第168話
ふと、メールの内容を思い出す。
『やぁ才。またどっか行ってるのかい? 夏休みの予定決まっちゃってるのかな? 僕たちは合宿もかねたバカンスだよ! なんかミスターが色々手を回してくれていたみたいでね。口や態度は悪いけどやっぱり彼は良い先生だね。生徒のためにここまでしてくれるんだから。一ヶ月丸々部屋を取ってくれてるらしいから、もし予定が空いてたら才も合流しなよ』
『やーいやーいざんまぁ(*´ω`*)ザマァ さっちゃんがほっつき歩いてる間にこっちは高級ホテルでお泊まりだZE♪ しかも一ヶ月ぜーんぶな! なにしてるか知らないけど。少なくとも私らより良い思いとかしてないよね~。なんたって話題のアソコに来ちゃってるから。ん? そこはどこかって~? ふふん♪ 帰ってからたっっっっぷり土産話聞かせたげるから。指をしゃぶって待ってろハーゲ♪』
最初はあの二人から主にこんな内容の自慢というか煽りメールが届いていた。
だがしばらく見ていくと、内容が真逆になっていく。
『さ、才……これはバカンスじゃない。ユートピアに来たと思ったら違った。リゾートの皮を被った地獄だ……。だが来るべきだ。君も僕たちと同じ運命をたどろう。ははは。二週間分のラグがあるから君はこれ以上の地獄を味わうのかな? ……もしもこっちに来ることがあれば……どうか死なないでくれよ?』
『知ってたな知ってたな知ってたな知ってたな知ってたな知ってたな知ってたな知ってたな知ってたな知ってたな知ってたな知ってたな知ってたな!!? 貴様ここが地獄だと知ってたな!? 許さねぇ! 絶対に許さねぇ! 早く来い! 早く来て同じ……いや! 我々よりも辛い辛い生き地獄を味わえ! 普通の夏休みを謳歌するなんて絶対に許さねぇからなクサレチ○○ォォォォォオ!』
後半……いや、九割くらいずーっとこんな感じなんだよな。
楽しそうなのは最初だけであとはミケの元気の無い心配してる言葉と伊鶴の罵詈雑言と恨み言。
こんなメールを見せられてモチベが上がるわけがないよなぁ~。
例えこれから行く先が島を丸ごとリゾート地にしたばかりの話題の場所――
にしてもチープだなこの名前。誰が考えたんだろ?
「やっと着いたか」
港について手続きを済ませて外へ出るとこれがまた人の多いこと多いこと。
さすが現在世界で一番の観光地だよ。よく予約取れたよなぁ~先生。コネでもあったのかね~。
ま、事情なんざどうでも良い。取れたんだから俺たちがここにいるわけだしな。俺たちだけ二週間遅れだけど。主に俺のせいでだけど。
今はんなことより。このあとの予定だな。
「荷物は送ってあるしこのままブラブラしても良いっちゃ良いけど……どうする?」
「我は先にホテルに行ってる。荷解きをしといてやろう」
あ、持ってきたゲームをやる気だな。インドア派め。まぁ良い。下手に出歩いてトラブルを起こされるよりかマシだ。
こいつちっこいけど見た目良いし雰囲気は大人だから誘拐未遂だのナンパだのいくらでも嫌な想像ができる。そして加害者側が一番被害を受けるまでがワンセット。
「ロッテは?」
「儂もホテルへ行こう。リリンの荷解きは少し心配だ……」
「信用無いな。我とて何でも適当なわけではないぞ?」
「ゲーム取り出して他放置という事が起こりうると思うのだが?」
「それはあるな。多分に」
「そら見ろ」
「デイリー大事」
なんか内容だけ聞くと
う……っ! さっきの光景が現実に……!
「それで? お前はどうする?」
「俺は……そうだな……」
「にゃーにゃー♪」
あ、抱っこしてるコロナを見て思い出したわ。やりたいことあったんだったわ。
「俺は買い物に行ってくる。コロナのこの格好浮きまくりだからな。いい加減普通の動きやすそうな服もほしい」
周りの視線が痛いからなぁ~……。誤解は受けないに限る。
「クハッ。佐子のヤツはコロナにその手の服しか寄越さんからなぁ~。コロナが言葉を発っさない事を良い事に趣味全開だものなぁ~?」
「着替えも大変だし。最近リリンが着てるような服だとありがたいな」
ロッテの目線がことごとく
「では散ろう。ほれ、行くぞ犬」
「唐突に犬扱いか……。間違ってはないから否定も拒否もしづらいぞ……」
俺が言うのもなんだけどロッテは狼だぞー。普段心の中では犬って言ってるけど心の中だけだから許してくれロッテ。
「さて」
リリンたちを見送ったし。俺たちも行くかな。
「それじゃ俺とお前はこれから二人でデートってことで……降りてくんない?」
「や」
あ、そう。じゃあこのまま抱っこでお店探して入らなきゃなんだね。
今ですら結構注目集めてるのに店員さんにまで気まずそうな面で接客されちゃうのかな俺。想像するだけで鬱いなぁ~……。
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