第198話

「はぁ~……。ま~たあの人変なことし始めたな……」

「またって言っても知り合ったのつい先日だけどね」

「それでもうまたって言われてるのがおかしい」

「まぁね」

 なんだかんだ遊び足りなかったってことで、またしても海に行くという話になり、今は更衣室で着替えてるところ。

 まぁ午前はトラブルで潰れたし、午後も楽しそうにはしてたが一般的な海の遊びとは言い難かったからな。気持ちはわかる。

 ちなみにアレクサンドラはイベントとやらの準備のために別行動。先生も部屋でなんかやってるっぽい。大人がいないとって話ならロッテとリリンがこっちじゃ成人だしってことで任された。

 まぁ、見た目はともかく齢三桁超えてっからなこいつら。見た目はともかく。

「いや本当すごいことになってるよね~。まさか魔帝様と知り合ってたなんてね~。もう一日合流するのが早かったら僕も会えたのに~。残念残念。……結構おっきいね。んふ♪」

「……なんでお前がここにいる?」

 俺の股間を覗き込みながら自然に会話に参加してきたパッと見美少女の男が一人。

 久々に会ったが正直二度と会いたくなかったぞ。しかもこんな意外なところでなのがもう頭に来るぞ。徒咎根ととがね憐名れんな

 つかいつまで見てやがる。すでに俺は海パンはいてんぞ。

「そりゃあいるに決まってるよ。誰が招待したと思ってるの? 一教員が特定の生徒をこんな倍率高そうな観光地まで連れてきてくれるなんて思ってないよね? というか聞いてなかったんだ」

「聞いてない」

 違和感自体はあった。いくら元プロの人域魔法師立ったとしても懐厳しいんじゃないかなって。まぁ異界探索でどれだけ稼げるか知らんからなんともだけど。

 それはそれとして。

「言ってくれても良かったんじゃないか?」

「聞かれなかったし」

「口止めしてたし」

 じゃあ結局ダメじゃねぇか。喧嘩売ってんのか。

「……話を戻すが、先生が特定の生徒を連れてくるのはたしかに無理な話だが。一生徒がなんでこんな場所に複数人も招待できるんだって話になるが?」

「お祖父ちゃんがお金持ち♪」

「死ね」

 家族に愛されて幸せなのにこんなトチ狂った生き物になりやがって。死んで家族に詫びろ。

「ひっどぉ~い。せっかく招待してあげたのに言うことがそれ~?」

「黙れ。頼んでない」

 別に来たくて来たわけじゃない。暇潰しだバカ野郎。お前が関わってると知ってたら来てねぇっつの。

「まぁまぁ。落ち着きなよ才。良い経験と思い出になるだろうからさ。僕らは大幅にレベルアップして、才は……あんまり変わらなかったかもだけど。この島に来てミスサンディとも知り合えたしさ。感謝しないと」

「ん~! ミケくん良いこと言うね~! 天良寺くんも見習ってね?」

「そうだな見習わなきゃな。お前は周りを見習って女物の服を着て男子更衣室に入るのをやめやがれ?」

 さっきから視線が痛ぇわ。せめてさっさと着替えるか今すぐ俺の目の前から消えろ。

「人の服装趣味にケチつけるのは良くないと思うなぁ~」

「TPOわきまえないのもどうかと思うがな」

「まぁまぁ。ここで言い合ってても仕方ないし、早く合流しよう」

「それもそうだね……って言いたいところなんだけど。水着姿、天良寺くんには海で披露したいし……。それに、着替え見られるの恥ずかしいな//////」

「あ?」

 ミケにたしなめられて俺も引こうと思ったけどなにのたまってんだテメェ引きちぎるぞ。

 人の股間ジロジロ見といて今さらカマトトぶってんじゃねぇ。

「落ち着いて落ち着いて。そういうことなら僕たちは先に行ってるよ」

「あ、おいっ」

「はぁ~い♪」

 ミケに無理矢理連行されていく。抵抗できないことはないが、ここは連れてかれるのがお約束かなって空気を読んでしまったよ。俺の分際で。へへ。

 ……ところで、一つ気になったことがあるんだが。

「お前、憐名が男って知ってたんだな」

 あの格好で驚いてなかったし。たぶん俺が来る前に顔合わせとか済ませてたんだろう。

「知ってたっていうか。気づいてたかな。そもそも顔合わせたのさっきが初めてだし。僕らを呼ぶために無理してたみたいだから」

「へー。ご苦労なこって……。ん? 初対面で男ってわかったのか? お前」

 うっそだぁ~。だってパッと見女じゃん。声も女じゃん。骨格は男だけど華奢だから目が肥えてないと見分けつかないぞ。それなのにわかるとかお前なんかのプロか何かか?

「紳士たるものその辺は見分けないとね。ただ、心は乙女みたいだから一概に男って断言するのは気が引けちゃうよね」

「あ、そう」

 いや、ミケよ。あいつの心にいるのはビッチだ。そんな乙女なんつー清らかな表現は似合わないぞ。真面目に。

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