第225話
一悶着ありつつも。その後は特に何事もなく。同時になんであんなことされたのか理由を知ることもなく。いつもの室内演習上へ。
どうやらここが集合場所らしい。つってもまだE組の面子しか来てないけどな。
「いや~早く来すぎちゃったねぇ~」
「まだ昼休みだから仕方ないさ」
「打ち合わせ……つかたぶん顔合わせだけだろうし。さっさと済ませて今日は帰って休みたいわ」
よくわからんイタズラ……のあとのカナラが怖すぎて疲労感が……って、本人に言ったらあいつ泣くんじゃなかろうか。
……………………言っちゃおうかな? 泣かしたい。
「にしても本当怖かったよね~えんちゃん」
お? 伊鶴までもカナラについて考えてたのか。真似すんなよクソ。
お前と同じこと考えてるってだけで俺の中のなにかが萎えるわ。
「確かに。才君も大概だが彼女も人間離れしている」
「ニスちんの能力弾くわ。ゆみちゃん以上に武術できるわ。何者だよ」
「……」
あいつに関しては……一応人間……だぞ? たぶん。少なくともルーツは人間……の……はず……。
どうしよう。自信持って言えないわ。悪いなカナラ。
「あいつがバカやったお陰で絶対えんちゃん怒らせちゃいけないってのがわかったね。さっちゃんは酷い目にあったけどこっちとしては収穫だわ」
「つかまずなんで俺は目の敵にされたのかがわからん。俺いじめられるようなことしたか?」
「「……」」
なぜに黙る。俺、おかしなこと言いましたか?
おい。なんだその「わからないの?」って目は。わからないから聞いてんだよバカかよ。
「あれよ。実際なにを思ってやったかは本人に聞かないとだけどさ。とりあえず二つはあるわな。可能性」
マジか。伊鶴の分際で2パターンも答え用意するのか。生意気だな。聞くけど。
「一個はえんちゃん問題よね~。えんちゃん超絶美人でさぁ~あ? さっちゃんにデレデレしてんじゃん。もう初日からお膝座っちゃったりしちゃってもう見せつけてんじゃねぇぶち殺すぞってくらい」
「あ~……」
恋愛系の嫉妬……。まさか俺にそんなのが向けられるとは。リリンの時でさえなかったのに……。
あと膝のやつはあいつが勝手にぶちこんできたものなので俺に非はない。
「で? もう一つは?」
「才君自身への妬みじゃないか?」
なんと。伊鶴じゃなく夕美斗が答えるか。お前もわかってたのかい。
……なんか。俺だけわかってなくて。俺がアホみたいじゃないか。悲しい。
「にゃーにゃー?」
「……」
「むふ~♪」
心配そうな顔をするコロナを無言でだっこ。今はこの温もりがありがたいです。ぐすん。
「……具体的にどんな嫉妬されてんのかお前らわかる?」
「そりゃあね~……。って本気で言ってる?」
「俺、いつだって、本気」
「……ん、ん~。事実では……あるか。見えないけど」
「普段気が抜けてるからな。……あ、ごめん。悪気はないんだ」
失礼だなお前ら。なんだ? 喧嘩売ってんのか?
「さっちゃん。入試成績的にはE組のドベじゃん?」
「まぁ……な」
事実なので否定できない。
気にしたことないけど、それが関係してるのだろうか。
「だけど土日の演習は出たら全部勝ってんだよね。一回休んでるけど。その原因の演習の相手だってA組だったしさ」
「契約者が強いだけじゃなく、さらに人域魔法師を諦めてるはずなのに自分で戦っても強い。これで嫉妬しない方が無理という話だろう」
「ほ、ほう……? なる……ほど……」
言われてみれば。そうか。うん。たしかに俺。妬まれる要素ある。それもかなり。
「ま、努力してないくせに他人に嫉妬してんじゃねぇよって感じだけどね」
「ただ、彼らの気持ちもわからないではないけど……な」
「……というと?」
続きを促すと夕美斗は目を伏せてから、ゆっくり口を開く。
「召喚魔法師を目指してる人間の共通点として。絶対に……とは言い切れないけど。ほとんどの人間は劣等感があると思うんだ。好んで召喚魔法師を目指してるのは私の知る限りマイク君くらいだよ。他は最初に人域魔法を目指していたはずなんだ」
そりゃあ……な。俺たちは召喚魔法師の学校にいて、住んでるのも敷地内だからあまりそういう機会はなかったけど。本来、
夏休み。伊鶴はその視線に晒されていた。すぐに力ずくで黙らせたけど。あれは伊鶴だからできたこと。普通の召喚魔法師が普通の戦い方をしていたら恐らく嘲笑され続けてただろうな。
あの一件に限らず。進路志望にこの学園を選んだだけで笑われたくらいだ。当時の担任にすらな。
それでも淘汰されてないのは俺たちが諦めの悪い意地っ張りだから。あとは魔帝である学園長の存在の大きさだろう。
蔑んでたはずの召喚魔法師から魔帝が生まれたんだ。希望を持つヤツも少なくないだろう。
でも、差別は消えてない。今でもバカにするほうが大半を占める。それくらい根強く召喚魔法師は蔑まれてる。
「私たちは落ちこぼれ。その中でもE組はさらなる落ちこぼれ。せっかく入学できても心折れるわ」
「だが諦めきれなかった私たちは努力をして。幸運にも結果を出すことができた。そんな姿を見せられたら自分を惨めだと思う人間も出てくるだろう」
「……しかも俺はE組の中でも一番下のはずなのに一番結果残してるから~。ってことね」
心の闇が膨らむ要素満載でやってらんないねぇ。
つか八つ当たりだからな完全に。良い迷惑だわ。
「さっちゃんはアクティブに学園内回らないし。急にどっか行っちゃうから知らないだろうけど。私ら結構ハブられてること多いんだよね」
「へー初耳」
「興味なさそうだな???」
だってお前らの交遊関係にまったくもって興味ないし。
学園で過ごすにあたって特にハブられたって困ることってないだろうし。俺に関しては元々友人と呼べる存在もいないし。孤立したところで実害がなければ良いかなって思うし。
……いやまぁついさっき実害はあったけども。
「まったく。自分たちがサボってるだけだってのに。嫌がらせする努力する前に強くなれよって感じだわ」
ちょっとイライついてる様子の伊鶴。声を荒げてないのが逆に本気度を感じるな。
自分は特に努力しない落ちこぼれなのに結果を出してる人間に対して妬みを覚えるヤツってのは。逆に頑張ってる人間からしたら自業自得ってなもんだしな。
お互いがお互い相容れない感じになってるわけか。
はぁ~……。俺そういうの別にどうでも良いのに。他人に構うのがめんどくさいしさ。
今日みたく今後も絡まれたりするかだけが心配だわ。ほっといてほしい……っと、来たか。
「……ん? あれこれ話してる内に時間が来たようだな」
夕美斗も気づいたようだな。
さてさて。まず最初に来たのはどんなヤツかな。
……あ、俺たちか。
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