第227話
御伽氷巳。身長183㎝。痩せ気味。白髪。常に上がってる口角。虹彩の薄い虚ろな目。
一部を覗いたこの身体的特徴……アルビノか?
……いや、違うな。こいつはマナが少し多いだけの一般的な人間だ。
だけど、存在そのものに違和感がある。感じる気配が曖昧すぎる。本当に生きてんのかわからない。
鼓動や呼吸はあるし。ひょろいが筋肉も普通に動いてる。なにか気配を消す訓練をしてる形状をてない。
なのに。あっさり背後を取られた。
背後を取られたって言い方が正しいのかもわからない。なにせ急に現れたからな。
つまり。あれだ。今の俺で探りきれないナニかがあるなってことだな。こいつには。
「あ~……。僕、嫌われちゃった……かな? 本当に……わざとじゃないんだ。無意識に……というか。勝手に……というか。そうなっちゃうだけで……」
眉を寄せてるのに口角は上がったままだから困ってるのかバカにしてるのかわかりづらいな……。
あとしゃべるとき細かい間が多くてちょっとうっとうしいな。コミュ障なのか? 同類ですか?
「本当に悪気はない……んだ。だって、僕は皆さんのファン……だし。天良寺くんだけじゃなくて……。賀古治さんも。和宮内さんも。徒咎根さんも。フローラさん……も。試合見てるし……。好きだし……」
聞いてもないのに語りだした……。しゃべるのが嫌いなわけじゃない……のか?
つか全員のこと知ってるのか。偉いな。俺、クラスメイトさえ六人しかわかんないんだけど。
「フッフッフ! そうかそうかとうとう私にもファンができてしまったか! 自己紹介の必要がないだけじゃなく理由がファン! いやー! モテるって辛いなぁ~? さっちゃんには負けるけどぉ~」
「調子乗んなよ」
「……マジトーンはやめろ? 怖いよ?」
うるせぇ。しゃべるな。お前に比べたら御伽のが百倍マシだわ。
今さら化物一人増えたところでなんとも思わねぇよ。……警戒は緩めないけど。
「あいさつは済んだかい! ボーイ&ガール!」
突如上から聞こえるハイテンションボイス。
全員が見上げるのを確認するとスカイダイビングの如く落ちてくる金髪の女性。
「ちどーん!」
……恐らくこの擬音の理由は無音で着地は地味だろうということなんだろう。インパクト大事にしてそうだからなこの人。
「フフン!」
どうだ驚いたか! って面してんじゃねぇ。イラつくわ。
いや、まぁ。たしかに驚いてはいるけども。でも最初から気づいてはいたから今驚いてはないんだよ。ちょっと現実を受け止められなかったんだ。だってこの人も知り合った変人の一人だもの。
が、とうとう現実を受け入れるときが来てしまったようだ。
「紹介しよう! ここにいるこの美女こそ対人域魔法師のためにお呼ばれ――してないのに無理言って適当な役職もらって来ちゃった
「ひゅー! かっこいいぞサンディ!」
「サンキューサンキュー! 我がソウルメイト!」
ガッシリ腕を組む二人。
寒いあいさつを終え反応したのは伊鶴だけ。
俺と夕美斗と憐名は冷たい目で見つめ、ジュリアナと御伽は驚きのあまり絶句してる。
いきなり魔帝が現れたらそら驚くよな。でもすぐにその感動消えるだろうから今のうちに味わっとけ。
「良いかぁ! 皆の衆! 明日から人域魔法師の学生の中でも特に優秀と噂の六人が来ると聞いてる! 怖いかもしれないが安心するが良いぜぇミーが来ちまったからなぁ! 勝つ為にビシバシ鍛えてやっから覚悟しとけよぉ!? なぁに。辛い訓練が待ち受けていてもそれなりの結果を約束してやるさ。スペースシップに乗ったつもりでドシッとしときな!」
「頼もしいなサンディ!」
スケールがデカ過ぎるわ。良いのかよそんな大口叩いて。
魔帝が言うことだから説得力はすごいけど。人となりを知ってると勢い任せで言ってるんじゃねぇかなって思うんだが?
「さて、あいさつも基本方針も決めたところで。本格的な
「おー!」
怒涛にして一方的に言うだけ言って走り去るアレクサンドラ。終始伊鶴しか相槌打ててなかったな。
やっぱこの二人って波長が合うんだなぁ~。
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