第187話
「どりゃあ! 爆裂しろリア充!!!」
「オーライ!」
「任せた!」
「アタック!」
「余裕のレシーブ!」
「……」
二週間体を酷使してやっと来た休暇でビーチバレーをする体力バカが三人と一番はしゃいでる成人女性が一人。
なんでよりにもよってスポーツを選ぶかね? 本人たちが楽しんでるなら別に良いけどもさ。
「にゃーにゃー」
「ん? あ~はいはい」
コロナに呼ばれて自分の作業に戻る。今はヤツらがバレーしてる間に砂遊びをしてるところ。
ひたすらコロナが砂でプリンを作ってる。
「……♪」
ロッテは黙々と砂を掘ってる。必死になって掘りたいのを我慢してできるだけゆっくりやろうとしてるけど結局ちょっと速く掘ってるのが可愛いな。
「フム。こんなものか?」
で、問題はこいつ。付き合いの暇潰しでリリンも作ってるんだがなんだそれは。ロッテの彫り上げた砂の山を元に超リアルな女性の像を作ってるんだけど。
「……もう少し腰のラインをいじるか」
独り言がまるでアーティストとかクリエイターだが、それ暇潰しじゃねぇのかよ。
え、なんなのこいつ。なんの目的があってそんなことするの? 目立ちたがり屋ですか? やめてください迷惑です。
「お前はバストのサイズはどの程度が良いと思う?」
「知らねぇよ。お前の好きにしろよ」
「フム。では少々盛るか」
そもそも砂の像でなんでバストのディティール聞いてくんだよ。そしてなんで調整できるんだよ。手先が器用ってレベルじゃねぇぞお前。匠か己は。
「むふん♪」
おやおや。こっちの
「……じゅる」
想像してよだれを垂らし始めた。やめなさい。あとで買ってやるから。
「どわっ!? 危ない!」
伊鶴の声に振り向くとボールがこっちに飛んできていた。角度的にこれは……。
「!!?」
「あ~……」
コロナの自信作プリンサークル(仮名)が粉砕された。
「……」
「あ、ご、ごめんなざぁい!!!」
伊鶴がその場で土下座をするが、コロナはまだショックから立ち直れてない。壊された砂プリンの成れの果てに触れてガックリと
「コロナ……? お~い」
「っ!」
声をかけると
「ひっ!? 可愛い!」
ちょっと顔をあげてこっちをうかがってた伊鶴が頬を赤らめてる。反省してなくねぇかあいつ。
「ふん! ふん! ふん! ふん! ふがぁ!!!」
立ち上がり砂を踏みしめながら伊鶴のほうへ向かう。
……ってちょっと待て、さっき蹴りあげたときよりも踏みつけるほうが力入ってやがる。マナも全身から濃いのが滲み出ていてあれちょっとまずくねか!? あのまま感情任せに殴るなり蹴るなりしたら伊鶴が死ぬぞ!
ヤツは別にくたばっても構わんが、殺人は普通に目立つしお巡りさんに厄介になっちまう。それだけは避けなくては。最悪、伊鶴よ。テメェは死ね。
「おいリリンあれ――」
「もう少しヘソが……」
「ロッテ――」
「ふんふんふんっ♪」
ダメだこいつらは当てにならねぇ。俺しかあいつを止められねぇ。
めんどうだが流血騒ぎを起こすわけにはいかない。
「おいコロナ落ち着け……いって!」
羽交い締めしたら頭で顎をかち上げられた。マナが高密度で痛い。痛覚遮断してるのにぶち抜かれたぞ。かなりご立腹のようだなこの野郎。
「ふがぁ! あがうぅ!」
「く……っ!」
にしても力強いな!? いつもひっぺがせないから俺より腕力あるのは知ってるけど。今の俺、マナで筋力底上げしてるんだが!? なのに持ち上げるのが精一杯で気を抜くと振りほどかれそう……っ。
「あわわわわ……。あんなに必死になってこっちに来ようとしてる……っ! さっちゃんその手を離すんだ!」
「うるせぇ……! 今それどこじゃねぇ……!」
やっぱ反省してねぇじゃねぇか! テメェ俺がいなかったら殺されてるからな!? コロナをあんまなめんなよ!
「ミス伊鶴……。さすがに不謹慎じゃないかな?」
「子供が頑張って作った物を壊しといてその態度は」
「いくらソウルメイトでも擁護できねぇぜ?」
「………………すんませんしたぁ!」
周りからも責められて再び土下座。できれば一生そうしてろ!
なんとか落ち着いたので今度は俺たちの番。
チーム分けは俺とロッテ対コロナとリリン。おっきーチームとちっこいチームだな。
「ふんふん! ふん~!」
まだ怒ってるからか気合い十分のコロナ選手。リリンとロッテも集中してるようだ~。
俺? 俺はもちろんほどほどにやるよ。めんどくさいし。
「行くぞ~」
まずはリリンのサーブ。少し後ろに下がってるな。なにするつもりだ?
「……よっ」
「「「おぉ~!!!」」」
なんで本格的なジャンピングサーブをするんだよ! フォームが綺麗すぎて歓声が上がってるじゃねぇか!
って、軌道が完全に俺のほうじゃねぇか。あいつ狙いやがったな?
はぁ……仕方ない。拾うか。
「ほ……っと」
無難にネットまで返せたな。あとはロッテがはたき落とすだろ。
「すー……っ!」
「「「おおっ!!?」」」
え、お前まで本格的なスパイク!? 背中が反り返ってバストが強調されてることだろう。俺は後ろにいるので目視はできてません。
「ふん!」
――パンッ!
「……」
「……」
「「「……」」」
「ばぁか」
気合いと共に打ち下ろされた右手は軽々とボールを粉砕し、(呆れ声を漏らしたリリンを除く)その場の全員を黙らせた。
「……」
着地をして手についた残骸を見つめるロッテ。
「……す、す、す、すまない。あぁ……これどうしたら良い……?」
……オロオロするロッテも可愛いな。
「……っ! ……っ! ふぎゃあっ!」
コロナはコロナで地団駄踏んでる。発散できなくて悔しいんだな。
でも一つ思うんだが、たぶんお前も同じ運命をたどってたぞ。力入りすぎだもん。
さてさて。とにもかくにもロッテが可哀想だし解決策を提示してやるかな。
まぁ、あのボールはレンタルなわけで。解決策なんて一個しかないんだけどな。
「とりあえず。弁償するか」
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