第7話 政府の対策

ATMから上限8,000円を下ろした。


手数料は残高から引き落とされるため、1,000円札8枚を財布に入れ、列を後にしようとした。


その時、自分の隣の機械からお金が無くなったと騒ぎが起きた。


同時に5台あるすべてのATMの中のお金が無くなったらしい。


まだ並んでいる人たちからは今にも暴動が起きそうな気配だったので男は逃げるように自宅へ帰った。



8,000円しかない生活が始まる不安よりも、それ以上の漠然とした恐怖を感じていた。


なぜこの国はこうなったのか。


お金の限られた街での生活はどうなるのか。


何より、昨日の500円相当はなんだったのか。


考えれば考えるほど、何も思い浮かばなかった。



ただただボーっと時間を過ごしているだけでその日は終わった。



翌朝の月曜日、祝日ということもあり、いつもよりも遅い起床となった。


起きると9時05分、ふとテレビを見ると、

国のお偉いさんによる重大な発表が行われていた。



"まず、この国での人口と資金のバランスが手のつけられない程に悪化し、

国としても平和的な対策が出来ない。"


"預貯金口座は一時封鎖、通帳の記帳も行えない"


"その為、"国民に定額500円の生命維持税"をかけた。"


この次の、最後の発表に言葉を失った。

"そして、犯罪者や社会的信用を損なうモノに対して、そのモノの余命から払ってもらう"


"これらを数日前から実施した"


"生命維持税が支払い不可能となる当日までに封筒でお知らせする"



意味を理解するのにかなりの時間が必要だった。



どうやら国は、国民の生命にまで介入してきているのだ。


男は、ツッコミどころが多数あるこの政府の対応を信じなければいけないという事にパニックを隠せなかった。


きっとこの国の、他の国民達もみんな同じなのだろう。

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