第12話 再び隣人

隣の203号室とは数年前に揉めて以来、挨拶も交わさない。


隣人は、40歳前後の痩せこけた男。


絶対にここだけは縋りたくなかったが、そんなことも言っていられない。


隣人は今、居る!!!!!




慌てて裸足で駆け出して、203号室のドアを思いっきり叩いた。


そして、泣き叫びながら助けを求めた。


出てきた203号室の隣人に事情を説明しようとしたが、

隣人は薄気味悪く微笑んでいた。


そして、一言、


"あんた、死ぬの??"


と、全てをわかっているかのようにボソッと呟いた。



男はゾッとしたが、軽く頷くと土下座をして、


500円だけ必要な事を伝え、まさに命乞いをした。


すると男は、


"500円玉の原価がいくらか知ってる?


30円なんだって。


30円で500円玉売ってあげる"


と呟いた。


しかし男性は今、20円しか持ち合わせていない。


その事を伝えると、もっと黄ばんだ歯を見せて笑い、ドアを閉めようとした。


男は必死な形相で203号室の閉まるドアを掴み、指からの出血に気がついていない程にすがった。



すると隣人は呆れた顔で、


"500円玉、落としちゃった"


と言って、廊下に500円玉を投げ捨ててドアを閉めた。



男は、この隣人の優しさに涙を流しながら感謝を叫んだ。


現在の時刻、22時58分



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