第13話 当局

男は安堵の表情で自室に戻り、

23時01分を迎えた。


生き延びた事への喜びと今まで冷たくしていた隣人への感謝を込めて、

咄嗟に叫びたくなったが、隣人へ迷惑かけてはいけないという配慮が生まれ、

それを飲み込んだ。



そのまま、冷蔵庫に残っている密造発泡酒を一気に飲み干し、生命の祝福を味わった。


アルコールの良いが回ってきた時、

ふと冷蔵庫の下を見ると、500円玉が転がっていた。


きっと3年前にも見つける事が出来なかった、埃まみれの500円玉。


先ほどまで死に物狂いで探していた時には見つからないのに、不必要になった時には出てくるものだ。



しかし、隣人への感謝の気持ちが薄れることはなく、生命維持税プラス500円、儲けたと微笑んだ。




それから45分が経った頃、国の生命管理局の当局員を名乗るモノたちが"捜査"

にやってきた。


こんな遅くに常識がなってないという怒りを抑え、

ハガキと不足分の500円玉を当局員の胸元に突きつけた。



しかし当局員曰く、この500円に疑惑がかかってるという。


政府の技術により、現金のやり取りを把握できるシステムがあり、

そのチェックに引っかかったようだ。



"この500円はあなたのモノですか?"



男は目をまん丸くさせて、"そうだ" と大声で怒鳴るように言った。



隣人がくれたものだという事を説明すると、一緒に隣人へ確認に行くという。



そして、隣人が表に出てきて、当局員の質問を受けるないなや、隣人の答えは、




"それ、私が落としたものです"


と答えた。

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