ドラゴンと逆襲の異世界勇者～これがお前たち、いや、この世界への逆襲だ～

第123話 技魔法祭り（スキルカーニバル）

「良し。こっちは片付いたがあいつらは・・・」

リオウに貰った新たな力、部分竜装化をつかい十数体のサハギンの群れを倒した俺はハビナたちの戦況を確認する。

数値を見た限りでは問題ないと判断したが何かあってからでは遅い。必要なら加勢出来るように出来るだけ早く殲滅したつもりではいるが・・・

ん？なんだか初めより数が多い？敵の増援があったのか？

「ちょこまかと鬱陶しいが・・・ここだ！はあぁ！」

ズバッ

ギィ・・・

ライーザさんの狙いすました騎士剣での突きがサハギンの心臓を突く。

女性陣５人の中で敏の値が一番低いライーザさんだが戦闘技術という点では流石の一言だ。

以前ハビナが父のレオンとの勝負ではスペックで勝りながらも技術で負けた事もあり、こと戦いにおいては数値だけではわからない事が多い。

その数値が圧倒的に離れすぎているとその限りではないが・・・まぁそもそもライーザさんの数値はサハギンよりも上なんだけど。

「ふっ！遅いっ！[ビーストクロー]！流石だなライーザさん！そうだ！どうせなら先の王妃の序列、ここで決めてしまおうか！討伐数勝負だ！」

「「！？」」

手甲に装着した爪による連撃でサハギンを引き裂いたハビナがそう提案する。

あいつめ、またおかしな事を・・・そんな馬鹿なことに皆が乗るはずが・・・

「ふーん。ウチは序列には興味あらへんけど勝負やったら負けるわけにはいかんで！[フォールダガー]！はい、これでいっぴ・・・」

「[マジックアロー：土蜘蛛（つちぐも）]！」

ドドドド

ゲヒィ・・・

西城が相手を重くするフォールダガーを放ち身動きが出来なくなったサハギンにトドメの一撃を見舞おうとした瞬間、突如横から鋭い土の槍がいくつも飛来しサハギンを打ち貫いた。

「あ！まゆまゆ！？それ横取りやん！」

「香織がピンチかなぁって思ったから・・・でもこれで私２体目。てへ。」

「ぐぅ・・・！汚い！まゆまゆ汚いで！」

舌をぺろっと出し軽くピースサインを決める東雲さんを見て西城は砂を噛んでいる。

「カオリ殿！後ろに！」

「あ、しまった・・・！」

落ち込んでいる西城の背後からサハギンが魔法による氷の槍を放つ。

西城は慌てて防御態勢を取るが問題ない。あいつのカットインの方が早い。

「オシリデッカい勇者！そんな所でぼーっとされたら邪魔なのです！『燃え盛る牙狼（バーニングウルフ）』！」

氷の槍は西城に届く前に術者と共に激しい炎に包まれた。

直後、氷槍を打ち出したサハギンを覆っていた炎は犬の形となりさらに標的を焼いていく。

「わーい！焼き魚なのです！ワンワン！」

あれは・・・竜言語魔法か？バーニングウルフって言っていたがウルフと言うより犬だな。

『むう。竜言語魔法で犬を創るとは・・・センスがなってないな。』

よく分からないがリオウのご不満な様子を見るとあれはスララのオリジナルなのだろう。だがオリジナルを作り上げたって点では相当凄いんじゃないのか。

「スララちゃんありがとうな！・・・ちなみにスララちゃんは何体倒したん？」

「んー。今ので３体なのです！いっぱい倒したらご褒美が貰えるのですか？」

「「！？」」

またも女性陣が目つきを鋭くする。あの様子だとスララが現状トップなのだろう。

討伐数ゼロの西城はこうしちゃおられんで！と敵陣へ突っ込んでゆく。

「西城！無茶するな！」

「大丈夫だから！銀次君はそこで見てて！」

事が起こってからではマズいとフォローに走ろうとするが東雲さんに怒られてしまった。

「だ、だが・・・」

「ギンさんに入られては成り立たない！カオリの事なら心配いらない。カオリは強い。」

確かにハビナの言う通り西城はもう油断していないようでサハギンたちを圧倒しているようだが・・・俺が悪いのか？

「その様な魔法が私に効くと思うな！[雲切之剣（くもきりのけん）]！」

ライーザさんが雲切でサハギンの魔法を断ち

「おりゃりゃりゃー！[分身]！[幻影斬（げんえいざん）]！」

西城が4人に分身しその後一斉に襲い掛かり

「[疾撃流舞（しつげきりゅうぶ）]！温い！温いぞ！」

ハビナが風の力を宿した両手で乱打し

「[マジックアロー：風燕（ふうえん）]！ふぅ。皆が入り乱れてなければ炎陣（えんじん）の方がいいんだけど・・・」

東雲さんがマジックアローで引き裂き

「『優雅なる風の精霊よ。我に従い刃と化したまえ。<<ウインドカッター>>』！うーん、やっぱり竜言語魔法の方が楽ちんなのですね。」

スララもまた精霊魔法で応戦する。

各々が自分の力を確かめるように次々に敵を撃破してゆく。

と言ってもハビナも碧風も使っていないし東雲さんや他のやつらからも余裕を感じる。

こうなってからはすぐに片付いた。皆頼もしい限りだな。

「終わったか。ご苦労さん。皆流石だな。スララなんかは見ないうちに竜言語魔法を使いこなしているじゃないか。」

いざという時の為にそのままにしていた部分竜装化を解き、スララの頭を撫でながら皆に賛辞を送った。

「わーい！あたち密かに練習していたのです！今も５体もやっつけたのですよ！」

「何！？私も５体だ！むぅそうか・・・」

撫でられ目を細めるスララの発言にハビナが驚いている。自分が一番だと思っていたのだろう。

「私も。後半手間取っちゃったかなぁ。」

「ウチは後半頑張ったんやけどなぁ。最後もう少しで６体やったのに。」

聞くところによるとなんだかんだで全員同数だったようだ。

サハギンたちも空気を読んで割り切れる数で出てきたのだろうか。

「カオリ殿は前半の遅れを取り戻そうと皆の横取りしてたのでは？現に私の獲物も取られた気が。」

「そう言えばあたちも目の前をデッカいオシリに遮られまちたー。」

「そうなのか！？カオリ。それは卑怯だぞ！」

「な！そんな事・・・！ウチは夢中で・・・！そ、そんなん言うたら初めにまゆまゆがウチの獲物取ったんやで！？」

「だからあれは香織のピンチを・・・！」

またやんややんや始まってしまった。どうでもいいがこいつら目的を忘れていないだろうな。

「おい！今はとにかく亮汰を探すのが先だ。それと皆今ので魔力を結構使ったんじゃないか？とりあえず回復しておこう。」

俺はそう一喝し差し伸べる手（マジックギフト）で皆の魔力を回復していく。

皆やっきになっていたのかスキルやら魔法をバンバン使っていたからな。

「お！須藤ありがとな！やっぱこの魔力回復はええなぁ。体にきゅーっと入ってくると言うか。」

「そうだね。なんか落ち着くよね。」

西城や東雲さんを始め皆魔力を補給出来て嬉しそうだ。

結局、勝負はエミリア王女のいないところで決めても意味がないという事で落ち着いたらしい。なんだったんだ・・・まぁあの数を手早く処理出来たという点では良かったが。

「ありがとうございます。ギンジ殿。ところで先程までのギンジ殿の姿。何かとんでもない力を感じましたが・・・」

「私もそう思った！何だか前に銀次君が変身した時と似ていたけど。」

ライーザさんたちは俺の部分竜装化に気付いていた様だ。

隠すつもりはなかったので恐らく暴走する事は無いと思うと皆には話しておいた。

「・・・とまぁリオウのお墨付きもあるから安心しておいてほしい。ところでリオウ、亮汰はどの辺りにいるのか分かりそうか？」

『うむ。恐らく島の中央。そこに勇者加瀬はいるはずだ。ノルンたちもな。』

リオウの言葉に島の中央へ目を向けると中々に古めかしいが巨大な塔が２本建っていた。

「いかにも、って感じやな。」

「２つの塔。どちらかにカセ殿がいるのでしょうか。」

「片方は罠だったりするのかな・・・」

「考えても仕方がない。亮汰が待ってる。まずは言ってみるしかないだろうな。」

若干の不安を覚えながらも亮汰の待つであろう中央の塔を目指すことにした。