第215話

「時間だ。帰れ」

「あらら。お仕舞い。お疲れ様でした」

 午後の授業が終わり先生は戻っていく。契約者たちも続々と戻っていき立っているのはカナラと俺だけ。

 他の連中はカナラにしごかれてぶっ倒れてる。コロナは寝ちまったのでだっこなう。

「な、何者なにもんじゃあ~……えんちゃんって……」

「見た目華奢なのになんてスタミナ……」

「わ、わだじだぢ全員相手じだのにケロッどじでまず……」

「綺麗な上に強い……Excellent」

「……」

 各々感想述べてるけど夕美斗は……寝てるな。

 一番張り切ってカナラに突っ込んでいってたからな。無理もない。

 カナラの動きを見るに柔術とかそっち系メインにしてるっぽかったから。参考になったのかねぇ~。どうでも良いけど。

「さて、俺たちも戻……」

 そういやカナラのヤツ服があまり無さそうだな。少なくとも下着はない。

 あと部活も入ってないはずだよな。となれば。

「おい。カナラ」

「ん? なぁに?」

 振り返るカナラがまた絵になるなぁ~。運動着姿でサラッサラな黒ショートなびかせやがって。

 おっと。今はそういうのは置いておこう。なぜならこのあとたっぷりとカナラという女を堪能することになるんだからな。

「ちょっとこのあと行くところあるから。付き合え」

「え♪ うん♪ 坊のお誘いなら喜んで行くよぉ♪」

 ふっふっふ。その笑顔もいつまで続くかな? なにせこれから行く場所は――。



「まーたこんな美少女連れてきやがって良くやった後輩! ついでにコロナたんの寝顔も見せておく――ごぶっ!?」

「くぅ……くぅ……」

 不用意に近づいた久茂井先輩が寝てるコロナの足蹴に。

 寝ながらでも危機感知できるんだなお前。すげぇ。……ただ。

「ふぇ……ふぇふぇふぇ……。あんよ……幼女のあんよ……ふわふわミルキーな香り漂うぷにぷにあんよ……ぶひひっ」

 まったく堪えてないどころかむしろ生き生きしてるなぁ~。変態め。そんなところ安定させなくても良いのに。

 だが許そう。今日はその変態を頼りに来たからな。

「もう満足しました?」

「もうちょっとぉ~ん……」

「それは良かった。じゃあ話を進めさせてもらいますわ」

「……おい後輩? 今の会話になってないよ? ねぇ? 気づいてる?」

 だってあんたが満足するの待ってたら日が暮れるどころかまたぐだろ。下手したら永遠に満足しないだろ。だから無理矢理にでも切り上げた方が俺のためなんだよ。

「先輩にとっても悪い話じゃないんで」

「ほう? とりあえず聞いてみようか」

「こいつを着せ替え人形にして良いですよ。条件付きで」

「乗った」

「へ?」

 条件を言う前に承諾する先輩とわけがわかってないカナラ。

 二人のリアクションは想定内。先輩はいつも通りだし、カナラについては特に説明せずに連れてきたからな。これはもう必然だよ必然。

「いんやぁ! 私は良い後輩を持ったもんだ! 定期的に美少女お供え物してくれてありがたやありがたや。さぁ部員諸君! 各々好きな衣装を取ってくるのだ! 迅速にね! 我々は一秒たりとて無駄にはできん!」

「「「イエッサー!!!」」」

 部長先輩だけでなく他の方々までドタドタと服を漁りに行ったか。これは色んなパターンのカナラが見れそうだな。

「……? ……??? 」

 本人は未だ良くわかってないな。見事なハテナ顔をしてるわ。

「なぁ坊。着せ替え人形てどういう事?」

 どういうことって言われても。ねぇ? 特に特別な意味はないんだけど。

「そのままの意味。お前に色んな服着てもらおうかと思って」

「はぁ~……。へぇ~……。なんで?」

「俺が見たいから」

「ほ、ほう……。私の色んな格好見たいんや? ど、どうして?」

「好みの女に色々服を着せたいって思うのはわりと普通だと思うんだけど」

「この……みっ!」

 服を贈る=贈った服を着てもらってこの手で脱がしたい。とかそういうわけのわからん時代もあったとかなかったとか聞くし。俺よりむしろカナラのが詳しそうだよな。実際あったかはわからないけど。

「~~~~~~//////」

 顔を真っ赤にするカナラ。二週間ぶりだなその照れ顔。

 ここまで過剰反応ってことは……あーいや。好みってワードに反応しただけとも考えられるな。

 こいつの場合0か100の反応しかないから細かい判断はしづらい。今度ちゃんと歴史について調べよ。

「わ、私……。き、着替えてくるぅ~!」

 先輩たちの方へすっ飛んでいくカナラ。

 良くわかってなかったのにやる気が出て何よりだよ。

 こういう言い方すれば嫌でもやる気出すのわかってたんだけどな。思った通りに動きやがって。チョロい女だぜ。



「ところで後輩。条件って結局なんだったんだい?」

 鼻血を垂らしながら戻ってくる先輩。カナラの裸でも見てきたのかな?

 はたまた自分の趣味の服を着せての結果か。

 今はそれよりも気になることがある。そもそもよく鼻血垂らしてるから実際そこまで気になってないし、これに関しては考えるだけ無駄。

「覚えてたんすね」

 てっきり忘れられてるものだと思ってた。むしろ聞いてないと思ってた。それくらい瞬間的に行動してたし。

「当然。約束は守る男だよ私は。あ、女だ」

 どんな言い間違いだよ。でも見た目はともかく中身は男と言われても違和感ないよあんた。

「で、条件ってなに?」

「別に大したことじゃないんですけどね。あいつの下着を見繕ってほしいなって」

「なるほど」

 着替えの手伝いもしてたからノーブラなのは知っているはず。なのになんでまた鼻血を垂らしてるのかね先輩様よ。

 本当。出会った頃からまったく変わらねぇなぁ~。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る