第100話 竜装化
・・・銀・・聞・え・・か・・・
なんだ・・・誰かの声が聞こえる・・・さっきまで皆といて・・・レオンとエミリア王女の乾杯を聞き・・・その後目の前が真っ白に・・・
・・・俺は気を失っていた様だ。目が明かない。意識は取り戻しつつある様だが。
眠いと言うか怠いと言うか不思議な感覚だ。出来る事ならこのまま寝ていたい気分だ。
・・・銀次よ。起きるがいい。
ん?この声は・・・そうか。よし、徐々に目も開けられそうだ。
まだ若干重い瞼を上げ横になっていた自分の身体を持ちあげた。
「ああ、今起きるよ。リオウ。俺はいつの間に眠ってしまったんだ・・・・って、うおっ!お前、どうして・・・!」
「銀次よ。気が付いたか。」
俺の目の前には全長20m程の銀色に輝く体躯、それに見合う巨大で力強い翼、身体の周りにオーラの様な赤い魔力を纏う竜ドラゴン、リオウが以前契約した時と同じ様に浮かんでいた。
「気が付いたか、じゃない。なぜリオウがその姿に・・・あれ?ここは・・・どこだ・・・?」
辺りをキョロキョロと見回してみると先程までいた獣老たちや西城たちの姿は無く、どこまでも平坦で白い地面に空は雲一つ無いが真っ黒な不思議な空間にいる事に気が付いた。
「ここは銀次。お前の心の世界、と言うのが一番分かり易いか。」
「心の・・・中・・・ね。」
言われてみれば確かに見た事も無い場所だが妙な懐かしさ、みたいなものがあるな。なるほど。自分の中だからか。
「うむ。今まで銀次から少しずつ魔力を貰ってきたがようやく少しだけ力を揮える様になったようだ。それに伴ってさっそく銀次を呼ばせて貰った。話したい事もある故な。」
そう言う事か。俺はてっきりまた・・・
「そうか。ただリオウ、タイミングが悪いぞ。あのタイミングであの感じは俺たちが異世界に召喚された時とそっくりだった。」
乾杯の度に召喚されてはたまらないからな。
「む、そうだったのか。それはすまなかったな。」
リオウはそう言いながら申し訳なさそうな表情をしている。
初めて出会った時の胃がひっくり返りそうなプレッシャーを放っていたヤツとは思えないな。
この安心感みたいなものは俺のスペックが上がったからではないだろう。
リオウとの間には確かな信頼関係があると感じている。
「それは良いとして。で、話しってなんだ?わざわざ呼ぶくらいだ。大事な事なんだろ?」
「うむ。いくつかあるが、そうだな・・・銀次よ。まずは我を
「リオウを竜眼で?」
リオウのスペックを視たいとは以前から思ってはいたが。
「そうだ。じっと見られるのは気恥ずかしいから少しポーズを取るぞ?」
「え?あ、ああ・・・わかった。」
リオウはその巨大な手で自らの目を片方隠すポーズを取っている。
・・・格好つけてるのだろうか?竜眼は片方の目が見えれば使えるようだから良いけど。
「どうだ?銀次の目にはどう映る?」
「ん~、!?これは!・・・駄目だ。全く分からない。」
??????
??? ??
LV ‐
物攻 ???
魔攻 ???
防 ???
敏 ???
スキル ‐
称号 ??? ザ・ロード
俺の竜眼に映っていたリオウのスペックは文字化けしたりノイズがかかったりしてほとんど理解出来なかった。唯一分かるのは称号のザ・ロードってやつだけだ。
「見ての通りそういう事だ。」
リオウの言う通りこの感じは覚えがある。つい先ほど視たばかりだ。
「やはりあいつ、グレインはリオウと同じ・・・」
「ああ、
リオウは少し溜息交じりにそう答えた。
リオウと同じドラゴン、か。通りで俺が全く歯が立たない訳だ。
「そうか。だがなぜドラゴンであるリオウとグレインのスペックは視れないんだ?力の差がありすぎると視えないとか?」
「・・・いや、違うな。ただ
「そうなっていない?」
「それは後で説明するとしてだ。今のままではヤツに勝てないだろう、という事は理解しているな?」
なんだか上手くはぐらかされた気がするな。まぁリオウの言っている事に間違いはない。あれだけ力の差を見せられたのだ。分からない方がおかしいな。
「わかっている。今の俺じゃ・・・あいつは倒せない。だがリオウ。あの時、俺がグレインにやられそうになった時にお前は俺に何かしようとしてなかったか?」
>『まだ使いたくなかったのだがな。』
確かリオウはあの時こんな事を言っていた。結局スララのカットインによって何かする事はなかったのだが。
「・・・そうだったな。・・・ふむ。ここでなら影響も無いか。銀次よ。今より
リオウはそう言うと静かに腕を組み目を閉じた。
「待て!りゅうそうか?なんだそれは!心を強くって・・・うわぁっ!!」
俺の抗議が終わる前にリオウは銀色の光の球となって俺の胸に吸い込まれた。
――――ドクン――――
なんだ?なんだか胸が熱く―――――
ドクン!!
「ぐ、ぐあああああっ!!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
突如胸から全身にかけて燃える様な痛みが俺を襲った。
尋常じゃない。今まで経験した事の無い痛み。
「クソッ!リオウ!どうすればっ・・・!があああ!!」
パキパキパキ、と四肢の先から身体の中心にかけて徐々に光沢のある銀色の何かに覆われていく。
「こ、これは・・・!鱗?いや、鎧、か!?ぐぎぎ、ギギギギ・・・!!クソッ!頭が割れそうだっ!」
余りの頭痛に頭を押さえつけると掌に違和感、というか明らかに今までの俺とは違っていた。
「角までっ・・・!グッ・・・!ハァー、はぁー、ハァー・・・」
(銀次よ。よく聞け。これが
リオウの声が俺の中から聞こえる。なんだか懐かしいな。リオウが刀に憑依する前はこんな感じで話をしていたな。しかし・・・なんだろう?この感情は。
「俺が・・・
(うむ。だが勇者と言えども人間の身が我になるのだ。正式に契約をした銀次ならば大丈夫だとは思うが、下手をすれば・・・)
全身の痛みは少しずつ軽減されているようだがなぜか今までに感じた事のない衝動にかられている。
それに魔力が、力が、溢れてくる!!
暴れたい・・・?いや、違うな。
―――――――――――壊シタイ
「グルルルオ゛オ゛オ゛オ゛オ゛!!!」
(む。銀次よ。落ち着―――――)
ドゴォ!!!!
気が付くと俺の、これは口からか?抑えきれない赤い魔力を放出していた。
その赤い魔力はこのだだっ広い空間のはるか先へ消えてゆきその後しばらくして轟音ときのこ雲を上げた。
(やはりまだ早すぎたか?・・・荒療治になるがここは仕方が無い、か。)
「ヴルアアアアア!!壊ス!全てぶっ壊してヤル!!オレヲ裏切り、奪っテイッタ全テを!!」
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