第209話
「ほころへほころへん」(※ところでトコロテン)
「はっはっは! なにを言ってるのか微塵もわかんないな!」
「ニャンコお下品だぞォ~。もっと
食事にがっつきながら無理矢理しゃべろうとする寧子を笑う鵬治郎と注意するきさら。
招き猫化してるきさらのそれは注意なのかツッコむべきなのか悩ましいところである。
「ごっくん……っと。ところでコロッケ」
「食べ物変わってねぇかそれ。文字数変わってんぞ」
「人のこと言う前にまず一人で食べれるので小籠包ねじ込もうとするのやめてくれませんか雨花さ――
寧子にツッコミを入れながら結嶺の口に小籠包を突っ込む雨花。中々に洒落が利いてるがやられてる
だが結嶺も吐き出さずハフハフしながら必死に食べている。健気。
「もういじめにしか見えないねそれ」
「あん? どう見ても可愛がってんだろうが」
「………………そうだね」
(いじめと書いて可愛がると読むって感じで)
「そんでそんでェ~? 結嶺ちゃんがハフハフしてるのは置いとくとしてェ~。ニャンコはなにが聞きたいのん?」
意外にも軌道修正したのはきさら。案外空気の読める真人間かもしれない。
(ふっふっふ! 四月生まれのきさらお姉ちゃんは気が遣える大人のれでィーなのだァ……! 皆普段元気なきさらちゃんとこーいう大人の対応のギャップに萌え悶えるが良いぞォ~っ!)
……打算が酷かった。
しかし、結果的に修正はできたので良しとしよう。
「ありがとうかりんとうきさらさら茶漬け。話を戻させてもらって抹茶ラテ。今度の選抜煎餅交流煎餅のことだよ煮込みだよ」
「ん? 煎餅を煮込んだらくたくたにならないか?」
「鵬治郎。そうじゃない」
「(´ーωー`)?」
「ハフハフ…………ふぅ~。それで。交流戦でなにか気になることでも?」
鵬治郎によって逸らされそうになったところを今度は結嶺が修正。するとジトーっときさらが結嶺を睨む。
「……一番年下なのにやるんだぞォ~」
「……? よくわかりませんが。続けてください」
「おうよ。ういろう。私が知りたいのは鯛焼き。交流戦をやる意味なんだよナンヨウブダイのお刺身」
「ちょっと食べ物減らしてもらって良いですか?」
「……わかった若鳥グリル」
「減らせてねぇぞ」
「うっさい! サイコロステーキ!」
口癖はなかなか直らないらしく。それでも努力しながら話を進める。
「ようは召喚魔法師との合同演習とか学園同士の親睦会の大トロ一貫で。今回は初めてだから私らが向こうに一ヶ月行って様子見~ってわけじゃんカンジャンケジャン」
「そうだな。で? それが?」
「召喚魔法ってのは異界にいる生き物へマナを送って代わりに力を借りるやつだよね? 練り物。でも召喚魔法師って自分でマナを使うのが苦手かマナ量の少ない人がなるわけじゃん? だからどんなに召喚されたのが強くても
一同は一応納得するが。同意はしない。理由は一致している。
「「「やってみなきゃわからない」」」
「そら世間様は召喚魔法師=役立たずのゴミって認識。まぁ現場にいたのもその言葉通りの雑魚しかいなかったけどな。許可がありゃ
「だが、たまたま居合わせたのが酷かった可能性もある。有能な人物はいると聞くぞ」
「ごく希にだけどね」
「でもでもォ~! 今回は一味も二味も違うかもだよねェ! だって史上初の召喚魔帝であり! 戦闘力は歴代最強と名高い刃羽霧紅緒様の学園の生徒なんだぞォ! 一年生でもスゴいのいるかもなんだぞォ!」
「なるほどほっこり梅昆布茶。それもそうだソーダグミ」
「……それに」
「ん? それに?」
「あ、いえ……」
「途中で止められたら気になるんだぞォ~?」
言い淀む結嶺を雨花が拾い、きさらが促す。
そしてあの時言えなかった事を言葉にする。
「召喚魔法師を甘く見てると痛い目に合いますよ」
「「「………………」」」
しばらくの沈黙を挟み、結嶺以外の五人は声を揃えて言った。
「「「その話詳しく」」」
「はぁ? なんだその化け物。人間だとしても召喚魔法師って思いたくないな。気持ち悪い」
「でもでもスモモ。話を聞く限り召喚してるわけだから召喚魔法師と言わざるを得ないざるそば食べざるを得ない。ぞぼぼぉ~」
「あんだけ食べてまだ入るその胃袋はどこに繋がってんだニャンコォ~?」
「我が胃袋は無限大大福おかわり。あむん」
「うんうん! 良く食べ、良く動き、どんどん大きくなれよ!」
「ここ三年身長伸びてねぇよぶち転がすぞ
「また脱線してるよ……。でもにわかには信じがたいよねその話。結嶺も軽々あしらわれたのに。魔帝に傷をつけたなんて」
「この目で見て。体験したことですから。恥ずかしいですけど」
「結嶺はまだまだ成長期だろ? なぁ? 天才児」
「やめてください……。私なんかよりも本当は……」
「出たよそれ。また兄貴のがすごいって言うんだろ?」
雨花だけじゃなく他の全員が聞き飽きたという呆れ顔になる。このやりとりももう何度目かわからない。
「に、兄さm……兄さんはすごいです。ただ不器用なだけで……。本当はすごい力をお持ちになって……っ!」
「お前よりすごかったらとっくに私たちの先輩になってるだろ。このブラコン」
「う……っ」
痛いところを突かれる。魔法師は完全に結果の世界。隠された才能とか陰の努力とかそういったモノは意味がない。結嶺も足を踏み入れている世界だ。よくわかっている。そして、後半も否定しきれないのがまた痛い。
「す、少なくとも! 優しい方です!」
「ヴァハハ~。魔法師としてまったく不要のモノアピールし始めて笑えるぞ~。わらび餅。あむん」
「召喚魔法師を目指しているんだろう? だったら少なくとも現代では凡才と言わざるを得んぞ」
「でもでもォ~。結嶺ちゃんの話が全部本当だとしたらァ~? やんばくねェ~?」
ここできさらによるフォロー。やっぱりデキる女なのかもしれない。
「「「……」」」
きさらの一言で全員仮定を立てて考え始める。
「魔帝に傷をつけた召喚魔法師に結嶺以上の才能を秘めた男……。とんでも天丼だな! 仮定定食だけど!」
「学園にいる召喚魔法師志望のヤツら全員そのレベルとかな。ま、仮定の話をしたらだけど」
「加えて結嶺が見た召喚魔法師はアレクサンドラ・ロキシーと知り合いと言っていたし、手解きを受けてる可能性があるよな! 羨ましい! 仮定だが!」
「結嶺が見たって人が学生ならって話だけどね。でも背が小さくて若そうだったっていうから学生の可能性は高いか。仮定だけど」
「それがきさらたちと同じ一年だったらって思うときさらワクワクしちゃうぞォ~! 仮定だけど!」
「全部仮定が強調されてて複雑な気持ちです……」
「そう落ち込むなよ。この学園の訓練も飽きて退屈してたから受けた交流戦の要請だけど。少し期待できそうな可能性が出てきてちったぁ前向きになったからよ。なぁ?」
「あぁ! 結嶺の話と仮定の話を聞いて、同世代の召喚魔法師がどれほどの実力か興味が湧いた! ものすごく楽しみになったぞ!」
「気を引き閉める必要が出てきたかなとは思うかな。楽に越したことはないけどさ」
「まぁどんなに強くなってようと負ける気なんてさらさらないぜさらさら茶漬け!」
「そうだそうだぞォ! 誰が相手だろうと負ける気で戦場には立たないんだぞォ! きさらは例え魔帝相手だっていつか勝つ気満々だぞォ!」
「……ふふ」
にわかに盛り上がる一同。この輪の中に
そして、交流を一番楽しみにしているのは――。
(……いずれにせよ。私の言葉の真偽はすぐにわかりますよね。きっと。兄様の才能が花開いていると信じています)
敬愛する兄に数年振りに会える結嶺自身だった。
第一召喚魔法師育成高等学園へ遠征をする。二日前の出来事であった。
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