第83話 確信

「リ、リオウ!?お前、なんでその刀に・・・」





ヴァルハート王国にいた頃、ビシエ遺跡で手に入れた魔力を吸う不思議な刀から俺の相棒、と言っていいドラゴンのリオウの声が響く。





『その昔我があの遺跡に放っていた思念体が劣化しあの遺跡にあった武具に宿ったのだ、と以前言ったはずだが?』





言ったはずだが?って。それがこの刀なんて知らねぇよ。





「ワオ!本当にドラゴンのリオウさん!?私はメーシー・ローイング!よろしくです!」





メーシーはそう言ってリオウが宿っているだろう俺の刀の握り部分を握手するように掴んでいる。


メーシーはドラゴンの研究をするために王国に来たと言うから嬉しいのは分からないでもないが・・・





『うむ。エルフの娘か。なかなかドラゴンへの造詣が深い様だな。』





リオウはメーシーに対してはげむがよい。とか言ってるけどお前の事を研究してるんだぞ。





「リオウ殿。私は王国騎士だ・・・失礼、今はギンジ殿の騎士をさせて頂いているライーザ・キューラックと申します。以後お見知りおきを。」





ライーザさんは手を自分の胸に当てて略式ではあるが敬礼をしている。





『お前は人間だが相当量の魔力と技量を持っているな。誇っていい。』





ライーザさんに対してもはげむがよい。とか言ってる・・・なんだか変な感じだな。





「・・・と言うか何故リオウは俺が初めてこの刀を手にした時に何も言ってこなかったんだ?」





『我の三分の一の力を使ったと言っても思念体は思念体。しかもかなり劣化していたからな。以前銀次が意識を失った時の様に強引に入り込むことは出来なかったのだ。』





ああ、前に俺が勇人に勝負をしかけられて負けそうになった時か。あの時はリオウに半分操られていたといっていいだろう。





「うーん。よう分からんけどあの時に須藤が今くらい強かったらなぁ・・・」





西城が言う様にあの人型外敵が現れた時に俺が無様にやられなければ東雲は俺に回復と偽って矢を放つ事も無く勇人に殺されかける事も無かったかもしれないが・・・





「ううん。マユミちゃんは分からないけどジングウジ君に関してはあそこで何もなかったとしても遅かれ早かれ何か行動を起こした可能性が高いと思うよ。」





「そうだな。あの後の彼の行動や王を殺した事を考えても、恐らくは。」





「そうかもしれんけど・・・」





メーシーとライーザさんの反論を聞いて西城は少し悲しそうな顔をした。


確かに勇人は帝国と手を組み(恐らく)国王を殺したりで自分の欲望を叶えるために後から相当やりたい放題だったようだな。





「今さら過去をどうだったと言っても仕方がない。俺の目的はやつらへの逆襲だが今は獣人たちの方が先だ。幸い刀も手に入ったし皆がリオウとも話せるようになった。とっとと王女たちを見つけるぞ。」





たらればを言っても始まらない。それを言ってしまったら俺があんな目に合わなければハビナや俺を慕ってくれる獣人たちとも会えなかったかもしれない。


仮に会えても敵同士だった可能性が高い。それは少し嫌だな、と思った。





『うむ。残る一人の勇者ならばそう遠くない場所にいる。』





「リオウは勇者の存在を感じる事が出来ると言っていたな。それが東雲なのか、勇人なのか・・・」





「そんなんどっちでもええ!早くまゆまゆの所へ行かんと!」





西城はそう言いながら部屋を出るようにドアのノブに手をかけている。


そうだな。どっちにしても手掛かりはそれしかないのだから。





「わかった。急いで行くぞ!リオウ、案内を頼む。」





『まかせるがいい。』





俺たちはリオウの案内の元、勇者の気配をたどって城内を走った。


姫崎を背負っているライーザさんの負担にならないように抑えながらだったが。


幸い暗部やら黒騎士は全く姿を見せなかった。








『ここだな。ここに勇者はいる。』








しばらく走った俺たちだったがリオウの声に足を止めた。





「ここが?王女様のお部屋はまだ先のはずですが?」





「ふぅ。ここって・・・」





「謁見の間、やったっけ?」





リオウが案内した場所は俺たちがこの世界に召喚された翌日に王に呼ばれ、俺たちの運命を語り、初めて王女が魔法を披露した場所、謁見の間だった。





「・・・この感じは・・・いる、な。」





俺は扉の先にいるであろう人物が誰なのか確信があった。





この衝動。


ドス黒く燃えさかる様な暗く激しい感情。


絶対に許すことは無いと誓った思い。


それをぶつけるために手に入れた力。





今は正直会わない方がいい、捕らわれているであろう王女の奪還を優先すべきだ。





そう頭では分かっていたはずだったが俺の気持ちとは逆に体はその重厚な扉に対して歩を進めていた。





「須藤?刀なんか握ってどうしたんや?」





「ギンジ君何を・・・」





「まさか!?ギンジ殿!」








『目の前にしては止められぬ、か。』








「おおおおお!![双飛竜そうひりゅう]!!」





久方ぶりに手にした刀で使う俺の唯一の攻撃スキル。


それを放つと俺たちの前にあった分厚い扉は×の字に切り裂かれその先を素通しにした。





「そこにいるんだろう!?勇人ぉぉぉぉぉ!!」








謁見の間の入口から長く続く先の玉座に座っている人物に対して俺は目いっぱい叫んでいた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る