第120話 孤島への上陸

エミリア王女が国民の前で俺を国王に推すと宣言した翌日。



俺たちは王女に用意してもらった船に乗って亮汰が捕らわれているだろう孤島を目指していた。


船に乗っているのは俺、東雲さん、西城、ハビナ、スララ、ライーザさんという大森林から来たメンバーだ。


メーシーは城でスレイブキャンセラーの最終調整をしつつ留守番。スレイブキャンセラー完成の為にもマリンライトを確実に持ち帰らなくてはな。


それと王女も一緒に行きたいと言っていたがギャレスに勘弁してくだせぇ!と言われしぶしぶ城で待つことにした様だ。



「うん。潮風が気持ちいいな。揺れも思っていたほど無いみたいだ。」



甲板の先端で潮風を受けながらぐっと伸びをしてみる。


俺は元居た世界ではあまり乗り物が得意ではなかった。電車や車で本を読んでいるとすぐに酔ってしまう。特に船なんかは完全にアウト。旅行に行っても船は大体リバースして寝ている感じだったな。


だが異世界へ来てからはそんな事はなくなっていた。と言っても乗り物は馬車かピーちゃん、後は今乗っている船くらいしか経験がないのだが。

ん?ピーちゃんは乗り物でいいんだよな?ライドホークって名前だし大丈夫だろう。


ちなみに獣人であるハビナは船自体初めてらしく始めはテンションを上げていたが早々にダウンした。恐らくしばらくは動けないだろう。

そういえばヴァルハートに来る前に胃もたれにもなっていたな。あれは自業自得だけど。



「あ!銀次君も風に当たってたんだ。うーん。気持ちいいね!」


「ホンマやなー。ウチ実家が港町やったから懐かしい感じ。」



しばらくすると東雲さんと西城も船室から甲板へ風に当たりに来たようだ。



「ああ。蒸気船と言っていたが中々速度もあるみたいだ。この分だと意外と早く島に付きそうだ。」



この船のスクリューは蒸気で回しているらしいが帆を広げ風の魔法を当てる事でも推進力を得ているらしい。

俺にはその辺りはよく分からないのでらしいとしか言えないが。



「私もさっき少し魔法のお手伝いしてきたよ。マジックアローの風燕ちゃんを少し丸くしてあげていくつか置いてきたんだ。」



なるほど。強力なマジックアローで後押しか。俺が以前、勇人との立ち合いに使ったウインドカッターを自分の剣に当てて剣速を上げるってやつと同じか。

道理で速度が急に上がった訳だ。



「ウチもリバースフォールでちっと船体を軽くしたんやで。ってちと眠い・・・昨日もっと早く寝ればよかったわ。」


「あはは。そうだね。結局勝負方法は王女様が考えておくってなったけど。ハビナちゃんが王女の有利になるような気がする!って引かないものだから・・・」



西城がふわぁ~っと大きくあくびをしながら眠そうに目を擦っている。よく見ると東雲さんの目の下にもうっすら隈が出来ている。

昨日俺がギャレスと飯を食べに行った後も女性陣は遅くまで王妃問題で盛り上がっていた様だ。


しかし国王になる事自体、遠慮したいのにそんな話に巻き込まれるのは避けたい。

そもそもこいつらは事の重大さがわかっているのだろうか?王妃という称号に憧れているのだろうが・・・



「島に付くまでしっかり休んでおけよ。いざという時に体力・魔力切れにならないようにな。」


「じゃあお言葉に甘えてそうさせてもらおうかな。何かあったらすぐに呼んでね。」



二人はそう言って船室に戻っていった。


その後しばらく風に当たりつつ時折空と海から現れる魔物を竜言語魔法やら刀やらで狩りつつ島への到着を待った。


なんだかやっていることはヴァルハートにいた時と同じ固定砲台みたいだな。まあ皆がゆっくり休めるのなら問題ない。



「ギンジ殿。魔物の露払いありがとうございます。船員たちもここまで楽な航海は久しぶりだと喜んでいました。」



予め用意していた竹製の水筒から水を二口程飲みくつろいでいると船の帆柱の先にある物見台の様な場所で周囲を見張っていたライーザさんがやってきた。


ライーザさんも現れる魔物に攻撃するつもりでいたらしいがそのほとんどを俺が先に片づけてしまっていた形だ。



「気にしないでくれ。ただ待っているだけなのも暇だったからな。それよりライーザさんの獲物を取ってしまったかな。」


「いえ。私たちでは少なからず魔力を消費しますのでギンジ殿に狩ってもらえて助かりました。」



そう言ってライーザさんはピッと頭を下げた。



「その辺はオートMリカバー様々だからどうにも甘受しづらいけどな。」


「それを含めてのギンジ殿ですよ。それと先ほど島影を確認出来ましたので上陸の準備をと思いまして。他の皆にも声をかけて来たのでしばらくすればこちらへ来られるかと。」


「わかった。ありがとう。」



ライーザさんの言葉通り西城たちとスララが現れ少し遅れてハビナが重い足取りでやってきた。



「意外と早かったなぁ。加瀬は大丈夫やろか。」


「早く亮汰君を助けないとね。」


「ふわぁ~。よく寝たのです。こんないい天気の日にはチーズが食べたくなるのです!ワン!」


「うぅ・・・気持ち悪い・・・ギンさんすまない。本来なら私の膝枕でギンさんには休んでいて貰うはずだったのだが・・・」


「そろそろ島に到着する様だ。スララはさっきチーズをやっただろう?帰るまで我慢しなさい。ハビナは馬鹿な事言ってないで上陸したらライーザさんにキュアしてもらえ。船酔いにも聞けばだが。」


「大丈夫ですよ。ハビナさん、もう少し辛抱してください。」



ハビナはよかったぁと胸を撫でおろしている。しかし船酔いにも魔法が効くんだな。

この世界の病気とかはどうなっているのだろうか。今度メーシーに聞いてみよう。



『ギンジよ。警戒は怠らぬ方がいいぞ。向こうも我らが来ていることに気付いているだろうからな。何をしでかすか予想がつかぬ。』



リオウはため息交じりに忠告してくれた。確かに何も言わずに亮汰を攫っていく様な奴だ。注意するに越したことはないな。



「わかった。例のノルンとか言うやつだったか?それともう一人、とか言ってたな。」


『うむ。どちらも面倒な奴らだが実力は本物だ。気をつけろ。』



リオウにそう言わしめるという事は一筋縄ではいかないだろう。リオウの言葉を聞き全員の顔つきが変わったのがわかる。



「さぁ到着しました。ここからは小舟で上陸しましょう。」



ライーザさんが上陸用の小舟を出すように船員に指示し俺たちはそれに乗り島へ上陸した。


上陸した海岸はまるでそこだけ雪が降ったかの様な真っ白い砂浜が印象的だ。

周りにはヤシの木の様な背の高い植物もぽつぽつと生えていてまさに南国のリゾート地の様相だな。



「わぁー!すっごい綺麗な砂浜やん!ホンマにこんなリゾートみたいなとこに加瀬は捕まってるんか?」


「ホントだね。作戦中じゃなければ思いっきり楽しみたいところだけど。」



確かにロケーションとしては最高だ。二人がはしゃぎたくなる気持ちもわかる。

多分ここに亮汰がいたら水着がどうのこうの言って女性陣の鉄拳を頂戴していただろうな。



「ラ、ライーザさん・・・早くなんとかしてくれ・・・」



ハビナは顔を青くさせ限界の様だ。



「はいはい。『清らかなる水の精霊よ。彼の者達に健やかなる安寧を。<<キュアライト>>』」



ライーザさんがハビナに精霊魔法を使う。精霊魔法を見るのはなんとなく久しぶりだ。俺たちがこの世界へ召喚された時もライーザさんが俺たちの酒を抜いてくれたっけ。



「お?おぉ!?やった!もう気持ち悪くない!まだ少し地面がクラクラするが全然よくなったぞ!ありがとうライーザさん!」



ハビナはピョンピョン跳ねて喜んでいる。周りにいる女性陣の多くがそうなのだが飛んだり跳ねたりすると目のやり場に困る。だからと言ってどうしようもないのだが。


しかし最近は竜言語魔法が主になっているが精霊魔法の詠唱ってなんとなくいいよな。

異世界って感じがよく出ていて。



『銀次よ。我の与えた力に何か不満でもあるのか?』


「いや、そんな事は無いぞ。」


『嘘だな。顔に書いてあるぞ。よいか?銀次よ。竜言語魔法と言うのは―――――ふん、やはりおでましか。』



リオウがいかに竜言語魔法が効率的で素晴らしい物かを熱弁しようとしたところでふと周囲の気配が変わった気がした。


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