第78話 勇者とエルフ

「チッ・・・仕方がない。おい、西城。行ってくれ。」





「はぁ。しゃーない・・・」





西城がぶつぶつ言いながら通気口から部屋に降りた。続いて俺、ライーザさん、メーシーの順番で姫崎の部屋に飛び降りた。





「!?あ、あなた達は・・・香織さん、ライーザさん・・・やっぱり生きていらっしゃったのね・・・それにメーシー先生まで。」





姫崎は大慌てで下着だけ履いたのか下着姿でベッドの上に立っている。





「こんな時に自慰って。若いって凄いね。」





「こ、これは!自慰なんてそんな・・・!チェック!そう!健康チェックですわ!」





メーシーの言葉に顔を真っ赤にして否定する姫崎だが・・・いくらなんでもその言い訳は通用しないだろ。





「あ、杏奈ちゃん。久しぶり・・・だね。どうしてあの時はあんな事・・・」





「キザキ殿。あなた達暗部に襲われましたがなんとか生きて戻ってきました。」





「くっ・・・!勇人様がいっていた通りですわね・・・やはりギャレスさんは失敗していましたか!ギャレスさんの娘には今度痛い目にあって貰いますわ!」





ほぼ黒だったが姫崎は二人を襲ったのは自分だと認めた。


これで俺の逆襲相手がもう一人確定してしまった。元の世界ではあまり、というかほとんど絡みは無かったが同期である仲間に俺は裏切られたのだ。





「姫崎。残念だがギャレスは娘と共に安全な場所へ逃がした。もうお前たちに従う事は無い。とりあえず何か履いてくれ。目に良くない。」





「・・・?こちらの男性は?失礼ですわね!顔はまぁ合格点ですがやけに目つきが悪い・・・」





姫崎は文句を言いながら短いスカートを履いた。動き回ったらすぐに下着が見えそうだ。見えても嬉しさはないが。


俺の事には全く気が付かない様だ。気が付かないならそれで別に構わないけれど。





「須藤!いくらなんでも女性にそれはあかんで!」





「須藤・・・?ま、まさか須藤さん!?嘘・・・あの時間違いなく死んだって勇人様が・・・!」





西城の言葉で姫崎も気が付いた様だ。だが”間違いなく死んだ”だって?”間違いなく殺した”では無く。


姫崎は勇人が俺を裏切って殺そうとした事を知らないのか?





まあいい。どちらにせよ姫崎は西城とライーザさんを襲ったんだ。俺を信じてくれている人たちを、だ。ならば許すわけにはいかない。





「残念ながら生き延びた。これから勇人にあの時あいつにされた事に対してあいさつをしにいくつもりだ。姫崎にはここで寝ててもらう。安心しろ。殺しはしない、お前にも俺の苦しみを体験してほしいからな。」





俺は姫崎に対して怒気を込めて睨みつけた。姫崎はそれを見て一歩後ずさりをしながら言った。





「そ、そんな事させませんわ!あの時に現れた恐ろしい外敵にやられてしまった須藤さんは不運でした。ですがそれを勇人様が悪いみたいな言い方をして!あの方はこの世界をよりよくしようと必死に頑張っていますわ!邪魔はさせません!」





姫崎はそう言いながら自分の鞭を取り出しぴしゃりと音を立ててしならせた。


この言い方・・・やはり勇人は姫崎にも自分が俺を手にかけた事は言っていない様だ。


何度も言うがだからと言って・・・!








「待って!ここはギンジ君の信頼を得るためにも私が相手をするよ。それに男の子が女の子を殴っちゃまずいからね。気絶させるかなんかして無力化させればいいんでしょ?」





俺が姫崎を攻撃しようとステータス変動をしている途中、メーシーがカットインしてきた。メーシーの事はもう疑っていないんだけどな。








「無力化ですって?先生、わたくしを以前と同じと思わない事ですわ!勇人様の為、嫌いな努力を重ねましたもの。わたくしの様な天才が努力してしまったらいくら先生でも勝ち目はなくってよ!」





自分を止めるというメーシーに対して姫崎は自信満々な笑みを浮かべながら言う。


あの姫崎が努力だと?もし本当なら元の世界にいる俺たちの会社の社員は腰を抜かすだろう。ありえないと。





「あはは。言い方は悪いけど一人遊びに夢中なまだ20歳そこそこのガキ相手には負ける気が全くしないよ。」





「なっ・・・!あれは違うと・・・!それにガキですって!?」





だがそんな自信にあふれている姫崎をメーシーは一笑に付した。姫崎は先程の痴態を見られた事を思い出したのか顔を真っ赤にしてプルプル震えている。


しかしメーシーがこんな口悪く言うなんて少し驚いたな。





もし姫崎が何か切り札を持っていてメーシーがやられてはいけない。


メーシーには悪いが姫崎の能力と合わせて確認させて貰おう。








メーシー・ローイング





レベル 38





物攻  170





魔攻  280





防   130





敏   160





スキル 





称号 オール・マジック 研究者








アンナ・キザキ





人間 女性





レベル 28





物攻  150





魔攻  150





防   150





敏   150





スキル ポイズンウィップ パラライズウィップ 変態 





称号 転移者 勇者








なるほど。メーシーについてはエルフだけあって(俺の勝手な主観だが)魔攻の値がかなり高い。


おや?スキル欄が空白だ。竜眼で見た事のある人物でスキルが無いのは初めて見た。


以前ギャレスがスキル持ちの方が逆にめずらしいんだと言っていた気がする。


称号は・・・研究者はいいとしてオール・マジック?全ての魔法?





しかしこうして見ると改めて思うが俺と隷属関係にあるハビナとスララの値はとんでもないな。体力的なものがどうなのか知らないが無双してしまいそうだ。


ああ、でもハビナはレオンに勝てなかったし数値が全てでも無いか。スララに至っては戦ってる姿が想像出来ん。





・・・さて、あまり触れたくなかったんだが姫崎のステだ。


各数値バランスが良く均等な数値だ。以前聞いた時も勇人の下位互換って感じだったがそのまま延びているようだな。


称号は転移者に勇者。姫崎も勇者で間違い無かったようだ。という事は勇者の称号を持たない転移者は東雲か勇人という事になる。


で、問題のスキルだがポイズンとパラライズウイップは俺も知っている。以前ビシエ遺跡でゴブリンに襲われた時に姫崎のパラライズウイップで助けられた事もあった。





そしてもう一つ知らないスキルがある。なんとなくスキル欄から怪しいオーラが漂っているような気がするが・・・変態って。


変態ってスキルなのか?どちらかといえば称号だろう。間違っても付けられたくない称号だけど。





このスキル・・・何か危険な臭いがするぞ。

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