第184話

「遅くなってすまんな。コロナが目覚めるのを待ってたんだ」

「そうか。ご苦労さん」

 ふむ。さすがというかなんというか。凄まじいな。ロッテの水着姿。

 元々動物ということもあって露出の多いオーソドックスなビキニを着てきたんだが、大迫力です。

 まず、ロッテは胸がデカい。背もデカいからナイスバランスに留まってるが、それでもデカい。かといって脂肪はそこまで乗ってない。手足は筋肉質でスラッとしてるし腹も割れてはないが締まってて同性が見たらカッコいいと言いそうなプロポーション。

 事実。アレクサンドラのように注目を浴びている。背が高い以上にかっこよさと美しさが同居した姿が目を引くんだろうな。俺もちょっと「お?」って思ったくらいだもん。全裸見たことあるのにな。

 人間不思議なもんで全裸よりもなんか着てるときのがグッとくるパターンもあるんだよな。本当不思議だわ。

「……すんすん。何か体につけてるのか? 不思議な香りがするが……」

 俺の体に顔を近づけて鼻をヒクつかせるロッテ。サンオイルの匂いがそんなに気になるのか? そら普段嗅ぎなれないだろうけど……。

「っと、そういやロッテに頼みたいことあるんだったわ。ちょっとサンオイル背中に塗ってくんね? 他は終わってるから。あとコロナの体にも一応塗ってくれ」

「オイル? 油か? そんなもの体に塗ってどうする?」

 あ、うん。そうね。お前には馴染みないね。すまんすまん。俺の説明不足だったわ。

「直接日光浴びると肌が焼けるんだよ。それを防ぐためのやつな」

「……ほう。なるほど。そういう物があるのか。まだまだ知らないことがあるな……」

 勤勉なロッテさんでもまだ知らないことがあるんだね。ちょっと驚いたよ。

「用途はわかった。わかった上で聞くんだが」

「ん?」

「主に必要……か?」

「……」

 そこに触れちゃうかぁ~……。触れちゃいますかぁ~……。

 正直必要ない。肌なんて焼けません。だってリリンの肌質だぜ? 焼けねぇし。焼けたところですぐ治るわ。

 でもほら? 人間ってていで生活してるからさ? ちょっとは合わせよう的なやつだよ。めんどくさいけど。

「念のためだよ念のため。お前も塗っとけよ? その体だと焼けちゃうかもだし。あいつらの誰かに頼めば手の届かないところやってくれるだろ」

「……いや。才に頼む」

「……なんで?」

 周りの視線が痛くなりそうだから嫌なんだけど。なんか理由でもあんのか?

「才以外に撫でさせるつもりはない」

「お、おう……。そうかぁ~……」

 その図体で可愛いこと言ってくれるじゃねぇかこのわんこ。

 ぐぅ~……。普段色々苦労かけてるし……。忠犬の願いくらいは叶えてやるべき……だよなぁ~……。

「……わかったよ。やるよ。やるけど」

「けど?」

「そこでニヤついてるボケ四人を手始めに始末したいから手伝え」

 ミケ。伊鶴。アレクサンドラはわかる。多美までニヤニヤしてるのは想定外だぞ。てかお前らさっさと遊んでこいよ。全員集まるまで待たなくて良いだろうが。

「いや~。なんか見せつけてんなぁ~って? リア充死ねよ。股間弾け飛んじまえ」

「羨ましいよ。腕の中にも目の前にも見目麗しい女性レディがいて」

「ミーと熱い夜を過ごしたクセに盛りやがって。とんだ男に引っ掛かっちまったぜ!」

「人付き合い悪そうだけど女癖は悪そうだよね~。何人泣かせてんのあんた?」

「ツッコミどころが多すぎて手に負えねぇからもう黙れよテメェら漏れなく全員よ……っ」



「とりあえずコロナを済ませるか。どうせ自分でやらねぇんだろお前」

「ん」

 良いお返事だこと。できれば否定してほしかったわ私。

「じゃあ背中はやってやるから……他の部分任せて良いか?」

「それは構わんが……。一つ聞いて良いか?」

「なに」

「コロナにこれは必要か?」

「……たぶん必要ないけど。一応やっとく的なやつ」

「……なるほど」

 コロナはやたら熱に強い。むしろこいつが熱いときがあるくらいだから必要ねぇんだろうなぁ~とは思うけど。念のためやっておく。万が一焼けちゃって癇癪起こされたらたまったもんじゃないからな。予防大事。

 ってわけで、とりあえず背中から済ませるか。

「よーし塗るぞ~」

「ん~♪ はふぅ~……♪」

 背中に塗り始めると気持ち良さそうな声を出す。

 ワンピースタイプでも背中かっぴらいてて助かったわ。だっこしたまま塗れるからな。お陰でおとなしく塗りたくられてるよ。

「こんなもんで良いだろ。ロッテあとは頼む」

「わかった」

「……」

 ロッテが塗り始めるとすげぇ不機嫌そうな面に早変わりしたな……。たぶんなんで俺がいんのにこいつが触ってんだよってところかな。お前まだロッテに心開いてないのかよ。気難しいヤツめ。

「ふんぐ!」

「ごふ……っ!?」

 我慢の限界とばかりにコロナの蹴りがロッテの腹に入る……!

 なにしてくれてんのお前!?

「おいコロナお前――」

「いや……良い……。ちょっと前まで風呂はこんな感じだった……」

 え、そうなの? 新事実発覚なんだけど。お前毎回コロナバイオレンスのある入浴をしてたんだな……。それなのに毎回任せてて悪かった。今度なにかで詫びるよ。

「と、とりあえず際どいところだけやってもらえるか? 胸とかケツとか足の付け根とか」

「……わかった」

「他のところは俺がやってやるから。蹴るなよ?」

「……ん」

 渋々と言った感じの了承だな。この恩知らずめ。超ロッテに謝らせてぇ。絶対癇癪起こされるからやんねぇけどさ。

 ……とりあえず、この旅行が終わったらちゃんと躾よう。少なくともロッテが二度と蹴られるようなことがない程度には仕上げよう。うん。

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