第56話 獅子親子の激闘
突然レオンがハビナに対して勝負だ!と言い外へ出て行ったのを俺たちは追いかけるように表へ出ようとしていた。
なんだか最近やたらとこの「勝負だ!」ってのを聞く気がするんだが。
俺は戦闘狂でもないしやっぱり話し合いで解決ってのが本来一番いいとは思うけどな。
だが人同士が思いをぶつける、主張を貫くって意味では一番シンプルで分かり易いのかもしれない。
俺の逆襲にしたって話し合いましょうなんて言われても絶対に応じる事は無いだろう。
いや、だろうじゃない。絶対に無い。
そんな事を考えながら外への扉を開けた。
ドゴン!ガイィン!
「うおおおお!
「はああああ!
ゴオオオ! ヒュオオオ!
すでにレオンとハビナの試合?勝負?が始まっていた。お互いが納得しているとはいえさすが獅子族って所か。闘う事が好きなんだろう。
「はぁ、はぁ、さ、さすが父上・・・!本当にお強い・・・!」
「ふぅ、ハビナこそ先日までただのおてんば娘だったものがこの俺と互角以上にやりあうとはな!ギンジ殿に預けて正解だったようだな!」
人を養成所扱いするんじゃない。ハビナは強くなったがそれは一度俺のせいで死にかけたからだ。その点についてハビナには本当に申し訳ない事をしたと思っている。
「これが獣老、レオン・バーサス殿の闘い・・・なんと力強い・・・」
「ハビナちゃんも凄い・・・多分ウチより全然速いで!」
「久しぶりにレオンさんの闘いをみるがやはり強い。」
「ほっほっほ。レオン坊め。よく鍛錬しておる。」
「ギンジ君はそのレオンちゃんに軽く勝ったのよね~?どれほどなのかしら~」
「いや、軽くじゃない。俺の力はリオウの力だからな。元々の俺ならば逆に軽く殺されて終わりだ。」
勇者勢や獣老勢もこの闘いに目を奪われているようだ。
闘いを見ていると一進一退といったところか。スペックではハビナの方が上回っているようだが闘いとはそれが全てでもない様だな。
そういえばハビナにもオートMリカバーがついている事もあって魔力面では有利だろう。
ハビナ・バーサス
獣人 獅子族 女性
レベル 35(隷属)
物攻 400
魔攻 160
防 180
敏 300
スキル ブーストダッシュ ビーストクロー(風) ファングクラッシュ
オートMリカバー(小) 疾撃流舞 獅子の咆哮
称号 族長の娘 隷属者 碧風の武人
レオン・バーサス
獣人 獅子族 男性
レベル 55
物攻 400
魔攻 100
防 150
敏 220
スキル 炎撃流舞 ブーストダッシュ 獅子の咆哮
称号 獅子族族長 5大獣老 蒼炎の武人
現状のスペックがこれか。全てにおいてハビナの方が互角以上の数値を示している。
レベルはレオンより圧倒的に低いにもかかわらずだ。おや?以前見た時よりハビナのスキルと称号が増えているな。
スキルが増えすぎて技のデパートみたいになっているがそれも才能か。
聖獣スララがケルベロスだった時に闘った際に使える様になったスキル、疾撃流舞。これはわかるんだが称号の碧風の武人とは何だ?びゃくふう?ひゃくふう?へきふう?わからんからひゃくふうのぶじんにしておこう。
後は獅子の咆哮か。これはレオンと同じだろう。という事はレオンの蒼炎の武人状態にハビナもなれるという事だ。
「[ブーストダッシュ]!はっ!たぁ!父上、覚悟![ビーストクロー]!」
ガン!ドン!ギィィン!
「うむ。いい攻撃だ!だが荒い。ゆえに読みやすい!おおおおお!」
ドドドドドドド!!
「くっ・・・!手数が多い!」
ハビナの得意な連携攻撃をレオンは両手の蒼炎できっちり受けている。
その後蒼炎の拳の連打でハビナを追い詰めていく。
他人の闘いを見て分析するのは結構楽しい。この世界へ来て初めてといっていいだろう。今まではそんな余裕はなかったしな。
「ハビナよ。そろそろ探り合いは終わりにしよう。なぜか魔力にも余裕がありそうだしな。本当に以前とは見違えたぞ![
ドンッ!
「わかりました!父上!私の全力受けて頂きます![獅子の
ドンッ!
そう言うとレオンは蒼炎の武人状態になり身体から蒼い炎を立ち昇らせハビナも碧風の武人状態で碧色の風を立ち昇らせている。蒼と碧、なかなかに壮観だ。
「うわ・・・なんか凄いけどキレイやな。」
「そうね~わたしもギンジ君と契約してもらおうかしら~。」
「そうポンポンと血の契約を使う訳にはいかない。俺にもデメリットがあるんだからな?」
「父上!後でギンさんに魔力を分けて貰って下さいね!」
「ハビナよ!俺に勝つ気でいるか!戦場で慢心すると死ぬぞ!?」
俺を魔力タンクか何かと勘違いしているんじゃないのか?まぁレオンにしてもハビナにしてもヤバそうだったら魔力贈与くらいするが。
二人とも自分の魔力を力に変える奥義といってもいいあの状態になったのならあの程度のスペック差など無いようなものだろう。
後はどちらが渾身の一撃を入れるかだ。
「行くぞ!俺にお前の覚悟を見せてみよ!![
「私の成長を体で感じて下さい!![
やはり碧はひゃくだったか。それはどうでもいいか。
レオンとハビナは互いに正面からぶつかるように突撃を始めていた。
「はあああああ!!取った!!」
ヒュオオ!ギィン!
「・・・ッッ!!?」
ハビナの渾身の碧疾がレオンに直撃したかと思った瞬間にハビナの身体がガクンと体制を崩した。あれは・・・体術ではレオンの方に理があったか。
「流され・・・!?しまった・・・!」
「ハビナよ!常に相手の動きを見て立ち回れ!そして父レオンの拳、味わってゆけ!」
ドゴォォン!!
「ガ・・・ハッ・・・」
ドサ
レオンはハビナの一撃をあえて受け、独特の体捌きで攻撃を流したようだ。その後ハビナが崩れた所を利用してカウンター気味に腹へ一撃を喰らわせた。
いくら戦闘好きといっても実の娘によくやるな。ハビナもとっさに碧風を集めてガードしたようだが完璧に入ったレオンの拳は相当なダメージを与えたはずだ。
「勝者!レオン・バーサス!!」
ガジュージが声高らかに宣言した。
「さ、さすが父上で・・す・・・父上よりも強くなったと・・・思いあがってしまい・・すみません・・・」
「いや、お前には経験が足りないだけだ。最後の一撃は思いが乗っていてよかったぞ。」
「精進しま・・・す・・」
「ああ。もし俺が負けていたら恰好がつかなかったが勝った所で言わせてもらおう!ハビナよ!大森林よりでてゆけ!」
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