第221話

「……坊~。起きてるぅ~?」

 深夜に差し掛かりコロナも眠りについたあたりで小声で話しかけてくるのが一人。言わずもがなカナラだ。

 こいつがこんな時間に起きてるかの確認する場合。次の行動は決まってらぁな。

「寝てる……ね」

 起きてるわ。

「じゃ、じゃあさっきの続き……」

 さっきの続きっていうのは昼間のやつだな。コロナの手前と学園内の風紀的な意味で自粛したアレ。

 なんていうかもう定期的にしてる気がするわ。約二名のせいで。

 これに関しては俺からもしてるからあまり責めてはいけないけども。

「ふー……っ。ふー……っ」

 鼻息荒くすんな。コロナが起きるだろ。起きたら絶対めんどくさいんだからするならさっさと済ませろよ。

「いただきます~……ん」

 はいどうぞ召し上がれってなもんで。カナラの薄めの可愛らしい唇が触れる。

「ん……ふぅ。……あむ」

 ほう。今日はまた大胆に唇をはむはむなさりますね?

 ちゃんと音を立てないように吸わないことだけは評価してやるよ。お陰でちょっと物足りないけどな。

「……ん。はぁ……はぁ……」

 切なげな吐息。甘い匂いが強くなって鼻の奥を刺激する。

「んぁーみゃー……」

 こりゃまずいと思いコロナの鼻を塞ぐように抱き締める。

 寝言を漏らしながらコロナからもしがみついてくる。

「……んむ」

 さすがに動いたし気づくかなぁ~って思ったけど。気にせず続きに励むカナラ。

「はむ……んはぁ。れろ……。坊……しゅき……」

 あ~あ~。どんどん激しくなってくよ。

 俺は別に良いけど……。いや、良くはないな。

 二人きりならともかく誰かいる状況では困る。バレたらめんどくさいから。もう手遅れだけどさ。

 夢中になってて気づいてないけど。お前の声も行動もコロナ以外の全員が把握してるからな。……現に。

「……んぅ?」

 キスに夢中だったカナラの背をポンポンと叩くとやっと俺の目が開かれてることに気づき目が合う。

 そして俺が目線を上へ向けるとカナラも後を追うように上へ目を向ける。

 すると誰かがヤンキー座りをしているのが目に入る。

 口を離して顔ごと上げ、そこにいたのは――。

「よぉ」

「ぶ――」

 リリンであった。

 さっきまでゲームに勤しんでいたが、カナラがキスをし始めると音を殺して俺たちの真上を陣取り眺めていたのだ。ザ・悪趣味。

 ちなみに今カナラの口をふさいで吹き出すのを抑えた。さすがにコロナが起きるからな。

 つーかここまで接近されても気づかないって……どんだけこいつのセンサーガバガバなんだろ?

 戦闘になれば感度良さそうだけど普段がザルにもほどだぞお前。

「フム。その目を見るに羞恥心は多分にあるようだが。にも関わらず大胆だなぁ~?」

「……っ。……っ」

 俺の手でふさがれながらもあわあわ言ってら。くすぐったいぞ~。

「それに、才も満更ではなさそうだな?」

「なんだよ。羨ましいのか?」

 俺に矛先向けやがって。いじるならカナラにしとけよ。こいつ面白いから。

「まぁな」

 意外にも肯定。もしかしてお前……俺のこと……。

「お前との交わりは気持ちいいからな。だがお前は気乗りしない事が多い。となればしてるところを見れば羨みもするだろ」

 ようは体だけってね。最低な好色家みてぇだな。一応俺一筋っぽいけど。

 本当俺とリリンも不思議な関係だよなぁ~。体だけ……いや口だけの関係? セ○レならぬキスフレ? 十分いかがわしいな。

「ぷは! あ……あ……あの……私……。か、帰るね!」

 っと。色々考えてると俺の手から離れて床をゴロゴロ転がりながら桃色の煙の中に消えてった。

 うん。明らかな逃亡。これ以上俺たちにいじられる前に逃げやがって。

 まぁ本人はただ恥ずかしかったから逃げただけだと思うけどな。

「フム……逃げてしまったか。詰まらん」

 用もなくなったし。リリンもこれでゲームに戻り、俺は寝て明日を迎えるってこと……で。

「……なにやってんのお前?」

 立ち上がったものの、未だ見下ろしてくるリリン。見下して偉そうだな。喧嘩売ってんのか。

「いやなに。たまにはこういうのも……と思ってな」

「は? あ、おい。なにしふぇ」

 そう言うと片足を俺の顔へ。

 ぐにぐにと頬やら口やらを踏み踏みしてきやがる。

 こ、この野郎。マジでなにしてくれちゃってんだよ。

 いくら一瞬影でホコリやら落としてから踏んでるからつっても酷いぞこれは。

「クハ。本来ならば我も口を……と行きたいところだったのだがな。これで我慢してやる」

「いや、普通ふふうにすれふぁいいひゃん」

 顔踏まれるよりキスのが二千倍マシだっつの。

 踏まれても別に嫌な気持ちになってないけど。逆にこの嫌じゃないのが嫌だわ。

 俺よ。せめてこのあんよを嫌がれ。頼むから。なんか人として嫌がらなきゃいけない気がするからっ。

「断る。我はお前だけを味わいたいのでな。余計な味も匂いも邪魔なだけだぞ」

 そんな理由かい。つまり完全にお前の都合なのねふざけんな。いっちょまえにこだわりやがって。

 つかそんな理由で。代わりに顔踏まれる意味がわからん。

 他の女のあとだとキスする気にならない。だから代わりに踏むって頭沸いてんのか。沸いてんだな? 頭蓋骨の中に直接ドライアイスでもぶちこんでやろうかこのイカれぽんち。

「……っ」

「ん……」

 こ、こいつ! 事もあろうに足の親指を口に入れてきやがった!

 気持ち良さそうに目を細めやがって変態め。

「うぶ……っ。ぇらぁ……うぇろ……」

 しかも結構深いところまで突っ込んできやがる。

 歯茎をなぞり、舌に絡ませやりたい放題だ。

「んべぁ……れ……」

「クハ。これは……中々……んふぅ……」

 器用に親指と人差し指で舌を挟みそこそこ強めにグニグニしてくる。

 唾液がよほど良いらしく時折ビクビクしてるな。

 はっきり言って屈辱的なことをされてる。だからと言って抵抗できない。

 それは何故か。俺の快楽を与えるようにこいつもマナを垂れ流してるから。

 お陰で不快感なんて欠片もなく足で口ん中弄ばれてるよド畜生。

 しかし。しかしだよ。このまま弄ばれてるのも癪ってものだろう。ちょっとくらいは意趣返しくらいしたい。

 ということで。行動開始。

「……あぐっ」

「んんっ!」

 一度口から少し抜こうとしたタイミングで甘噛みをしてやる。案の定過敏に反応したな。声が物語ってるぞ。

「ん……っ! ぁ……っ。ふぅ……っ」

 そのまま何度も抑揚をつけて噛んでると声がより甘く……っておい。喜ばせちゃってるじゃん。仕返しになってねぇ。

「ぱっ」

 噛むのをやめるとやっと口から足を離す。

「……うむ。満足」

 との言葉通り唾液を影で拭き取るとまたゲームに戻っていった。

 テメェ。こっちが文句言う前に離れやがって。いや離れてほしかったけどもね。

 はぁ~……。精神的に疲れたしもういいや。面倒なのが二匹消えたってことでよしとしよう。

 俺は、寝る。

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