第91話 契約者と支配者
「さあ来いよ!銀次!もうさっき見たいに油断はしねぇ!少しの間遊んでやる!」
勇人はそう言いながら剣を両手に持ちながら構えた。
「ああ、わかったよ。お前にやられた左腕と左目の借り、ここで返させてもらう!」
勇人の言葉を受け、俺も刀を構える。
「銀次君・・・」
「須藤、あんた・・・」
東雲さんと西城は心配そうに俺を見ている。
「心配するな。俺は死なないし勇人も殺さない。今はな。」
俺がそう言うと二人はそっか、と言いながら少しだけ表情を和らげた。
「銀次ィ!まだ俺を殺すとか言ってやがんのか!?殺されるのはてめえなんだよ!低スペックのクソザコお荷物野郎が![セルフミラージュ]!!」
「何!?」
勇人が何やらスキルを使うと勇人の姿が3人に増えた。セルフミラージュと言ったか。
確かに竜眼で見た勇人のスキル欄にそんなスキルがあったな。
「それウチの分身のパクリやんか!あ、でもウチのは4人やからウチの方が強いやん!」
西城はパクリだ!と糾弾するがすぐに自分の分身スキルの方が数が多いと勝ち誇った。
現金なヤツだな。
「ふん!香織のスキルと同じだと思っていたらすぐに死ぬぞ!銀次!」
3人の勇人はそう言いながら同時に三方向から俺に切りかかってきた。
西城のスキルとは違う?どういう事だ?
「オラァ!もう一度死ね!聖剣技[ダブルスラッシュ]!」
「もう防げまい![
「こっちも忘れるなよ![ダブルスラッシュ:
3人の勇人がそれぞれ別のスキルを繰り出してくる。
勇人も契約によりスペックが上がっている為、これだけの手数を喰らったら流石に無傷ではいられないな。・・・チッ!なんとなくムカつくが避けるしかないか!
「はっはぁ!捕え・・・!何だと!?クソ!何だそのスピードはよぉ!」
俺はリオウと契約した際に竜眼と共に得た特性の一つであるステータス変動を使い、魔攻の値の一部を敏に振り勇人の三重攻撃を避けた。
勇人は間合い的にも確実に捕えたと思っていた様だがな。ギリギリまで引きつけて上に飛んで避けた形だ。
ちなみに現状、ステータス変動させる前の俺の値はこうなっている。
ギンジ・スドウ
LV33
物攻 800
魔攻 800
防 800
敏 800
それをこう変化させた。
物攻 800
魔攻 400
防 1000
敏 1000
防にも振ったのは念の為ってやつだ。やはりあの時の事は俺の中でトラウマになっているみたいだ。
勇人のステータスは確か・・・
ユウト・ジングウジ
レベル 35(隷属)
物攻 600
魔攻 500
防 400
敏 400
こうだったはずだ。
俺がステータス変動させた事によってあいつとの防と敏の差は倍以上になっている。
変動させなくても大丈夫だったかもしれないが勇人にはホーリーバインドがある。
一瞬とはいえ拘束されたら攻撃を受けてしまう恐れもある。防にガチ振りすれば喰らっても問題なさそうな気もするが。
「ちょこまかと逃げ回りやがって!クソウゼえ!!正々堂々と勝負し・・・!?・・・ま、マズイ・・・もうそんなに時間が立って・・・」
勇人は怒鳴り散らしていたかと思うと突然何かを察したかのように慌てだした。
良く見るとガタガタと震えているようだ。
『・・・ようやく、姿を見せるか。』
リオウが低く唸る様に言う。一体何が・・・
バ キ゜ン
その直後、何かが割れる、砕ける様な音が再度、響き渡った。
外敵が現れる時に鳴る空間が割れる音。
「また外敵!?」
「あの数をもう一回はしんどいで・・・」
東雲さんと西城も察したようで周囲を警戒している。その顔には若干疲労の色が窺える。先の戦闘で失った魔力は俺が回復してやれるが体力はそうもいかない。
「クッ!メーシー!防御壁はまだ張れるか!?」
「う、うん!それは大丈夫だと思うけど・・・それにしても襲来の間隔が早すぎる!」
ライーザさんは王女の身とそれを守るメーシーを気にかけてくれているようだな。
今までの外敵が来る間隔と違いすぎる様だが、恐らく今回は何者かが送り込んできているのだろう。
いや、違うな。今までもそうだったに違いない。
「だ、大丈夫・・・大丈夫なはずだ・・・当初の目的と若干、違ってしまったがまだ修正は・・・」
ふと勇人を見るとスキルで出していた2人の分身はいなくなり片膝を付き下を向いてブツブツ何かを言っている。まるで何者かに平伏するように。
ズルリ
何者かが空間の内側から裂け目に手をかける。
その後、一呼吸おいて、全体が出てきて・・・
ゾワ
「!?皆!下がれ!!」
得体のしれない殺気?怒気?よく分からないがとてつもなく気味の悪い感覚に襲われ慌てて西城、東雲さん、ライーザさんをまるで両腕でラリアットをかける様に抱え込みながら後方で防御壁を張っているメーシーの所まで下がった。
ほぼ全速力でだ。それほどに何か「怖い」と感じた。ここまで怖いと思ったのは初めてリオウに出会った時以来だ。
リオウにもとんでもないプレッシャーを感じたが、こいつは何か暗くまとわりつく様な・・・締め付ける様な気持ち悪さを感じた。
「キャ!びっくりしたー。でも、銀次君の腕温かい。」
「まゆまゆがそんな恰好しとるからやろ!まぁ、意外と悪くはないか、な。」
「男性に抱え込まれるなど・・・今まで・・・」
三人が何か言っているが今はそれどころじゃない気がするんだが・・・
「・・・遅い。眷属を送り、戻る様に促したはずだが・・・・?」
空間の裂け目から現れた男?かは分からないが、その何者かは全身を漆黒のローブの様な物で包み、跪いている勇人を見下ろしている。
「も、も、申し訳ありません!撤収の準備をしていましたら邪魔者が・・・」
勇人の声がうわずっている。よほど目の前の人物が恐ろしい様だな。
「邪魔者・・・?ふむ、そこにいる人間共か。我の隷属者となっている貴様が手こずるとは・・・・!!・・・なるほど、そう言う事か・・・久しぶりだな。‱〷㍵‴〷⊿。おっと、真名は封印されているのであったな。」
こちらを振り向きながらそう言う人物。その人物の顔は男なのか女なのか曖昧で分からない所か若いのか年寄なのかすらも把握出来ない、おかしな感覚であった。
ならば竜眼で確かめてやる・・・!
??????
??? ??
LV ‐
物攻 ???
魔攻 ???
防 ???
敏 ???
スキル ‐
称号 ザ・ルーラー 皇帝 ???
「チッ!全然分からないぞ!」
名前もそうだったがほぼ全ての値が分からない。文字化けしている所もあるしノイズがちらついた様に見えない所もある。ノイズ・・・?確か以前もあった気が・・・それは後にするとしよう。唯一わかるのは称号の一部だけだ。
・・・だがさっきこいつは久しぶり、と言ったな。もちろん俺ではない事は分かっている。恐らくは、名前を奪われ、他の力も奪われ、今はこの刀に憑依している
『ああ、そうだな。だが、我から奪って行ったのは貴様だろう!!グレイン!!』
リオウの怒りに震えるその言葉にグレインと呼ばれた人物はその判別しづらい顔の口元を大きく吊り上げた。
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