第68話
「はぁ……はぁ……。お嬢ちゃん可愛いあんよしてるね……。ついでにシャツめくっておぱんちゅ見せてもらって良い?」
「やぁ~……」
コロナを抱え今はパンツをはかせようとしてるんだが、なぜかパンツを見ようとしてる先輩。見せられるモンがねぇからまずあんたに頼んでるんだけど。ノリで言葉発しすぎだぞ。
「気持ち悪いんで普通にパンツはかせてくださいよ。コロナも怖がってますし」
こいつの場合俺以外全部拒否ってるがな。たぶん気持ち悪いのは関係ない。
「言いたいことはわかるけど。異性から気持ち悪いって言われるのって大分堪えるからやめてもらって良い?」
じゃあ最初から普通にしてもらえないものかね? あんたがふざけるからいけないのも理解してほしいわ。
「良いから早くしてくださいよ。時間に余裕なくなってきてるんだから」
「はいはいわかりましたよー。なんか態度デカいなこの後輩……」
コロナの足を下げさせると久茂井先輩はスルッとパンツをはかせる。続いて用意してもらった服も不格好な体勢になってるのにも関わらずスムーズに服を着せていく。そんな器用なことができるなら最初からやってほしい。
「最後に髪留めは……これもシンプルなのが良いかな? はぁ……本当に綺麗な髪……。見るだけでも幸せなのに触ると幸福感が鼻から溢れる……」
「それは鼻血だ。早く拭け。見るに堪えん」
同意。俺とコロナにもつくかもしれないんで本当鼻血は気を付けてほしい。
「あぁん♪ リリンちゃんのジト目が追い討ちとなりて我が命の噴水は雄叫びをあげるぅ! フォォォォォオ!!!」
さらに鼻血の量は増し、比例して顔色が悪くなっていく。なんでこんなゆるゆるな鼻で、こんな血垂れ流して今まで生きてこれたんだろ? 不思議でならない。
「で、これで終わりですか?」
「ま、まだもう片方の髪留めつけてない……。よ、よしこれで良いよ……」
プルプル震えて瀕死の状態だけど、肩から先だけは淀みなく髪留めをつける。なんかプロ根性みたいなものを感じたな。あれだけ出血しながらも手元だけは狂わない。ただそもそも鼻血噴くんじゃねぇって話だけど。
「終わったってよ。一回離れて見せてみ?」
「やー」
いやそこは嫌がんなよ。見せろや。着る前に一応確認したけど、着てから問題とかあったら困るだろ。サイズのこともあるし。サイズに関しては久茂井先輩の目をある意味で信用してるから心配はしてないけど。……胸デカいからボタン引っ張ってないかとか気になる。どうにかして確認しないと気がすまない。
「コロナの可愛いところ見たいなぁー。見せてくれたら嬉しいなー」
「面白いくらい棒読みだな」
うるせぇ。俺にはこれで精一杯なんだよ。お前みたいに器用じゃないんですぅ。いきなり幼女の演技できるお前に比べたら俺なんて切り干し大根みたいなものですよぉ。
「……」
そんなお粗末なおだてでも効果があったのか、コロナは一時的に俺から離れる。
「ほほう」
全容を見ると中々どうして様になってる。ブラウスには多少ヒラヒラしたものかついてるがスカート部分の装飾はほとんどないので良い塩梅でゴタゴタしていない。髪も小さな束をツーサイドアップにしてるのが絶妙だな。髪留めも藍色の細いリボンのように見えるが、髪質が細いので気を遣って裏にピンがついてるタイプらしい。俺でもつけてやれそうだからありがたいな。なにより物語のお嬢様みたいに愛らしい。困ったな。似合いすぎる。魅力が上がりすぎるのは個人的に困るんだよ……。
「にゃーにゃー……?」
「あ、もういいぞ」
「ん」
物欲しそうに見てくるので抱っこしてやる。まだ似合ってるの一言も言ってないんだが、そんなことよりも抱っこのが重要なのね。
……あれ? いつもより感触がダイレクトじゃない。スカートのお陰でケツの感触が抑えられるのは素晴らしいな。思ったよりも厚手なのが尚良い。
「んーんー」
たった数十分だがちゃんと抱っこされなかったのが不満だったようで、ギューッと力強く抱きつき肩に顔を埋める。こういう子供っぽい仕草のお陰で性欲湧いてこないから助かる。そうやっていつまでも甘えておくれ。ただし風呂と寝るときはやめておくれ。
「あ~……がわいい……。抱っこおねだりがわいい……。シャツのままでも良いけど。ロリータ着るとシチュ的に妄想も捗る。天使はここに舞い降りた……!」
キャパの限界が来たようで、先輩が完全にぶっ倒れた。どくどくと鼻血を垂れ流して池を作り始めてる。まぁ久茂井先輩だし。ほっといてもなんだかんだ生きてるだろ。
「じゃ、俺はおいとまさせていただきます。授業なんで」
「……残りの服はサイズ調整して送っておくよ。ガクッ」
「あざ~っす」
先輩とうとう力尽きたか。よし教室に向かおう。服はありがたく使わせていただきます。
さて、先輩よりもむしろコロナをどうするかだな……。留守番……なんてできないし……。先生、同席許してくれるかな? あ、先にそのあたりも学園に報告しとけばよかったかな?
「一応紅緒には連絡してある。邪魔にならなきゃ一度や二度は多目に見られるだろ」
「マジか」
相変わらず無駄に抜かりないな。手間が省けて助かるわ。絶対口には出してやらないけど。リリンちゃん愛してるよチュッチュッ。
「我は部屋に戻る。他に何かしらあったら自分で何とかしろよ」
「あ、あぁ。さんきゅ」
リリンは言うだけ言うと俺たちと別れる。……っと、見送ってる場合じゃないな。急がないとちょっと時間的にまずい。
「コロナ。ちょっと急ぐからしっかり掴まって……」
「んー」
って言うまでもないか。しっかりへばりついてるわ。そんじゃ急ぎますかね。小走りにならない程度に抑えつつも早歩きで教室に向かう。
「あれ? 君……」
「あ?」
もう少しで教室というところで呼び止められる。黒髪ショートにミニハット。フリルをあしらった改造制服。何となく久茂井先輩が好きそうな服を着たスレンダーな女子だ。
「なに? なんか用か?」
急いでるから要件があるなら早く済ませてほしいんだが。いっそ無視してやろうか。
「用ってほどでもないんだけど。ちょっと気になっちゃって。抱えてる子可愛いね? 契約者?」
「あぁ。まぁそんなところ」
「へぇ~。こんにちは」
「……やー」
一瞬チラッと女子を見るが、すぐに顔を隠してしまう。人見知りだし仕方ないか。
「ありゃ。嫌われちゃったかな?」
「いや、そもそもこいつ俺以外は苦手っていうか」
「そうなんだ。じゃあまだ仲良くなれる余地はありそうだね」
その言い方だとこれから俺と交流していきますよ~って感じが臭うんだが。俺あんま知り合い増やしたくないぞ。めんどくさい。
「そろそろ時間だから今回はこの辺で失礼するね」
「そうか」
「うん。またね」
話しかけてきた女子は自分の教室に向かう。あそこは……B組か。中々のエリートさんかよ。ペッ。
「あ、僕の名前言ってなかったね。僕は
最後に自己紹介をしてニッコリと笑い教室に入っていく。なんだったんだあいつ? 見た目は可愛かったが気味が悪いな。生理的に受け付けないなにかがあった。理由はわからないけどな。正直あんま関わりたくない。陽キャ感もあるし。それに。
「んー……」
なんかコロナも特に怯えてるっぽい。先輩相手よりも震えてる。
「よーしよし。もう変なの消えたから大丈夫だぞ~」
背中をポンポン叩いて落ち着かせてやる。癇癪起こされたらたまったもんじゃないからな。ちゃんとケアしとかないと。
「もういいか?」
「……ん」
落ち着いたっぽい。良かった。コロナももう平気みたいだし俺たちも教室へ……。って時間みたらさらにギリギリになってる!? クソ! あの変なヤツのせいで目と鼻の先だったのに間に合わなかったとか洒落にならん!
「コロナ!」
「んっ!」
名前を呼びながら俺のほうから強く抱き締めるとすぐにコロナからも抱き締め返してくる。よしそのままくっついてろ。背に腹は代えられんのでちょっとだけ走る! 遅刻なんてしたらあの先生のことだ。どんな
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