないといけない。
つーか、高密度のマナの乱気流である影を手足のごとく触れた部分を把握とか意味わかんねぇ。俺も力加減はできるし。触れると掴むと潰すくらいはできるけどさ。
あいつの場合触れる度合いとかどれくらい潰すとか。それこそ手でやるようなことを影でできるからな。頭おかしい。人間じゃない。
……うん。人間じゃなかった。
人間臭い部分もあるけどれっきとした異世界の化物でした失念失念。
話を戻そう。
俺はたしかに学園長との賭けに負けて演習では自分で戦わないと約束した。
が、しかし。演習以外では俺も自分の体を使わなきゃいけないこともあるはずだ。
この世界が良い例だろう。あの黒いヤツと戦ったこの世界がな。
リリンたちとの繋がりを希薄にされてこの世界に閉じ込められた。増援が見込めないなら自分で戦うしかない。
今はそのための訓練だ。いつまた似たようなことになるかわからないし。俺自身も単純に強くなりたいしな。
で、この世界での経験その2。大規模な影に包囲されたら俺はほぼほぼ無力。
多少弾けたところで意味はない。弾けない質量で……それこそ大陸や惑星規模でやられたら為す術がない。対応するには俺も能力の範囲を、規模を上げなくちゃいけないし他にもやりたいことはある。
俺が今やりたいこと。まずは影の精度と範囲を広げる。割りとこれは急務だと思ってる。範囲が広がるってことはそのぶんリリンたちに送れるマナ量も増えるからな。
ロッテやコロナはわからないけど、リリンの場合は送れるマナの分強くなるからな。今でもチート的な強さだけど。
あいつが苦戦したように見えるときは大体俺のせいだからなぁ~……。最初の頃のマナ量然り。ロッテのときの侵食然り。
本来リリンがロッテに苦戦することはあり得ないからな。俺の無意識の侵食で弱体化してたから苦戦したんだろうよ。
つーわけで俺とリリンの底上げになることは確実なので影の精度と範囲は必要ってわけだな。
次にしたいことは脳の処理を今以上にできるようになりたいということ。
さっきリリンを投影して感覚器官を拡張してわかったんだが……情報量が半端ない。
島一つを影で隈無く把握するの半端なく頭痛い。何度か処理が追いつかなくて細胞が死滅してるレベル。
そこも脳の質を投影することでなんとかなってるが……正直キツい。
人間の脳とあいつの脳じゃ次元が違いすぎてなかなか近づけない。あまり急いで投影すると俺の存在そのものに影響出るかもだからゆっくりやるしかないのがまたもどかしい。
ま、これはゆっくりやるさ。今は精度と範囲を上げ、マナの最大出力を増やす方が大事だ。
脳の質の向上は将来の楽しみにしておく。影を使うことで精一杯だが、いずれ人域魔法も無理なく併用できるようになりたいなぁ~。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます