第6話 取り立て屋


21時ちょうど、男は気を失った。


そして22時過ぎに目を覚ました。



病気でも起こしたのかと戸惑っていた。


取り立て屋はまだ来ていない。


どうしたのかとおどおどしていると、机の上に用意していた138,490円が無くなっている事に気がついた。


泥棒の仕業かと一瞬疑ったが、お金を置いていた所に一枚の領収書が置いてある。


"138,490円と残金分500円相当をお預かり致しました"



取り立てが来たことは間違いないらしい。


しかし、"残金分500円相当"が何なのかがわからない。


部屋を隈なく探したが、スマホやテレビなど、金目のものは取られていない。


男は恐ろしくなったが、一連の疲れか、土曜日出勤の疲れか、そのまま寝落ちしていた。



次の日の日曜日にも朝から金融リセットについてのニュースが飛び交っていた。


コメンテーターは各々持論を語っていた。


自分には今、現金が1円も持っていない事に気がつき、

とりあえず家にあった菓子パンを食べていた。


昼過ぎに臨時ニュースにて、

1人、月に8,000円まで預貯金を下ろせる事が出来ると発表が出た。


男は早速ATMに下ろしに行こうとしたが、日曜日のため200円プラス税の手数料がかかる。


幸か不幸か明日月曜日も祝日のため、手数料無しで下すには明後日まで待たなければいけない。


一文無しで暮らすにはあまりに過酷だと悟った男はATMへ向かった。


銀行のATMには長蛇の列があれよあれよと出来ていた。


その”大人気ない大人達”の列の取り合いに、すぐに参戦した。

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