第107話 想い→筋肉←魔法
「っっしゃあっ!!いくぜ!!」
亮汰は全身を金色のオーラで覆いながら叫び、目の前の竜言語魔法、「
亮汰の発動したスキル「
その一定時間というのは、10秒間。
迫り来る巨大な光竜を亮汰が受け止める。
「うおおおぉぉぉ!!痛ッ・・・くはねぇが!重めぇ!!」
今の亮汰の状態は無敵。ダメージは0のはずだ。だが無敵と言っても亮汰自信の攻撃力が跳ね上がる訳では無い。
圧倒的攻撃力を持った俺の光竜は大森林一帯を押しつぶそうと亮汰ごと飲み込みに来る。
俺はその様子をぼやけた視界で眺める事しか出来なかった。
――――9
残り時間は着実に減ってゆく。このままでは後数秒で大森林へ着弾し辺り一面を吹き飛ばすだろう。
そうなった時、恐らく亮汰は無事。なにせ無敵だから。それ以外は全滅、だ。
それもあって東雲さんは亮汰を回復に選んだのだろうか。あいつだけは確実に助かる。
全滅よりはいい、と。
「やらせねぇ・・・やらせねぇぞ!!ここにはいろんな奴らがいる・・・それに銀次を、あいつを悪魔にはさせられねぇ。俺たちのせいで一度あいつを苦しめちまった!今度は俺たちであいつを救うんだ!!」
亮汰・・・前言を撤回しなくてはな。あいつがそんな事を思っていたとは。自分が楽に良い思いをする事ばかり考えてるやつだと思っていたが・・・
あいつも勇人に利用され、獣人の子供たちと触れ合う事で色々と思う事があったのかもな。ああやって言って貰えるのは素直に嬉しい。
――――8
「カセ殿・・・」
「加瀬、あんた・・・そうや!あんたの言う通りや!頼むで!」
レオン達や西城も祈る様に見つめるが亮汰は残り時間の減少と共に光竜に押し返されていく。
「うーん、っと。あの筋肉勇者はなかなか頑張ってるのですね!ここはあたちも恥ずかしいのを推してもう一度やるのです!ワンワン!」
ぐーっとのびをしたスララは後そう言って光竜を受けている亮汰の後ろに立つ。
スララの腹はまだパンパンなままだ。
――――7
「ワンワーン!!」
そう言って遠吠えの様にスララがひと鳴きすると彼女のしっぽがまたも強烈に発光しだした。
その発光したしっぽから徐々に目線を顔の方に向けるとスララの口が先程と同様に数十倍の大きさにまで膨らんでいる。
「スララ、一体何を・・・?」
その様子を傷だらけで見ていたプラネも不思議そうな顔をしているな。
だがあの感じは・・・まさか・・
「さぁ、筋肉勇者。ちょっとキツイかもですが頑張るのです!えーい!」
カッ
スララの掛け声と共にその大きく膨らんだ口から赤く特大の魔力球が飛び出した。
あれは・・・やはり先程俺が放った魔力球をスララが飲み込んだものだ。
いや、それよりも一回り大きく魔力濃度も高い様に見える。
「今度こそホントに疲れまちた・・・くぅーん。」
パンパンだった腹がすっかりへこんで元のサイズになったスララはぐでーっとその場に延びている。飲み込んだ俺の魔力球に自分の力も上乗せして放った代償だろうか。
――――6
ズドン!という爆音を上げてスララの放った魔力球が亮汰の背中にぶち当たる。
「ぐがっ!なんだこりゃ!?後ろから!?でもありがてぇ!この支えがあれば!!おりゃああああ!!」
まさに前門の竜、後門の狼(犬)だ。きっと普通の人間ならば消し炭になっているであろう威力。前後から弩級の魔法に挟まれながらも亮汰の気合が聞こえる。
「おっしゃ!行けるで!加瀬!もう少しや!」
「おう!やってやるぜ!」
スララが放った魔力球のおかげで後方からの推進力を得た亮汰だが光竜を押し返すまでは至らず硬直状態で止まってしまった。
――――5
「うぐぐぐっ!!銀次ぃ!お前の魔法キツ過ぎるぜ・・・!!」
亮汰は巨大な光竜の顎辺りを下から両手で押し上げる形で力を込める。
しかし、少しずつじりじりと押し込まれていってしまっている。
頑張れ。頑張ってくれ亮汰。情けない話だ。俺はやってしまった事実を後悔しながら自分は指一本動かせない有様に己を呪う事しか出来なかった。
――――4
「・・・皆!なんでもいい!自分の持てる全てをカセ君にぶつけよう!少しでも力になれるように!出来れば下方から!『アイシクルランス』!!」
メーシーが叫び魔法を放つ。少しでも亮汰をサポートするために。
「わ、わかった!どれだけ足しになるか分からないがやってやる!![
「俺の最後の蒼炎をくれてやろう![
「我が殺撃の波動、その身に刻め![
ガジュージが回転する槍のスキルを、レオンが両手の蒼炎を、プラネもその白いオーラを力に変えてそれぞれが亮汰に向けて放った。
はたからみれば亮汰が前後それと下方からボコボコにされている様にしか見えないだろうな。
レオンとプラネのスキルは本来格闘術に使う力をエネルギーとして放った様だ。
恐らく今この場で造りだしたのだろう。凄いセンスだ。
「うらあああぁぁ!!もう少し・・・もう少しで軌道をずらせるのによぉ・・・!!」
――――3
皆のスキルを一斉に受けた亮汰が最後の粘りを見せる。
亮汰を覆う金色のオーラが一段と大きくなっている様に見えた。
「行け!!加瀬っ!・・・ああっ!?」
力の限りを尽くして奮闘する亮汰の身体が一度ガクン、と大きく後方に下がった。
限界か、応援する西城が両手を口に当てて顔を青ざめさせる。
「ウチも何か出来へんか・・・?でもウチのは重くするだけやし・・・そしたら加瀬は地面に落っこちて・・・ん!?そうや!重く出来るんやったら逆に・・・!」
オロオロする西城が突然何か閃いた様な顔をしてパンッと手を叩いた。
――――2
「ちくしょう・・・!もう時間が・・・!!」
「光の竜に効くか分からへんけど!ううん!効いて貰わな困るんや![リバース・フォールダガー]スカイver!!」
依然猛威を振るう光竜に西城の投擲したダガーが突き刺さった。リバースフォール?重力で重くするスキルの逆?という事は・・・
「おっ!?急に軽く・・・!?っしゃああ!これならいけるぜ!!ぐおおおお!!」
じりじりと押されていた亮汰がぐん、と一気に光竜を押し返し前にでる。やはり西城の放ったスキルはフォールダガーの逆、対象を軽くするスキルだという事か。
魔法にも効くんだな。やっぱ西城もチートだよ。
――――1
ハビナから東雲さんへそしてスララ、レオン、プラネ、ガジュージ、メーシー、西城。
皆の支援を受けた無敵の亮汰は最後の力を振り絞り再度、吠える――――
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