第172話
「ハーイ! やってるかいマスター!」
「やぁサンディ。いつもの席空いてるよ」
「オウ! それはとってもラッキーね!」
「お!? サンディちゃんだ! 今日もイケてるね!」
「オフコース! ミーはいつだってマーベラス!」
「うはぁ! ツイてるな!」
「お? ミーはラッキーガールでユーはラッキーボーイ? ここには
「サンディちゃん! こっち向いてポーズ決めて!」
「いいよ! イエア!」
「キャー! 可愛い!」
「サンキューサンキュー♪」
「……」
連れてこられた場所は島にレトロなカフェ。静かな雰囲気は俺好みだな。
話題のリゾート地なのに客が少ないのは恐らく島にいくつかある住宅区画の一つの付近だからだろう。リゾート開発されているから働き手は必要。ここはその人たち向けの場所ってことだな。
つか、入って早々ド偉い人気振りだな。なんでだろ? 名物なのかなこの人。たしかにキャラは濃いし……わからなくもない。こいつら全員頭おかしいと思っちゃうけどな。こんな変なヤツ支持してるし。
「……ん!? っていうかなんか知らない顔連れてないか!?」
「うえマジか!? ま、まさか彼氏!? つか子連れじゃん!?」
「サンディちゃん! 俺の誘いはいつも断るのになんで子連れ男なんかと!」
誰が子連れか。俺がそんなに老けて見えんのか己らは
「アハ♪ ちょっとコーキシンに負けてナンパしてきちゃったぜ♪ ホテルに連れ込んでビュ~ティフォーガールごと食べちゃいたいよ」
「ヒュ~♪ さっすがサンディちゃん! 肉食系~!」
「D・A・R・O♪」
あーダメだテンションについてけない……。もう頭おかしくなりそう。っていうか別に食われねぇし。
「にゃーにゃー? ん」
コロナが心配そうに見つめてくる。はは。ありがとう。でも忘れてほしくないんだが、お前が人目を
「おっと! ソーリーソーリー! 皆とのトークは大好きだけど、今日は彼らがメインだからこの辺でゴメンね?」
「う~……。もう少し話したかったけどそういうことなら……」
「幸せになってくれよサンディちゃん……」
「今度で良いから今夜の感想教えてね!」
……おい。なんか俺が食われる前提で話進んでない? 全力で抵抗するからな? 見た目は美人でもキャラがキャラだから俺のアソコにまったく来ないし。卒業までお預けって決めてるし。なんならそういうことするならカナラのが良いし。
「ミーのおごりだ! なんでも好きな物を頼むと良いよボーイ!」
「はぁ……どうも……」
席につくとメニューを渡される。店の雰囲気に合わせてメニューカバーがこれまた茶色でレトロな感じ。おしゃれだなこの店。
「なんでも良いってよ。なんか食いたい物あるか?」
「……ん! ん! ん!」
コロナが指差したのはハンバーグ付カルボナーラ、クリームソーダ、そしてやはりというべきかプリン。
お、お前……。このあとホテルで夕食があるんだけど? 食べれるのか? いや、食うか。こいつも食おうと思えばリリンみたく無限に食うからな。すぐに食事に飽きて俺に甘えようとするだけで。……食事に飽きるってなんだよって話だけどもな。
「じゃあ俺は……」
どうするかな。コーヒーで良いか。カフェだし。無難なところを行こう。
「オーダーは終わったかい?」
「はい」
「じゃあミーもオーダーっと。いつも同じものしか頼まないからすぐ終わるんだけどね。ハハハ!」
さいですか。教えてくれてありがとうございます。超興味ないです。
「おまちど」
「サンキューマスター」
「どうも」
「ん……ん……」
まず飲み物が運ばれてきたのでコロナが対面か背面に座り直す。
ちなみに目の前の白人が頼んだのは紅茶。香りからしてアールグレイかな? 詳しくないからあってるかわかんないけど。
「ぶ!? かわ……! 可愛すぎないか!? なんだあの子!?」
「天使か!? 天使なのか!? てか胸すごぉ!?」
「うん! 親子どころか兄妹ですらないね!」
顔が露になったので他の客がどよめいた。
コロナの顔が見えた瞬間血縁関係にないってちゃんと誤解が解けて嬉しいよ。平凡な面で悪いな。ボケ。
「さて! ドリンクも運ばれたところでトークしようぜボーイアンドガール!」
「にゃーにゃ――」
「それくらい自分で飲まなきゃ無理矢理引き下ろすぞ?」
「……ちゅーちゅー」
飲み物まで手ずからやるのはめんどくさいのでちょっとドスを利かせてやったわ。俺の本気度が伝わったのかコップを両手で持ってストローに口をつけてくれた。
よしよし。お前はやればできる子って俺はわかってたよ。どうせこのあとカルボナーラは俺が食わせるんだろうけどな。
「オウ! 意外とワイルドな一面もあるんだね!」
「いや、ただの躾みたいなもんです。甘えたがりで自分でやりたがらないもんで」
「ふ~ん? 契約者の世話を焼くなんて偉いねボーイ」
「……!?」
お、おいおい。この人今なんて言った? 聞き間違い? いやあり得ない。この体でこの距離で発せられた言葉を聞き間違えるなんてあり得ない。
俺とコロナはたしかに見た目はまったく似てない。似てるわけがないが。だが、それだけで契約者とわかるか普通?
コロナの骨格や肌の色、耳とか細かいパーツは多少の違いはあるけど。ほとんど変わらない。だから異界の生物とはパッと見わからないはず。
なのにこの人は出会ってから数十分しか経ってないのに言い当てた。
「んふ♪ さぁユーも飲みな? せっかくのコーヒーが覚めちゃうぜ?」
ここにきて調子の良い笑顔が不気味に感じる。
この人。一体何者だ?
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