第170話

「これも良いですね~。あ、こっちも似合いそう。っていうか何でも似合っちゃいそうで困りますね~迷いますね~。予算は気にしなくて良いですよね~」

「いやそこは気にしてください」

 最後になにぶっこんでんだよ。俺が金持ちに見えんのかこの店員。

「え? そんなに可愛い子にはたくさん服が必要ですよね? 色んな格好見たいですよね? つまり金に糸目はつけませんよね?」

「屈託のない目でなに言ってんの? 予算くらい決めさせてください。ってかグイグイ来ますね? 接客ってわかってます?」

「あ! これも良さそう!」

 おう。聞けよ。



「お待たせいたしました!」

「はぁ~……」

 やっとか。かれこれ一時間待たされたぞ。まぁ――。

「にゃーにゃー♪」

 こいつはずっとご機嫌だったからまだ良かったけどもね。普通の子供なら退屈過ぎてグズるよな。腹へった~とか文句言い出すよね。そこだけはマジで助かるよ。だっこしてればご機嫌だから。

「(´・ω・`)グゥ~」

 腹は減るみたい。あとでなんか買ってやろう。

「ご試着願えますか♪」

 わぉ。良い笑顔。ぶん殴りてぇ。

 コロナの服選ばなきゃいけないから我慢してやるけどな! 良かったな! まだ選んでなくて。

 ……いや、うん。法律ってのがあるから普通に我慢するよ。

「じゃあ悪いんですけど着替えを手伝ってもらって良いですか? こいつ一人でできないんで」

「え!? 良いんですか!?」

 良いよ。別に。つかそんなに嬉しいか。鼻息荒いぞあんた。積極的なのはありがたいけども。

 ただまぁ。お願いしたのは良いものの、問題はある。

「( ´_ゝ`)」

 どんな感情だそれ。いや感情捨ててないかそれ?

 とりあえず。本人に許可を取らなくては。

「服。選んでくれたぞ。着替えも手伝ってくれるってよ。いってこい」

「や!!!」

 全力の拒否。元気があってよろしい。いやよろしくない。行ってもらわないと困る。

「お前の気持ちはわかる。俺も離れるのは寂しい」

「……! にゃーにゃー……!」

「だが行け」

「や!!!」

 やはり手強い。安定の手強さ。そんな安定感ほしくなかったなぁ~。

「えっと。すみませ……」

「……」

 店員さんがコロナに拒否られて膝をついてる。なんか……ごめんなさい。いたずらに傷つけて。

「……ん?」

 ふと、服を見てみると。少し違和感がある。

 違和感っていうか……サイズが小さいというか。合わないのばかりだ。

 しまった。コロナの顔は見せたけど体は見せてない。こいつの体型が後ろ姿でしか確認できてなかったんだ。だから(胸の部分が)小さめの服しかないんだ。

 うん。これは俺が悪い。ちゃんと謝ろう。

「あの~……言いにくいんですけど」

「……これ以上の追い討ちですか? 大丈夫です。すでに瀕死なので」

 それ追い討ちかけたら死ぬやつじゃね? ダメじゃん。言わなきゃ話進まないから言うんだけどさ。

「時間かけて選んでもらって悪いんですが……ほら、コロナあっち向け。見せたほうが早いから」

「や」

 椅子に座ってるから体を反転させれば見栄るだろと促したんだが、やはり拒否。だが今回は我に策あり。

「俺から抱いてやるから」

「……ん」

 渋々ながらも体を反転させるコロナ。よしよし良いぞ。約束通り後ろからギューッとしてやろう。元々するつもりだったしな。なぜって? 腹部にある服の中の空間をなくして胸を強調するためさ。

「むふ~♪」

「……!? 良いものを……! お持ちで……!」

 あ、ロリ巨乳は許容範囲なんですね。元気が戻ってなによりです。

「サイズ合わないんで……! 新しい服と下着……とってきます……! ……さすがに選べるのが少ないのが悔やまれる! 仕入れ増やそ!」

 あ、お店の偉い人だったんだね。そしてロリ巨乳用の商品少ないんだね。やったぜ。待つ時間が減るわ。



「こちらでいかがでしょう? 失礼ですがそこまで特殊な体格だとオーダーメイドじゃない限りはあまり数がなくて……」

「いえ、大丈夫です」

 下はまぁちょっとケツがデカイだけだから困らなかったみたいだが、上はそら困るよね。それでも三着もあることに驚きだよ。服屋ってそんなもんなのかな? 俺にはよくわからないけど。

「え~っと……」

 普通の大きめのTシャツに、肩紐がついた伸縮性のある素材でできたトップス。あとはニットっぽい肩出しの服。形状的に片方だけ肩が出るやつだな。

 うん。夏なだけにちょっと露出はあるけど。ロリータ系よかマシだわ。全部もらおう。

「じゃあ上のは全部いただくんで、下のコーデお願いしても?」

「はい。ありがとうございます。……それで試着はどうしましょ? 念のためサイズの確認をしたほうが良いと思うんですけど」

「あ~……そうですね。どうする?」

「( ´_ゝ`)」

 いやその顔じゃわかんねぇよ。まぁどうせ俺かロッテ以外は嫌がるんだろ? 知ってる。

 あんまり公共の場では嫌だけど。仕方ない。

「俺が着替えさせます。じゃないとこいつが……」

「ふんす! ふんす!」

 どうどう。落ち着け。もう会ったばっかの人に任せないから。

「そ、そうですかー。お着替えはこちらでどうぞー」

 目から虹彩が消えた。よっぽど手伝いたかったんですねー。スケベな店員だよ。

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