第122話 新たな力
「とっとと蹴散らして亮汰を迎えに行くぞ!」
「「了解!」」
俺の号令に皆の声が綺麗にハモり、同時に黒いオーラに包まれたサハギン(蝕)へと跳躍していく。
行く手を阻むように集まっているサハギンの群れを半分に割る様にちょうど真ん中辺りに全員で着地。
俺と俺以外の5人が背中合わせになりサハギンと対峙した。黒いオーラで見づらかったがサハギンたちの手には二又の銛の様な武器が握られているな。
「さて、啖呵を切った手前俺が一番手こずりました、じゃあ格好が付かないな。行くぞ!」
両足に力を込め砂浜を蹴った。敏の値にものを言わせ若干の残像を残しながら相手をかく乱するように左右に走る。
「まずは一匹!」
グギャ!?
ザンッ―――――
刀を横薙ぎに一閃、サハギンの体が胴体から二つに分かれた。あまりに突然の出来事にサハギン共は驚きを隠しきれない様子だ。
『流石だな。銀次よ。どうだ?以前話した「力」試してみるか?』
「「力」?あぁ、段階的にってやつか?本当に大丈夫なんだろうな?」
"段階的、部分的に力を開放する"
俺の精神世界で
リオウも再度制御をかけると言っていたし大丈夫だとは思うがもしまた暴走してしまったら・・・止めてくれる人物は思い浮かばない。
『案ずるな。我も慎重にやる。それに銀次はもう"越えた"のだ。易々とは囚われぬ。我が保証しよう。』
リオウが優しく諭すように語りかける。そこまで言って貰えるのなら・・・どの道ヤツ、グレインと戦うには今のままでは歯が立たないのだから。
「わかった。リオウ、頼む。」
『うむ。・・・では行くぞ!』
――――ドクン――――
「ぐっ・・・!き、きやがった・・・!」
一瞬リオウが何かを探る様子を見せた後、俺の左腕に膨大な力が流れ込んでくるのを感じた。同時に左腕の先から身体の中心にかけてパキパキパキ、と銀色の鎧の様なものに覆われていく。
以前と少し違うのは銀色の鎧に包まれるのが全身ではなく左腕だけだという所だがこれだけでも意識が持っていかれそうになる。
『・・・この辺りが限界か。銀次よ。気分はどうだ?』
「はぁ、はぁ、と、止まったのか?・・・気分か。おおむね良好だが変に気持ちが昂っている感じがするぞ。」
変異が収まった自分の左腕を見てみる。肩口までが竜装化している様だ。なんだか改造手術を受けたサイボーグみたいだな。
「それにこれは・・・?」
後一つ気になるところと言えば自分の背中の左側、肩甲骨の辺りから何やら銀色の翼が生えていた。
『ほう。腕だけのつもりだったが・・・よほど適合してるようだな。銀次よ。その力どれほどのものか試してみるがいい。』
リオウが感心する様につぶやいた。なんだ?上手くいっているという事でいいのだろうか。
「まあいい!この力、サハギン相手にはオーバースペックな気がするが・・・悪く思うなよ!」
俺は昂った感情のまま再度サハギン目掛けて突進した。
スピードも格段に上がっている様で瞬時にサハギンとの距離をゼロにする。
ゲゲ!?
「まずは軽く・・・」
――――グチャ
「え?」
牽制を含めて竜装化した左腕でサハギンを殴り飛ばそうと拳を振るった所、俺の予想に反しサハギンの頭は腐ったトマトを潰すようにいとも簡単にグチャリと潰れてしまった。
「お、おい・・・この力は・・・チッ!」
シャァーーー!!
仲間が荒ごしトマトにされた事に怒ったのかもう一匹のサハギンが銛を突き出し飛び掛かってくる。
サハギンの突きをかわしカウンター気味に腹に拳を突き立てた。
――――ズドン
二匹目も同様の運命を辿ることになった。
腹には立派な風穴が空きそのまま大の字に倒れていった。
「いくらスペック差があるとは言えこんな・・・」
ギンジ・スドウ
人間 男性
レベル 37
物攻 2000
魔攻 1300
防 1300
敏 1300
なんだこれ。慌てて自分のステータスを確認してみると物攻の値がとんでもない事になっている。
他の値も延びているが物攻に至っては倍だ。
『ふむ。暴走してしまった時より洗練されているのかもしれぬな。要はアレだ。バカでかい綿飴を凝縮して小さい飴玉にしたような感じだな。それに暴走していたとは言えあの時は我も相当抑え込んでいたからな。』
そうなのか。その例えは悪いがなんとなく理解した。というかよくリオウは綿飴なんて知っているな。
「・・・これは使いどころが難しそうだ・・・な。」
確かに強力なんだろうが魔力、それと精神力の負担がもの凄く激しい。
理性を保つためにかなりのリソースが持っていかれる。
一呼吸した時、正面から何かが飛んでくる気配を感じた。
「!?これは、氷?アイシクルランスの魔法か!?」
ゲヒャーーー!! ギェーーー!!
立て続けに三匹を葬った俺を警戒しているのかサハギンたちは俺と距離を取り魔法を放ってきた。魔獣で魔法を使うタイプは初めて見るな。
サハギンたちは攻撃の間隔を空けない様に順番に魔法を唱えてくる。
詠唱をしている様には見えないのでもしかしたら固有の能力なのかも知れないが。
「今の俺にはダメージはほとんどないが・・・鬱陶しいは鬱陶しいな。」
『銀次よ。その翼を使ってみたらどうだ?』
矢継ぎ早に飛んでくる氷の槍を左手で弾いたり刀で切ったりしているとリオウの提案があった。
「翼を使う?コレをどうやって・・・あぁなるほど。」
何を言っているのか分からなかったがなぜかすぐに理解することが出来た。
リオウが使い方を頭に直接教えてくれたような感覚だ。
『コントロールが難しいかもしれぬが銀次なら大丈夫だろう。』
「期待には応えないとな。・・・よっと。」
ひとしきり氷の槍を捌きトンっと軽く足元の砂浜を蹴りそれなりの高さまで跳躍する。
飛んでいるというよりは翼を使い滞空している感じだ。
「やってみるか。翼に沢山の羽が付いているイメージで・・・よし。」
片翼のみついている俺の翼に無数の羽の様なエネルギーがポゥ、ポゥと生まれてくる。
ゲ、ゲゲ!?グゲーーー!!
サハギンたちは嫌な予感がしたのか一斉に上空にいる俺に向かって魔法を放つ。
「無駄だ。行け、―――[
合図と共に無数のエネルギーの
ウギャアァーーー
まるでガトリングの様に降り注ぐ翅はサハギンの群れを断末魔と共に一掃した。
ちょっと違うが高笑いしながら薙ぎ払え!とか言ってみたくなる。
「ふぅ。これもかなり疲れる。使いどころは見極めないとな。」
跳躍する時より静かに砂浜に降り額に浮かんだ汗を拭う。
この力、強力だがきちんと使いこなす修行をしないとマズいな。
「さて、あいつらは・・・大丈夫だと思うが・・・ん?」
振り返るとウチの女性陣たちが激闘を繰り広げていた。
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