第75話 再会
あちらで伸びている黒騎士たちを横目にギャレスは娘がいるであろう部屋のノブへ手をかけるとガチャリと回しなぜか恐る恐るゆっくりとドアを開けた。
「こらー!レディの部屋に入る時はノックしなさいっていったでしょー!」
ギャレスが部屋を開けると何者かが猛烈なスピードで突進してきた。
その何者かはギャレスの腹目がけて突っ込んでいった。
!?なんだ!?は、速い!?良くわからなかったが頭突きの態勢で地面と平行に飛んでいなかったか!?
「う・・ぐお・・・す、すまない・・ココ・・・ココが休んでいて起こしたら悪いと思ってね・・・」
ギャレスは息も絶え絶えと言った感じでなんとか言葉を発しているな。俺は回復魔法は使えないんだが大丈夫か?
この凶暴な子供がギャレスの娘か・・・親とは正反対な気がする。
「あっ!なんだーパパかー!パパだったら許してあげる!あれ?そっちのちょっとカッコイイけど目つきの悪いお兄さんはだーれ?」
なるほど。こんな感じの子なのか。
突進、もといロケット頭突きから数秒後。パッチリした目に黒い髪をおさげにしているかわいらしい5歳ぐらいの女の子が、ギャレスのひしゃげた腹からぽんって効果音が付いてきそうな感じで出てきた。
とりあえず挨拶はしておくか。
「俺の名前は須藤銀次だ。一応異世界からの勇者という事になっている。ギャレスには世話になった。まあさっきまで敵だったが今はもう大丈夫だ。・・・ギャレス次第、だがな。」
「ふーん。そうなんだー。ゆうしゃなんだー?カオリと同じ?だったら悪い人じゃなさそうね!私はココだよ!お友達になってあげてもいいよ!」
ココはよくわかっていないようだが西城と同じなら良いという事らしく、元気よく手を差し出してきた。握手だろうか。
「友達か。女友達はほとんどいないから嬉しいよ。よろしく。」
そう言いながら俺が手を握るとココは少しびっくりした後、嬉しそうに手を握り返してきた。
「へへー。ココもボーイフレンドはきちょうなんだよー?良かったね!」
ボーイフレンドね。最近の子供はませていると言うからな。俺はそうだな、と相槌を打っておいた。
「はぁ、はぁ、コ、ココ!すみませんね・・・ギンジ殿。どうにもお転婆で誰に似たのか・・・」
「別に構わない。というか子供も確保したしそろそろ戻りたいと思うんだが大丈夫なんだろうな?仮にも元暗部の長だったんだ。この子を安全に匿える所ぐらい心当たりがあると思っているんだが。」
「いつもこれが嬉しい反面大変でして・・・ふぅ。もう大丈夫です。あっしたちの事は気にせず団長の元へ行ってやってくだせぇ。ココの事はもう絶対に離しやせん!必ず安全な場所へ連れて行きます。」
ギャレスはそう言いながらココをグッと抱き寄せた。この様子なら大丈夫だろう。
「えー!ギンジもう行っちゃうのー?せっかくお友達になったんだから遊ぼうよー!ココ騎士団ごっこがやりたい!」
おおう。一瞬で呼び捨てになったぞ。流石はお友達だ。まあそれはいい。
「ごめんな。また今度遊ぼう。その時は西城・・・香織も一緒だ。その方がいいだろう?」
ぶーと口を膨らませているココに頭を撫でながらそう言った。この子は西城になついている様だからな。
「さぁ、ココ。ギンジ殿はこれからとても大切なお仕事があるんだ。無理を言ってはいけないよ?」
「わかった!我慢する!そのかわり次はカオリと騎士団ごっこと冒険者ごっこしよーね!」
ギャレスの説得にココは元気よく答えた。今回の件がうまくいったら西城には人柱になってもらおう。
「ああ。約束だ。じゃあギャレス、行ってくる。」
「わかりやした。お気をつけて。あっしもココを安全な場所へ隠したら王城へ向かうつもりですので!」
ココは俺の約束にやったー!と喜んでいる。またこの子に何かあったら意味が無いぞ。
ギャレスにはすぐに終わらせるから心配するなと言い西城とライーザさんの待つ王城へ転移した。
「・・・『
「わー!?パパ!ギンジが消えたよ!すごーい!」
「ああ、そうだ。あの人は本当に凄い人だよ。」
・・・・・・
先程西城たちと別れた場所へ転移で戻ってきた。時間はおおよそ20分ぐらいかかったかな。辺りを見回してみると二人の姿が無い。
メーシーが捕えられているとされるこの部屋の中だろうか。
部屋のドアを開けてみるとそこには西城とライーザさん、それに、メーシー・ローイングの姿があった。
「おお!須藤!どうやった!?ギャレスさんの娘、ココちゃんは大丈夫やったんか!?」
西城は俺に気づき若干不安そうな顔で訪ねてきた。ライーザさんも口に出さないが同じような顔をしている。
「ああ、問題なく娘は確保した。後はギャレスが上手くやるだろ。」
「そっかー!良かったー。」
「・・・ギンジ殿。ありがとうございます!」
二人は先程の不安な顔は消えほっと胸をなでおろしている。
「そうそう。西城。お前はこれが無事すんだら人柱な。」
「ん?何がや?ウチに出来る事はなんでもええけど・・・」
西城は頭にはてなを浮かべて首をひねっている。まあ元々子守りは嫌いじゃないようだから頑張って貰おうか。
「ギンジ君!?・・・前と雰囲気違くない?何だかワイルドに・・・それはいいとして、ほんとに生きてたんだね!?良かった!本当に良かった!」
二人の後ろにいたメーシーは俺の顔を見るなり顔をほころばせ嬉しそうに走って来て俺の手を取りぶんぶんと振りながらそう言った。
「なんとかな。俺の事は西城たちから聞いているか?それにメーシーの方こそ色々大変だったみたいだな。」
「うん。話は聞かせて貰ったよ。まさかあの闇魔法で造られた霧の中でジングウジ君が・・・でも最近の彼を見ていたらまさか、でも無い気がするけれど。それでもギンジ君がドラゴンと契約したって聞いて・・・!しかも転移とかも出来る様になったんでしょ?」
「この状況下ではまたと無い戦力でよかった、と?」
俺はただこの力をあてにしているのか?と言う意味を込めてギロリと目に力を入れた。
「あ・・・い、いやギンジ君がそうなって嬉しいって訳じゃ・・・・・ううん。自分の気持ちに嘘ついちゃ駄目だね。正直、さっき話を聞いてギンジ君の戦力には大きく期待を持った。でもそれが無かったとしてもギンジ君が今こうして生きていてくれている事が嬉しいってのは本当だよ!私も王女様もすっごく心配したんだから!」
俺に睨まれてメーシーは一瞬ひるんだ様だったがすぐに冷静にこの状況における打算と自分の想いを打ち明けた。
まあ変に取り繕うよりもよっぽどいい気がするな。だがメーシーには確認を取らなければならない事があるんだ。
「そっちも大変だったようだし正直に言ってくれて逆に嬉しいよ。・・・なぁメーシー。ひとつ教えてくれ。なんであの時あんたはあそこまでビシエ遺跡攻略に積極的だったんだ?俺たちが全員であそこに行ってなければ突然遺跡に外敵が現れてもあんな事にならなかったかもしれないだろう!?」
俺はそう問いかけてメーシーの言葉を待った。メーシーの返答次第では彼女を逆襲の対象にしなくてはいけなくなる。
「それは・・・そうだね。これもちゃんと言わないとね。もちろん国王の命令とか勇者たちのレベルアップってのはあったけど一番の理由は遺跡の、というか結界の間から先の研究を進めたかったから、かな。」
「研究、か。」
「そう。元々私がこのヴァルハート王国に来た理由はあの結界の間の先にいるであろうドラゴンに会う為だったんだ。」
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