第86話 裏切りの答え
リオウに促され竜眼で確認した勇人のスペックには「勇者」の称号がなかった。
さらには俺のスキル、血の契約によって発生する「隷属者」の称号が載っていた。
「・・・なぜ、勇人あいつに隷属者が?あいつが誰かに隷属しているって事なんだろうが・・・それに、俺たち6人のうち勇者でないのは勇人だったか。」
『やはりな。この感じは・・・ヤツ、か!』
「ヤツ?リオウは勇人が隷属しているやつが誰かわかってるのか?・・・まさかリオウの・・・ッッ!?チッ!リオウ!後で話を聞かせて貰うぞ!あいつめ、空気の読めないやつだ!」
竜眼に映された情報に軽い戸惑いを覚えていると勇人から無数の氷の槍が飛んできた。
俺はその氷槍をメーシーがやったようにフレイムボールで相殺し、再度勇人に対峙した。
「何をブツブツ言ってやがんだぁ!銀次よぉぉ!!さっさとてめぇを殺して残りの奴らを捕えねぇとあの方に何されるか・・・!」
勇人は何かを考えながらそう言うとぶるっと体を震わせた。
あの方?勇人を隷属させているやつだろうか。あの勇人がびびっている様にも視える。
よし、なら少し揺さぶってみるか。
「ずいぶんとぶるってるみたいだな?そんなに契約主が恐いのか?調律者の神宮寺勇人さんよ。やっぱり俺たち6人の中で勇者じゃなかったのはお前だったんだな。」
「ッッ!?銀次ぃ!なぜお前がそれを・・・!この事は誰にも言っていないのに・・・!お、俺は勇者だ!この世界の英雄なんだ!」
「俺には視えるんだよ。」
勇人は信じられないという表情で固まっている。
「見える、だと!?何ふざけた事言ってんだよ!ああ゛!?証拠はあんのか!証拠は!」
取り繕う様に強い言葉を使っているが明らかに動揺しているのが見て取れるな。
証拠、と言われても現状では俺の竜眼に映された事実をアウトプットする方法は無いんだが。
「別にお前が勇者だろうが調律者だろうがどっちでもいいんだよ。俺が知りたいのは何故お前が俺を裏切り殺そうとしたのか、だ。」
「何故って?・・・簡単な話だよ。お前が俺の邪魔ばっかりするからだ!元々村人Aみたいなポジションの癖に俺の狙っていた女たちにモーションかけてよ・・・!そんなアンバランスは許されねぇ!だから全部奪ってやった!俺がこの世界を正しく調律するんだ!」
俺の問いかけに勇人は口角を吊り上げさも楽しそうに答えた。
俺がモーションをかけただと?そんな訳の分からない理由で俺は・・・!
「あの国王だってそうだ!一年後に返す、なんて出鱈目言いやがって!本当は向こうに帰る手段なんて初めっから無かった!そうだろ!?王女様よぉ!!」
勇人は続けてエミリア王女に叫んだ。
あの謁見の間では確かに国王は一年後に俺たちを返すと言っていた。言っていたが俺はなんとなくそれはかなわないと思ってはいたが・・・
「どうなんだ?エミリア王女様。」
「!?そ、それは・・・」
俺も王女に問うてみる、が王女の歯切れも悪い。まぁこれは勇人の言う通りなのだろう。
「申し訳、ありません・・・お父様は少しでも勇者様方の不安を少なくしようと、そういったのだと思います・・・」
「そう、なんか・・・ウチら帰れないんか・・・」
エミリア王女の言葉を聞いて西城も少なからずショックを受けている様だ。
これは仕方が無い事だと思う。
「・・・だから、殺したって言うのか?理解出来ないな。」
それで国王を殺してしまったらそれこそ八方ふさがりになる気がするんだが。
元々国王の指示で俺たちを召喚したのだし帰る方法も一緒に探っていけば良かったのだ。
「そりゃあこんな自分勝手な国王死んで当然だろう!?俺の帝国と同盟を組むって話も初めは渋りやがったからな。まぁ王女の貞操の危機と自身の危険を匂わせたらすぐに了承したが。ヒヒヒヒ・・・!」
帝国と同盟だと?あれは国王発信ではなかったのか。
「帝国との同盟は勇人、お前が持ちかけた話だったのか。それをしてお前になんのメリットがある!?」
「メリット?俺にとっては大ありだぜ!帝国兵を流入させてヴァルハートを疲弊させればこの世界で思いのままに出来る力と権力を与えて下さるって話だったからな!事実俺は最強になった!ヒャハハハハは!!」
『・・・』
どうやら勇人が、と言うよりは勇人を隷属させているヤツの案らしいな。
俺と、というか俺のスキルである「血の契約」と同じ様に人を隷属させ強化させる。
まさか勇人の言うあの方ってのはリオウの・・・
「そ、そんな!お父様・・・!ううっ・・・」
「なんという傲慢な!」
「ガキ、なんて言葉じゃ括れないね。酷過ぎる。」
俺たちの話を聞いていたライーザさんとメーシーも呆れつつ怒りを顕にしている。
そりゃそうだろう。こんな自分勝手な理由で国王を殺され自分たちの居場所を奪われたのだ。
「ちょ、ちょっと待ってや!須藤!あんたの言う様に神宮寺が勇者やないって言うんやったらまゆまゆは、まゆまゆは今どこにおんねん!」
そうだ。確かにリオウは勇者の反応はここ謁見の間にあると言っていた。
だが竜眼で見た所では勇人は勇者では無かった。とすると必然的に残った東雲が勇者でありここにいるという事になるが・・・辺りを見回しても見える場所に東雲の姿は無い。
「香織ぃ。真弓がどこにいるか気になるかい?くくく・・・」
ニタニタと気持ちの悪い笑顔で西城に問いかける勇人。
「キモッ・・・まゆまゆはどこや!早く教えてや!」
「ふははは!ならば見せてやろう!真弓はあそこだ!」
芝居がかった口調の勇人が玉座の上方を指差した。全員がその場所を見つめるがそこには東雲はおろか誰かいるような気配もない。
「は?誰もおらんやんか!ふざけるのも大概にせえ!」
西城も遊ばれている様な気がして激昂している。他の連中もそんな勇人にイライラしているようだな。
・・・ん?勇人の指さしている場所、何か空間が揺らいでいる気がするな・・・しかもこの感じ最近感じた事がある様な・・・
「そうか。やはり下賤なお前らには分からないか。ククク・・・なら仕方が無い。お前らにも分かるようにしてやろう!『
勇人はそう言うと勇人の指先から光が玉座の上方まで伸びて行った。
その光は何もないはずの空間を球を描くように形どり、その後、パァンと音の鳴る様な強烈な光を放った。
「うわっ!眩しい!」
「目くらましか!?」
「一体何が・・・!」
西城たちも突然の発光に目を塞いでいる。
先程から感じている違和感、それに今しがた勇人が発した言葉・・・あれは・・・
「竜言語魔法!?しかしなんで勇人が・・・」
『間違いない。という事は・・・我もやっと奴に会えるのだな!!!』
手にした刀からリオウの抑えきれない怒りの感情が伝わってきた。
そうか。リオウ、お前も・・・ついに。
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