第66話 総帥の憂鬱

          神宮寺勇人side



「チッ!まだ勇者西城香織と元騎士団長のライーザ・キューラックは見つからんのか!?もう一月以上たっているぞ!」





「ハ、ハッ!申し訳ございません!総帥!先日報告申し上げた通り捕える寸前に邪魔が入りまして・・・上級魔法による大規模な爆発で何分生死の方が・・・」





「ごたくはいい!死体かその証拠、生きていれば引きずってでも連れ戻せ!」





「かしこまりました!」





妙な被り物をした暗部の兵士は素早く部屋を出て行った。


元副団長のギャレスを初め騎士団の優秀で俺の言う事を聞きそうなやつを見繕って作った俺の私兵だ。





全くクソが・・・!せっかく王殺しをあの二人になすりつけたってのに肝心の本人たちがいないんじゃ国民に公表出来ない。すなわち罪人を捕えるなり処刑した事を発表し俺が代わって王になるという事が示せないじゃないか!





まああの二人には悪い事したとは思っている。でも二人とも俺になびかないのが悪いんだぜ。杏奈や城にいる他の女共の様にしっぽ振ってれば二人ともそれなりに可愛がってやったのにな。


香織の顔はそこまで趣味じゃないがあのむっちりした尻はそそるもんがある。


ライーザさんについては美人だが俺はああいう武人みたいなのは苦手なんだが。





俺は今まで欲しいものは何でも手に入れてきた。いや、手にすることが出来た。女にしろ仕事にしろちょっと優しく微笑んでやればすぐにこっちに転がり込んできた。顔がいいってのは楽でいい。





だがこの世界に召喚されてからはどうにも調子が悪い。前から狙っていた東雲真弓は以前からほわほわして中々掴めなかったがアイツを誤射したショックで半分おかしくなっちまった。理解できないがアイツをよく気にかけていたからな。


だいたいぼーっとしてて乳を揉んでも無反応だ。そっから先は何もしていない。無理やりなんてのは俺の美学に反する。





それとヴァルハートのクソデカ乳王女エミリアもなぜかアイツがお気に入りっぽく誘いにも乗ってこねぇ。俺が直々に部屋まで行ってやってんのによ!





普通は女の方が赤い顔しながら俺の部屋まで来て自分から跨るもんだ。最近は自分の父親が殺されたショックとご執心のアイツが死んだショックで弱ってるだろうからもうすぐだろうな。





この国の王、ガノンと勇者のアイツ、須藤銀次は死んだ。二人とも俺が殺したんだ。





銀次は死体は見てないが左腕を切り飛ばしてやったしあのヤバい外敵に目も貫かれて次元の亀裂に落ちて行ったからな。間違いなく死んでるだろう。





「ユウト様?お顔が恐いです・・・」





「おっと。ごめんよ。早くこの国を裏切った大罪人を捕まえたくてね。この事は誰にも言ってはいけないよ?」





次はどうするか・・・どうしても見つからなかった場合はあの口うるさいメーシー・ローイングのせいにでもしてしまおうか。


彼女は香織とライーザを捕える時に邪魔した張本人で今は隔離している。彼女は俺の差し金だという事に気づいているかも知れんしな。





「はい・・・わかっていま・・あんっ・・・!そこは・・!」





先程から俺の隣に侍っているメイドの乳を揉みながら次の試案を練る事にした。








翌日








「勇人様っ!」





ここ最近の日課である真弓と王女の部屋へ行き慰めの声をかけ終え自室に戻っている最中に聞き覚えのある声で呼び止められた。





「ああ、杏奈か。どうした?」





「どうした?じゃないですわ!ここ最近全然夜のご相手して貰っていませんわ!」





「この前したばかりじゃないか。というか杏奈?お前にはあの時、香織とライーザの捕縛を命じたんだ。ギャレスまでつけて逃がした事についてはどう説明するんだい?」





俺は作り笑いをしながら怒気を込めて杏奈に質問した。杏奈には暗部を取り仕切らせている。


成果も上げないくせに報酬ばかり強請りやがって。実際イラついてんだよ。これが作り笑いなのは杏奈もわかってるだろう。





「あ、あ、ご、ごめんなさい・・!今度はちゃんとい、いたしますわ・・・」





杏奈は声を震わせながら絞り出すように言った。初めからそうしてろよ。





「わかってくれればいいんだ。これからも頼むよ杏奈。頼りにしている。」





「わかりましたわ!勇人様の為精一杯努力致します!」





そう言いながら笑顔を見せた。仕方ない、今夜は杏奈を抱くとするか。








午後になってこれからの方針を決めるために俺たち議会は会議室に集まっていた。


議会と言っても俺の意見を伝えるだけの場だが。


実際は俺が帝国からこの国のほぼ全権を任されているし議会の委員も大体俺の息のかかった人間だ。








「失礼します!総帥!」





突然黒騎士が会議室に飛び込んできた。


黒騎士は帝国からの借り物の兵士だ。中々の強さを持っている。同期で勇者でもある亮汰と同等かすぐ下ぐらいか。





「なんだ?騒々しい。今は会議中だ後にしろ。」





「申し訳ありません!ですが緊急かと思いまして・・・」





何か焦っているようだ。面倒事はごめんなんだがな。





「チッ・・・発言を許す。」





「ハッ!ありがとうございます!たった今大森林の使者を名乗る者が現れ、これを総帥に渡すように言われました!ふざけたいたずらかと思ったのですがカセ総帥補佐を人質に取っているとの事でして・・・ぶひぃ。」





はぁ?亮汰を?ったく・・・何を訳の分からないことを・・・ッッッ!?これは・・・!?





そこには





「加瀬亮汰は預かった。返してほしければ王国にいる奴隷獣人を全員解放せよ、さもなくば彼の命は無い。日時と場所は2日後の正午、ヴァルハートと大森林の間にある草原地帯だ。必ず来い。来なければ直接貴様の首を取りに行く。」





と書かれていた。日本語・・・で。差出人は・・・五大獣老一同、それと西城香織、ライーザ・キューラックとある。これを書いたのは西城か!確かに俺にしかわからない確実なメッセージだ。


やはり香織、ライーザは生きていたか・・・!暗部のやつらわざと逃がしたのか?いや、杏奈はそんな事はしないはず。ギャレスにも裏切れば家族の命は保障しないと暗に脅してある。





それにしてもどういう事だ!?確かに亮汰はここ何日か見ていないが・・・フラフラしてるのはしょっちゅうだし、あいつには帝国から連れてきたバケモノ見たいな強さの戦闘奴隷、名前は確かプラネとか言ったか。そいつがくっついているはずだ。





プラネについては強すぎて意識を奪うのはもったいないと意識を残して魔獣狩りに使っていた。完全制御出来ないが逆にあいつも仲間を人質としてあるから形だけでも亮汰を守るように言っておいたはずだ。


亮汰を拉致した奴はプラネより強い?それとも何か別の方法で?





これが俺の失態だとあの方にばれたら・・・クソが!本当に面倒な事になりやがった!





「皆の者!やはり逆賊、西城とライーザは生きていた!こいつらは王を殺害しただけでなく獣人と手を組み卑劣にも総帥補佐であり勇者の加瀬を人質とし王国を乗っ取ろうとしている!しかし勇者は奪還せねばならん!一度奴隷を解放する必要があるやもしれん。」





正直亮汰ぐらいどうでもいいが国民の支えである勇者をこれ以上失う訳にはいかない。銀次は戦死、西城は療養という事にしてあるからな。形だけでもこれは聖戦という事にしなくてはならない。


奴隷は解放した直後に取り返せばいいだけだ。獣人と香織どもめ・・・!俺の異世界権力&ハーレムライフを邪魔するのなら殺してやる!





王や銀次のようにな!


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