第185話
「コロナも終わったし。俺も終わったし。次はロッテだな」
「あぁ。頼む。……で、どうしたら良い?」
あ、うん。そうだよね。コロナの塗り方しか見てないしこいつの場合は特殊だもんね。参考にならんわな。
「とりあえず背中以外塗っといてくれ。俺はまずこのコアラのごときコロナを引き剥がさないと」
「や!」
「うるせ」
「ふごふごっ」
鼻に指を突っ込んで頭を後ろに引っ張るが、いつも通り動じない。その物理的な要因では絶対に離れないという固い意志だけは尊敬してやるよ。
「あまり乱暴にはするなよ」
……乱暴にしたところで剥がれないけどな。今だって鼻に指突っ込まれて動じてないもん。
はぁ……どうしたものかねこれ。
色々説得を試みた結果。コロナはとりあえず背中に回りました。
最近わがままが過ぎるぞと指摘したら本人も自覚があったらしく。結構素直に背中にいったよ。人の体を虫やトカゲみてぇに這いながらな。そんなにくっついていたいのかお前は。
なんにせよ、前は空いたから良しとしよう。ひとまずはな。
「塗り終わったぞ」
「じゃあうつ伏せになってくれ」
「それは……必要なのか?」
「ビキニの紐はずしてから塗らないとムラができるだろ。ちょっとだけだけど。なに? うつ伏せになるの嫌なの? 犬なのに?」
「あぁ。息苦しくてな。あまり好きじゃない」
「なるほど」
納得。しかしそうなるとちょっとめんどうだが……こっちも提案してみるか。
「じゃあ落ちないように前押さえとけ。座ったまま紐はずして塗るから」
「おう。そっちのが良いな。手間をかけるがよろしく頼む」
「はいよ」
「えっと……こうだったかな?」
腕で胸を寄せて紐をはずしても水着が落ちないようにするロッテ。うんうん。それで合ってるぞ。ちゃんとエロい。
ロッテの準備もできたところで紐をはずしてオイルを塗り始めると、案の定というかなんというか。周りの注目がさらに集まる。
うつ伏せになって塗るってのはよく見るけど。この形は中々ないからな。それを美女がやってたらそら見ちゃうよね~。背中も綺麗だし。セクシーだし。
ただ、俺に嫉妬心を含んだ視線を向けるのをやめろ。気持ちはわかるがやめろ。うっとうしい。
と、心の中で思っても意味ないので、さっさと終わらせちまお。
「ほら。終わったぞ」
「……ん。もう終わりか」
少しだけ振り向いて横顔だけ見えたんだが、ちょっと名残惜しそうな切ない顔をしてやがったな。お陰で妬みの視線が強くなったよ。ボケ。
どーせ犬だから撫でられるのが気持ち良かったとかだろ? そんなもんホテル戻ったら犬になれ。いくらでも撫でてやるわ。モフり倒すわ。
「では次はどうす――」
「あ、バカ!」
終わったのはオイルを塗るのだけでまだ紐は結んでない! このままではロッテの豊満なバストが露になってしまう!
クソ! 俺がこんなテンプレ展開を自らやるなんてな! 屈辱的だが仕方ない! 公共の場での露出は犯罪だからな! ここはヌーディストビーチじゃねぇんだよ!
つーわけで食らえ! 意図的ラッキースケベ!
「……っ」
「おっ?」
立ち上がろうとしたロッテの肩を掴みこちらを向くように反転させる。その際に細く影を伸ばして首の部分の紐を結び直す。細かい作業だったが思考の加速で雑だがなんとか結べた。あとで直せよ。
「い!?」
次に抱きつくように体を寄せて押し倒す形になる。反射的に抵抗するかと思ったけどしなかったな。偉いぞロッテ。
押し倒すだけでも隠せるが、またロッテが気を付けずに体を起こしかねないので手を背中に回して即行で紐を結ぶ。今度は影を使わずにな。お陰で普通に結べたし、こっちは直す必要なさそう。
「……ふぅ。ロッテ。いくらお前が裸見られても平気つっても公共の場では気を付けてくれ」
「………………」
「ロッテ?」
返事がない。顔を真っ赤にして目を見開いて黙っている。ただの
「おーいロッテ~。大丈夫かぁ~?」
「あうあう」
俺の代わりにコロナがロッテのほっぺをペチペチ叩く。それでも反応がない。
……ふむ。とりあえず離れたら意識が戻るだろうか。
「………………はっ!?」
あ、離れたら本当に意識が戻った。面白いなお前。
「大丈夫かぁ~?」
「ん……? あぁ……うん? たぶ……ん? 恐ら……く?」
曖昧だな。頭でも打ったのか? そんな感じなかったけど。
「本当に大丈夫か?」
「きゃひん!?」
顔に触れるとビックリした犬みたいに後ろに跳び退いた。珍しいな。人間の姿で犬的行動。
「あ、えっと……。と、とりあえず頭を冷やしてくる!」
そう言うとロッテは走ってどっか行ってしまった。
もう声届かないだろうけど一応言っておくか。
「いってら~」
……あ、ナンパに捕まった。
「むぐむぐ。おい。ロゥテシアがどっか行ったようだが何かあったのか?」
ロッテが走り去ったほうからリリンが歩いてくる。……大量の食い物を持って。
こ、こいつ。食い物買ってて遅れたのか……。懲りねぇにもほどがある。別に良いけどよ。
「……かくかくしかじかこんなことがあってな」
呆れつつも問いには答えてやる。すると今度はリリンが呆れ顔になったな。
「背中にへばり付いてるのもあいつも相変わらずだな」
「お前もな食いしん坊」
「ん~? 我は変わっただろう?」
「……」
挑発するような目付きがムカつくけど言いたいことはわかる。
今着てる水着は布面積が少な目の赤と黒の大人っぽいビキニ。
前の体格だとちょっと犯罪臭かったが、現在の体格ならマセガキって程度に収まってる。しかも雰囲気が大人っぽいから幼児体型の見た目よりも年齢はいってるんだろうなって思わせられるだろうな。実際はバハアだし。
正直。リリンが一番この場にいる人間を魅了してるだろう。それくらいこいつは美しい。
……本当見た目だけは良いからな。見た目だけは。
「フム。しかし流れ的に我もやってもらわんとなぁ~?」
うっわ。挑発的な目に加えてガッツリ口角上げてきやがった。腹立つわぁ。ビンタしてぇ。
「ほれ。こういうシーンは王道だろう? さっさと塗れ」
食い物を置き、ビキニのヒモをはずしてうつ伏せに寝やがった。順次万端だな。
王道つっても三人目……いやコロナはだっこしたままでロッテは座って塗ってたからそういうシーンにはなってないか。
……まぁ伊鶴と多美とアレクサンドラは女性陣でやってたけどな。
「早くしろ。いつまでもこうさせておくつもりか?」
「……」
どうしよう。ものすごく放置したい。無性にコロナと一緒にロッテを探す旅に出たいな。
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