第66話

「んふ~♪ にゃーにゃー♪」

「……」

 現在俺はコロナをバスチェアに座らせ、シャンプーハットを被せて髪を洗っている。もちろんタオルで胸と下は隠してるし俺も隠してる。まだコロナに男のナニは早いですので。密着しなければ暴れるかと思ったんだが。そもそも離れないと思ったんだが……。意外と手繋いだり近くにいたりすれば良いらしい。それでも大分うざったらしいけども。まぁ、今は大人しく洗われてるし良しとしよう。明日からはこうはいかないけどな。どうにかしてロッテに押しつけてやる。……にしても本当疲れた……。眠い……。

「……」

「にゃーにゃー?」

 おっと。疲れで少し手が止まってしまってた。さっさと風呂終わらせて布団とランデブーしなくては。そのためにもコロナよ。俺のために人柱となるが良い。

「おらおら~」

「んにゃ~♪」

 わしゃわしゃと細くて綺麗な髪を乱雑にかき回し洗っていく。なんか子供って頭乱暴に撫でられたりすると嫌がるかと思ってたんだが、割りと好評だぞ。意外。どういうこった? ……まぁいい。このままさっさと洗ってしまおう。

「一応目つぶっとけよ」

「ん~」

 粗方洗うと頭からお湯をかけシャンプーを落としていく。改めて何もついてない髪を触ってみるが本当綺麗だな。リリンの髪もかなり綺麗だが良い勝負してるわ。だがしかし! 一番はロッテ(犬)だがな! そこは譲れん!

 ……さて、風呂での一番の大問題に取りかかるか。はぁ……。憂鬱だ。だってこれから幼女の体を洗わなくてはならないのだから。

「良いかコロナ。今から体洗ってやるから余計な動きをするなよ? 言われたようにしろ。わかったか?」

「ん~? ん」

「……」

 頼りない返事だが。うちのコロナちゃんは良い子だと信じよう。でなければ俺の精神が持たん。俺はふわっふわのバスタオルを濡らしてボディソープをつける。バスタオルはできるだけ織って手に感触が伝わらないようにしているが、これがどれほど通用してくれるか……。まずは背中で試そう。いざ! ゴシゴシっと。

「んふ~♪」

「お?」

 意外と良いんじゃないか? そこそこの力でも擦ってる感はあるが細かい感触はわからない。これならあそこもいけるのではないだろうか。そう。あのそびえ立つ身長に似合わないデカイおっぱいに! いざ! 尋常に勝負!

「……」

 ダメでした。どんなに優しく洗ってもぽよんぽよんっと跳ね返してきます。コロナの実年齢はわからないが、これ以上の心の実況は俺の精神が持つわけもないので割愛させていただく。ただ最後に言わせてほしい。分厚い布越しだったが、ものすごく……やらかかったです。



「よし。コロナ。湯船に入ってろ」

「ん」

 体を洗い終え、やっと自分の体を洗えるよ……。俺のほうはもう適当で良いや。さっさと洗って終わらせてしまおう。

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

「こっち見るんじゃないの」

「あう」

 ず~っと洗ってるところをジロジロ見ているコロナの頭を掴み、目を逸らさせる。上半身はともかく、タオルで隠れてる部分まで見ようとするもんでね。まだお前に男を見せるわけにはいかない。

「ちょっと避けて」

「ん~」

 体を洗い終えると俺も湯船に入る。コロナも十分温まってないだろうし、待つ間俺も浸かってないと冷えるからな。本当は嫌だけど。仕方ない。仕方ないんだ。

「ふぅ~……」

 普段あまり湯船に浸からない派なんだが、たまに入ると気持ちいいな。あ~このまま疲れをゆっくりとりたいなぁ~。無理だろうなぁ~だって。

「にゃーにゃー」

 こいつがいるからな! 案の定抱きつこうとしてくる。が、さすがに裸はアカン! いくら隠してるとはいえ布一枚! 織ったバスタオルよりもダイレクトに感触が伝わるのは明白。いくら服を着ているとき抱きつかれてもそういう気持ちにならなかったとしても、裸じゃわけが違う。体洗ってるときでもかなーり変な気持ちにさせられたんだ。湯船でのハグだけは回避しなくてはならぬ!

「ストップ!」

「あぶ」

 思わず手を出すと、顔面を手のひらで押してしまった。これはすまん。許せ。

「んー! んー! ぷはっ! やー!」

「あ、ちょ!?」

 じたばた暴れて口から手が外れるとお得意の嫌なときのやー。からの全力の攻め。あ、あ、あ、意外と力強い! 必死に押し返してるのに徐々に距離が縮んでいく!

「おいやめろ! 近寄んじゃない!」

「やーあー!」

 ぬぉぉぉぉお……! なんでこんなに力強いのお前!? って、あんな鎧の動力源になってたらしいからそらある程度エネルギー蓄えてるか。だからってこんなことに使わないでほしい……! あぁ! ヤバイ! 触れそう! 乳触れそう! 打開策求む! 打開策求む! あ、もう無理かも!? これはもう仕方ない……! 妥協案だ! どうか通ってくれよ!

「あーもうわかった! 抱っこしてやる! 抱っこしてやるから! だから一旦止まって!」

「ん」

 ピタッとコロナの動きが止まる。どうやら話だけは聞いてくれるらしい。良かった。あとは受け入れるかどうかだな。

「後ろ向け後ろ。後ろだったら良いぞ」

「……ん」

 一瞬悩んだようだが、下手に抵抗されるくらいなら妥協案を受けたほうが良いと結論付けたらしい。いやお前なんでそんなところには頭回るんだよ。まぁ平和的に解決できたから良いけども。

「にゃーにゃー♪ にゃーにゃー♪」

 後ろから抱き抱えてやるとご機嫌になる。ちなみにだが俺が抱えてるのはお腹のあたり。腕を回して若干浮かせてる。そうしないとコロナの意外にお肉の乗ってる尻が俺のアレに当たり大変なことになるかもしれないのでね。後ろからといっても油断できぬのだよ。

「にゃーにゃー」

 コロナが背中を反らせ首に腕を回してくる。おいこら。体勢を変えるんじゃない。絶妙なバランスで触れないようにしてるんだよこっちは。ちょっとでも下にズレると当たりそうなんだよ!

 結局。その後もコロナは体勢を何度も変え、俺はその度に抱え直す羽目に。風呂だってのに全然休めなかったよ。



 風呂上がり。体を拭き服はすでに着ている。このとき何があったかは大体察してもらえるだろうから省略。

「あ~……疲れた。もう嫌だ。もう二度とコロナと風呂に入らねぇ」

「やっ」

「うるせぇ」

 おっとつい口に出してしまった。いけないいけない。コロナの教育に悪い。でもそれくらい疲れたんだよ……。時間ももうすぐ日付変わりそうだしさ。

「ダメだ。もう寝る。とりあえず寝る。うんそれが良い寝よう。おやすみなさい」

 布団を敷いてダイブ。もう動きたくない。このまま眠気に任せて明日を迎えよう。

「にゃーにゃー!」

「ゴフッ!」

 と、そんな易々と安らげるわけもなく。俺が布団にしたようにコロナが背中にダイブ。飛び込んだ位置がまた絶妙で、肺が一瞬押し潰されて中の空気が全部出たぞ……。眠気が一撃で飛ばされるほどの衝撃。だがなめるなよ。俺の疲労感ならばすぐに眠気は戻ってくるのだよ。それはそれとして同衾はダメだと思うので注意だけはするか。

「お前は……あっち……」

「やー」

 一応ベッドへ行けと促すも、まぁ拒否るよね。知ってた。これ以上言ってもどうせ聞かないから諦める。俺はもう。寝たい。

「今日だけだぞ……今日だけ……」

「やー」

 それは拒否るなよ。今日だけって妥協は拒否らないでよ。マジで。これはじっくり話し合う必要があるな。つっても明日で良いけどさ。今日だけは全面的に諦めてやるよクソ。

「あ、明日は早く起きろよ。佐子に連絡取ってあるのでな。コロナの服を受け取りに行ってこい」

「……」

 わーい。気が利くなぁ。たしかにコロナは特殊な体型してるし服は早めに必要だね♪ それを見越して先輩に連絡取ってくれるなんて本当リリンってば有能だわ♪ ただ明日早起きしろって今この状況で言われた俺の絶望感に対しても気を遣ってほしかったな!

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