第76話 研究成果
「なんだって?なぜそれを・・・!?メーシーがリオウに何の用があって・・・」
驚いた。何がってメーシーはあの結界を張ったのがドラゴンだと知っていた事だ。
だが元々リオウは封印されていた。その封印は異世界から来た人間にしか解けないと言っていた。だから勇者を、というか俺を、いや、オートMリカバーを持った奴を待っていたのだ。
(ほう。エルフの娘が我に・・・という事はアレか・・・?)
どうやらリオウにはメーシーがドラゴンに会う理由に見当があるらしい。
「へー。結界の間の先にいたドラゴンはリオウって言うんだ。いい名前だね。」
(む。銀次よ。こやつはなかなか分かっている様だぞ。)
お、リオウがいい気になっているな。といっても俺が付けた名前なんだけど。
「極まれになんだけどエルフのみに発症して身体から徐々に魔力が抜けていってしまう奇病があってね。一度発症すると3年から5年くらいで死んじゃうんだ。発症率は5000人に1人って言われてる。」
「3年で・・・」
「昔それに父親がかかっちゃってね。やっぱり3年で亡くなったんだけどなんとかこの奇病の治療が出来ないかと思って研究者になった。で、研究に研究を重ねてそれの特効薬がドラゴンの秘薬ってわかったんだ!王国でも少量は手に入れられたけど全然足りない・・・だから・・・」
なるほど。エルフ特有の奇病を治療できる薬を求めてドラゴンに行きついたのか。
「だがなぜあの遺跡の奥にドラゴンがいるって分かったんだ?」
「あそこの結界の間に施されていた鎖みたいな結界を覚えてる?以前からの研究であの鎖からドラゴンのブレスと同様の魔力パターンが検出されたんだ。賭けだったけどかなりの自信は持っていたよ。」
(あの結界から竜言語魔法を導くとはな。やはりこの娘なかなかの研究者だな。)
確かにドラゴンのブレスは口から竜言語魔法を出しているだけだとリオウは言っていたな。
「そうか。じゃあメーシーは勇者全員を私欲に使ったと言うだけで俺個人をを裏切った訳じゃ無いんだな?」
俺はあえて強く棘のある言い方をメーシーにした。
「う・・・その・・通り、だね。ギンジ君たちをあんな目に合わせるつもりは全く無かったのは嘘じゃないけど結果的にああなったのは私のせいだね・・・それに私が遺跡に行こうと言わなければスコット君も死ななかったかもしれない・・・やっぱりそれも私のせいだよ。」
「スコット・・・」
ライーザさんも無念そうな顔をしている。スコットか。ビシエ遺跡攻略の際に俺たちはゴブリンの群れに奇襲を受けた。その時に犠牲になってしまった騎士団の兵士だ。
「ですがギンジ殿。スコットに限らず騎士団の兵士は皆どこへ出兵するのにも覚悟を持っております。それにメーシーは行くか引くかの判断は私たちに任せていました。自分の意見を言う時も必ず状況分析をしての発言だった。彼女の個人的な感情に任せ強引に進んだ記憶はありません。」
「そうや!せんせがいたからウチらは強くなれた!この世界の文字や色々な事も教えて貰った!須藤だってそれくらい分かってるやろ!?」
西城とライーザさんが語気を強めて俺に意見した。
二人の言っている事は十分に分かっている。
「・・・ふぅ。わかってるよ。なかなか俺の逆襲相手が見つからないんでな。チッ・・・ドラゴンと契約してから性格が悪くなったかも知れないな。」
「ギンジ君・・・」
(銀次よ。それは我に問題があると言いたいのか?心外だぞ。)
リオウにも怒られてしまった。外からも中からも言われるのは少しキツイものがあるな。
「すまなかったな。メーシー。西城やライーザさんの話を聞いていて元々メーシーは俺を裏切った可能性は低いと思っていたんだ。それでも確認しなくてはいけないんだ。悪かった。」
「ん。ギンジ君が辛い思いをした事は聞いたよ。気持ちはわかる、なんて口が裂けても言えないけど出来る事は力になりたい。友達としてね。」
メーシーはそう言いながらバチコンウインクをかましてきた。なんだかなつかしく感じて少しだけ笑みがこぼれてしまった。
「そうか。俺にも女性の友達が増えてきたのか。向こうじゃ考えられない事だな。それなら俺もメーシーの友達として何かしないとな。リオウ、ドラゴンの秘薬について何か知っている事はないか?さっきの事は謝るから。」
(・・・まあいいだろう。我は心が広いからな。ドラゴンの秘薬と言ったか。あれはドラゴンの血を長い時間を掛けて精製して出来る代物だ。まともに作れば20~30年はかかるはずだ。最も血を取るのにドラゴンを倒す必要がある。それも下級のドラゴンでは意味がないだろう。)
なるほど。希少価値が高いのには理由があるって事か。時間もかかるみたいだしこれは大変そうだ。
「・・・そうか。メーシー、俺と契約したドラゴン、リオウが言うにはすぐのすぐには厳しいみたいだ。理由は…」
リオウに聞いたことをメーシーに報告すると彼女は悲しそうな顔を浮かべながらも精一杯の笑顔で言った。
「そっか・・・それは難しいね。上級のドラゴンなんて見つける事すらほとんど出来ないのに・・・でも逆にそれが分かっただけでもありがたいよ!ギンジ君、リオウさんにお礼を言っておいてよ!」
「ああ。リオウ?聞こえてるだろ?」
(銀次よ。我は「まともに作れば」、と言ったのだぞ?我を誰だと思っている?その辺にいる下級ドラゴンではないのだぞ?)
お、リオウがノリノリになっているな。そもそもリオウがどんな存在か良く分かってないんだけど。だがこの雰囲気は・・・
(銀次は我と契約している。銀次の血は我の血と同じ。まぁ、厳密には違うが。)
「って事は俺の血で・・・?」
(うむ。だが精製については「時」の力だけでは足りぬ。時短は「時」で出来るが「創造」の力を取り戻せなければ銀次の血から精製は出来ぬな。)
なるほど。どっち道リオウの力は取り戻す事は決めていたんだ。だったらついでに秘薬を作れたら言う事ないな。
「わかった。なあメーシー。もしかしたら色々上手くいくかもしれないぞ。」
「えっ!本当!?何か方法があるの!?」
「ああ。詳細はまた今度話す。今は先に残り2人を奪還して早く獣人たちの所へ戻ってやりたい。俺たちの目的はライーザさんたちから聞いているか?」
「うん。王女様とマユミちゃんだね?2人は自室に軟禁されているはずだよ。さっさと行ってあの変態から取り返してあげよう!」
「変態?」
「そうだよ!女とヤる事ばっかり考えてる変態!私にまでモーションかけてきて!あんなのが勇者だなんて・・・」
俺たちがいなくなってからやりたい放題だったのか。
メーシーは部屋の椅子にかけてあった白衣を引っ掴んで素早く袖を通した。相変わらず浅黒い肌に白い白衣が良く似合うな。
「お。久しぶりにせんせのその恰好見たけどやっぱ似合うわ!」
「まあ見慣れてると言えばそうですね。」
西城とライーザさんも俺と同じことを思っていたらしい。
「ふふ。ありがと。じゃあ急いで2人の所へ向かおうか!暗部はギャレス君がいなくなったから統率は取れていないと思うけど・・・ギンジ君。ギンジ君が元々使ってた部屋に転移出来る?」
「ああ。多分大丈夫だと思う。取り合えずそこに飛べばいいのか?」
メーシーはお願いと頷いた。何か考えがある様だな。元々のプランとは少し違うがここは任せてみよう。西城とライーザさんも反対していない様だしな。
俺はワクワクした顔をするメーシーを含め4人とも転移魔法で飛んだ。
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