第199話

「はぁ~い♪ というわけで合流しました徒咎根憐名です♪ よろしくぅ~♪」

「「「……」」」

 ヒラヒラのついた女性物水着を着て現れた憐名に女性陣が微妙な視線を向けてる。

 ミケと違って男と知ってるらしいから無理もない。

「と、とりあえず……あれだ。ご厚意によりこの場へ招いて頂いた事に感謝を述べたい」

「そ、そうですね。ありがとうございます」

「えっと……どうもありがとう」

「あざま~」

 一応の礼儀として頭を下げる女性陣。ちなみにミケはもうお礼は言ってるらしい。

 俺? 言うわけ(*´ω`*)ネェワ。

 そもそも呼び出されただけだしな俺。礼を言う義理はない。

「かぁ~。にしてもこれで男ってんだから人間ってわからないよね? ひよこのがまだ区別つくんじゃない?」

 お? 伊鶴がいつものごとく調子良く噛みつきに行ったぞ?

 普段はともかく今は構わん。やれ。俺が許す。

「ごめんね~。そのへんの女の子より可愛いもんだから紛らわしくって。伊鶴ちゃんはスタイルは悪くないけど~。内面から下品さが滲み出てて男受け悪そう♪」

 おっと憐名も結構な口の悪さ。しかも返し方は伊鶴より知性を感じるぞ。下品なのは鏡見てから言えって思うが。伊鶴が下品なのも否定できない。これは伊鶴不利か?

「はっはっはー調子乗んなよカマ野郎」

 早速言い返す伊鶴。良いぞもっと言ってやれ。突っかかれ。

「今すぐ帰っても良いんだよ?」

「ごめんなさい」

 弱っ。旅費全部負担してもらってるから仕方ないけど弱っ。そんなんなら最初から噛みつくな弱っ。

 あ~。応援して損したわ。一言も口には出してなかったけどさ。



「じゃあ日焼け止め塗ろっか♪」

 しまった。俺たちはもう塗り終わっているが憐名れんなは後から来ている。この流れは確実に――。

「天良寺くん♪ 塗って♪」

 出たよほら。あーあーわかってたわかってたわかってま~し~た~。んなもん答え決まってんだろ。バカめ。

「断る」

「良いの? まだ十日と日数あるのに送り返すことになるけど?」

「知らんを断r――むぐ」

 伊鶴と多美とミケから同時に拘束される。なんですか。集団でナニするつもりですか。やらしい。

「おいおい落ち着けよさっちゃん。今は高級リゾート地に来てるんだぜ? しかもまだ全然遊んでないんだよ。訓練してたもんで!」

「ここまで来てバカみたいに体酷使してそのまま帰るとかそれこそバカみたいでしょ……! まだ買い物にも行けてないんだよ私は……! このまま帰れないっての!」

「夏なのに思い出を作る前に日常に戻るのなんて絶対に嫌だ……! 鍛えるのは好きだけど遊ぶのはもっと好きなんだよ僕ぁ!」

 血眼で訴えかけてくんなよ。怖いな。

 はぁ……。まったく。仕方ないな。

「お前らの気持ちはよーくわかった」

「「「わかってくれた!?」」」

「ことわ――」

(((怒)))

「……」

 冗談だよ。怖いな。やれば良いんだろやれば。

 クソ。こすい真似しやがってこのホ○野郎。

「説得終わった~?」

 すでにうつ伏せになって足をパタパタさせて待機してる男が一人。……超蹴りてぇ。

「……チッ。めんどくさ」

 文句言ってても仕方ないとわかりつつも口にしてしまう。人間って不思議。俺、人間やめてるけど。

「「「……」」」

 文句言うな。機嫌損ねたらどうするって無言の圧をかけてくんな。

「はぁ~……。大変ですね~。才くん」

「まぁ、仕方ないさ。数は力だ。彼には同情しよう」

 同情してくれてるのは良いけど、他人だし別にって雰囲気は出さないでもらえます? それはそれで腹立つからよ。

「天良寺く~ん。は~や~くぅ~。肌焼けちゃうよぉ~」

 甘えた声出してんじゃねぇ。蹴り潰すぞ。

 やったら怒られそうだからやらないけども。

 あ~もう。さっさと済ませちまおう。それが一番良い。

「ふふっ。嫌そうな顔そそる。反応しちゃう♪」

「……」

 いちいち俺の決意を鈍らせてそんなに楽しいのだろうか。楽しいんだろうな。ド畜生め。

 キレそうだが。今は我慢。帰ったとき覚えてやがれ。俺の視界に入ったときがテメェの最後だ。

「あんっ。天良寺くんの手ゴツゴツしてる。指も細長くて深いところまでイキそう♪」

「……」

 サンオイルを背中に塗り始めると内股になりつつ腰を動かし始め無駄にエロい声を出し始めた。

 すまないお前ら。俺はとっても短気なんだ。

「あれ? 急に立ち上がってどうしたの? 見下ろされるのも悪くないけど」

「そうか。それは良かった。だったらこういうのも好みなんじゃないか?」

「え? なに――あふん♪」

 背中にオイルを垂らして踏みつける。手でやろうが足でやろうが結果は同じだから別に良いだろ。

「はぁん……。んふ♪」

 本人も喜んでるし。こっちも手でやろうが足でやろうが喜ぶんだから結果は変わらない。

「おら。背中塗り終わったぞ」

「……」

 一通り終わったので足を離したんだが、一向に起きようとしない。

 なんだ? まだなんか企んでるのか?

「おい」

「ヤバッ。しばらく起き上がれないかも//////」

「あ、そ。理由は聞かないでおいてやる。てかしゃべんな」

「理由なんて勃――あぶ……っ!」

 しゃべるなつったろうが。このド変態。

 はぁ……。もしかしたら手と足で一つだけ結果が違ってたかもな。こいつの下半身的なやつが、さ。

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