第111話 支配者の狙い

「・・・グレイン。そうか、やはりあいつが・・・」



ドラゴンであるリオウと同種族でありながら何等かの目的でリオウを封印した人物。ああ、竜だから人物は違うか?まあいい。



『うむ。その老人の様な風貌もヤツが人界にいる時に良く成っていた姿と一致する。』



なるほど。リオウの言い方だと姿を色々と変化させる事が出来る様だ。確かに前回ヴァルハートの城でグレインと会った時は性別はおろか年齢も感情も良くわからない様な姿だった。



「ん?リオウも竜族だろう?と、言う事はリオウも何かしら姿を変える事が出来るのか?」



今後、仮にリオウの封印された力を取り戻したとしてリオウが現界した時にそのままで出てきたら皆ビックリするだろうからな。

サイズ調整は可能とか言ってたからそこまでじゃないかな?



『成れない事は無いが変化させる意味もないな。どうしてもと言うのなら美少女姿で現界するが。』


「いや、必要ない。」



俺が被せ気味にそう言うとリオウは少し残念そうにそうか、と言って俺の手元に戻ってきた。姿は置いておいてどちらにせよ速く残っているリオウの力を取り戻したい所だ。



「なんでもええけどこれでまゆまゆがわざと須藤を狙ったんちゃうって分かったやろ!ただ操られてただけやったんや!あんなん防ぎようもないわ。ホンマに・・・うぅ。」


「香織・・・」



リオウに闇魔法を喰らって泣いていた西城が復活したと思ったらまた落ち込んでいる。先程の痴態を思い出したのだろう。


確かに第三者の体験した話は説得力はあるが・・・


「ああ。東雲さんが故意に俺の腕を焼いた訳じゃ無いってのは理解した。だが俺が裏切られたと言う事実は変わらない。」


「でもっ!この子は!まゆまゆは・・・」


「・・・」



俺の言葉に西城と東雲さんも辛そうな表情だ。



「でも俺は・・・先日過ちを犯した。大森林の皆、それにお前たちも裏切り・・・殺そうとした。」


「ギンさん・・・でもあれはギンさんの意志では無かったのだろう!?」



繰り返しになるが5日前。俺が竜装化により暴走し大森林を滅ぼしかけた。それを思い出し震える声で発した言葉にハビナがフォローをしてくれた。



「だとしても!やってしまった事実は変わらない。あれも亮汰がいなければ今頃は・・・」


「カセ、か。」


「・・・加瀬には感謝せんとな。」


「亮汰君・・・」



三人の表情が暗い。もしかして亮汰はまだ回復していないのだろうか。


後で様子を見に行こう。俺の責任だし差し伸べる手マジックギフトが役に立つかも知れないしな。



「事実は変わらない。だけど、過ちは正せばいい。俺はそれを教えて貰ったんだ。」



大森林の獣老や獣人の皆は俺の暴走をおとがめなしと評した。


恩があるから、と。正直俺自身、利害の一致でと言う側面が強いと思っているだけに申し訳ない気持ちもある。


それに西城にしてもメーシーにしても俺を恨んでいるといった風には見えない。


やり直せる機会が貰えるのなら、許されるのなら、俺は償おうと思う。


そしてそれは俺自身が受けた事にも言える訳で―――――――



「須藤。って事は・・・?」


「ああ。東雲さん。疑って悪かった。そして・・・もし良ければ、俺に協力して欲しい。」



俺はそう言って深く頭を下げた。何だか謝ってばかりいる気がするが仕方が無い。



「おお!須藤!偉い!やっぱちゃんと話せば分かってくれるんやな!」


「流石ギンさん!器がデカい!それでこそ王の器だ!」



西城は頭をわしゃわしゃしてくるしハビナは飛び込んでくる。

今だ体中がギシギシと悲鳴を上げているのでやめて欲しい。



「銀次君・・・本当に・・・それでいいの?それに協力って・・・?」



彼女は、はしゃぐ西城たちを横目に半分驚きが混じった様な表情をしている。


自分は許されてはいけない。そんな思いがあったのだろう。



「俺の逆襲は終わった訳じゃない。自分で手を下さずに東雲さんを操り、俺を殺そうとしたグレイン。それと、明らかな敵意を持って直接俺を狙ってきた勇人。こいつらは俺の手で・・・!」



東雲さんが何かしらの理由で俺を裏切った、と言う方がまだ吹っ切れる。


真相を改めて考えるとグレインに対する怒りが沸きあがってくる。勇人もグレインに操られていたのだろうか?・・・確証は無いが違う気がする。あいつはあいつだった。



「それに東雲さんも勝手に操られて好き勝手されてたら許せないんじゃないか?俺にした事に対して何か思う事があるのなら、俺に力を貸してほしい。」


「・・・うん、許・・・せない。魔法使って操って、仲間を・・・銀次君を殺させようとするなんてやっぱり許せないよ!銀次君さえ良かったら一緒に、そいつをやっつけよう!」



東雲さんは先程までの表情と変わって決意に満ちた表情に変わっていた。


そう言う俺も彼女を手にかけなくて良かったと思っている事に気が付いた。



「ふん!シノノメマユミ!ギンさんとの事は別だからな!?忘れるなよ!」


「まぁまぁハビナちゃん。まゆまゆ良かったな!また一緒や!・・・って一個思ったんやけどそのグレインっての、この間ヴァルハートにおったヤバそうなヤツやろ?なんでそいつはあんな回りくどい事したん?あんなん出てきてたら須藤どころかウチら皆瞬殺やったで?」



東雲さんにガルルルと威嚇をするハビナをなだめる西城が突然そんな事を言いだした。


だが言われてみるとその通りだ。なぜグレインはあんなやり方をしたんだ?先日ヴァルハートで奴と対峙した時、リオウの力を持った俺でも正直勝てる気がしなかった。当時の俺たちでは抵抗さえ出来なかっただろう。



「・・・なぁリオウ。どう思う?リオウは奴には目的があると言っていた。それに関係がある事なのだろうか。」


『ふむ。ヤツの目的はハッキリしないが・・・自分の存在を隠しておきたかったのだろう。』



存在を?にしてはこの前ヴァルハートに出てきたが。


「何の為にだ?」


『ヤツは支配を司る竜だ。基本的には自分の手を汚す事はあまりない。本当に陰湿なヤツだ。ヤツの使役することわりの眷属、お前たちの言う外敵もヤツが造りだした。何の為に造ったのかは知らぬし知りたくも無いがな。』



リオウはふん、と吐き捨てる様に言った。


支配を司る・・・俺が奴のスペックを竜眼で視れた唯一の情報にあったザ・ルーラーと言う称号。


ルーラー・・・支配者、か。そういえばリオウの称号は・・・



「だがこの前は直接ギンさんたちに攻撃してきたのだろう?」



ハビナの疑問も最もだ。グレインは俺に対して竜言語魔法をぶつけてきた。


それもヤツが手を抜かなければ俺はあのまま終わっていたかもしれない。



『それは我がいたからだろうな。ヤツは我もを支配したい様だ。もし我が銀次の中にいなければ眷属を放ちそのまま去っていたのではないか?我以外にヤツの事はあの神宮寺とかいう者しか分かりようもない。恐らくでしかないがな。』



そう言うリオウの態度はかなり投げやりだな。グレインの話をするリオウはとてもめんどくさそうだ。かと言って聞かない訳にもいかないんだけど。



「という事はリオウを宿している俺は今後また狙われる可能性があるのか。」


『前回の様にヤツが直接銀次を狙って来る事は無いだろうが・・・何かしらの動きはあるかもしれぬな。』



だとすれば尚更力の回収を急がなくてはな。



「そうか。リオウの封印されている力はどうすればいい?以前その内わかるとか言ってただろう?」


『うむ。それならちょうど―――――』



「ぅわーーーい!!ご主人様ぁ!!元気になられたのですねぇーー!!」



リオウの言葉を遮る様に突如部屋のドアがバーンと激しく開き、何者かが飛び込んできた。


超高速で俺の腹に突っ込んでくる小さく黒い塊がスララだと気付いた時には俺の意識は途切れ、目の前が暗くなっていった。


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