第57話 追放の理由

「え・・・?父上?今なんと?私が大森林から追放・・・?」




ガジュージから回復魔法をかけてもらいなんとか起き上がってきたハビナは目を丸くしながらレオンに問いただした。ハビナだけではない。俺たち皆レオンの突然の追放宣言に言葉を失っていた。


レオンのやつ。いったいどういうつもりなんだ?





「ちょっ・・・レオンさん!?なぜハビナちゃんがそんな目に!?」





「そうよ~。ハビナちゃんの強さじゃ不合格だっていうの?そしたら大森林の獣人は私達含めてみ~んな出て行かなくちゃならないわよ~?」





「レオン坊。きちっと説明してもらわんと分からんのぅ。」





各獣老も一斉に抗議しだした。




「父上・・・私は獣人だ!その事に誇りを持っています!せめて理由を・・・」





「そうやで!獅子のおっさん!なんで自分の娘にそんな事いうん!?ハビナちゃん泣いとるやんか!」




「確かに。今の闘いに納得できない訳が知りたいですね。レオン殿。」





人間勢も加勢して一気にレオンは悪者ムードだ。





「俺も教えて貰いたい所だ。一応ハビナとは隷属関係にあるんでな。じゃあなと放り出す訳にもいかない。」





最後に俺が問いかけるとレオンはびっくりしたような顔で答え始めた。





「む・・・貴殿たちは何をそんなに怒っているのだ?俺はハビナの実力は十分だと分かったから出て行けと言っただけなのだが・・・」





「だからなんで実力が十分だと出て行かなきゃならないんだ?そこを聞いているんだよ。」





「??ギンジ殿はこれよりヴァルハートに行き宿敵と一戦交えるのだろう?その時ハビナが足手まといにならないかどうか見極めたのだ!この実力ならばそうそう遅れはとるまい!」





なんだ。そういう事か。全く戦闘種族は口が足りなくて困るな。





「・・・という事はハビナちゃんをギンジさんについて行かせる為の試験だったということですか?」





「最初にそう言ったはずだ!」





全員が言ってねーよと心の中で突っ込んだだろう。顔を見ればわかる。





「で、では勘当などでは・・・?」





「ハビナよ。何を寝ぼけている。ギンジ殿の嫁になるのだろう?彼ほどの男、他にライバルがいないとでも思ったか!ここで武功を立てれば第一嫁候補になる事は明白!そうすれば我が獅子族とて安泰!いい事尽くめよ!ガハハハハ!」





「な、なるほど!さすが父上だ!よし!ギンさんの障害は私が全て切り開いて見せよう!」





「・・・・」





二人してガハハハ!と笑っているが意味が分からん。何が明白!だ。





(獅子族というのは強いものが一番だからな。そういった思考になるのだろう。)





リオウも少し楽しそうにそう言った。見えないけどなんとなくだ。





「ぶ、武功やって?そんなんが必要なんか・・・?でもまゆまゆには何て言おう・・・」





西城も聞こえないがなにかぶつぶつ言っている。こいつらホントに大丈夫か?





「お前たち、勝手に色々決めているがこれからどうするつもりだ?西城も東雲とメーシーを助けろと言っていたがあてはあるのか?正面から行って容易く奪えるか?」





「えっと・・・す、須藤は何かいい案あるんか?」





「私もメーシーの言葉に従って大森林まで来ただけですのでその後の事は・・・」





やっぱりか。でも何でメーシーは大森林へ行けなんて言ったんだ?ここに俺がいる事は知らないはずだし仮に知っていてもメーシーは俺がリオウと契約して強化された事まではわからないだろう。


本当は獣人たちが気の良いやつらって事を知っていたのかな?だったら俺たちがいた時の講義で教えてくれても良かったはずだ。わからないな。





「全く。勢いでこなそうとするな。まぁ俺は正面から乗り込んで行って勇人たちに逆襲してもいいんだが王女やメーシーがどんな状況か分からない以上それも得策じゃないだろう。」





「なんだかんだいって須藤は王女様やせんせの事気にかけてるんやね。」





「・・・ふん。ライーザさんが信じて欲しいと言ったから俺の目と耳で確認するまでは保留にしておくだけだ。だから本当に裏切ったと分かった時には・・・」





「ギンジ殿、ありがとうございます。今はそれでもいい。どうかご自身で判断して下さい。」





「そうさせて貰う。だが勇人と東雲は別だ。あの時の痛み苦しみはまだきっちりと覚えているからな。亮汰と姫崎は・・・邪魔するなら容赦はしない。」





「まゆまゆは違う!・・・はずや。」





「・・・これ以上の問答は意味が無い。リオウの力を取り戻す目的も別にあるし今すぐあっちに行くのもな。」





(我の方は銀次の目的が片付いてからでも構わないがな。どうせ後々繋がる。)





「繋がる?」





(気にするな。遠くない内にわかる。)





リオウが思わせぶりな事を言っているが今は気にしていられない、か。





「あら~。じゃあそろそろギンジ君の住居を整えた方が良くないかしら~。人数も増えてきたことだし自分のお家があった方がいいんじゃない?」





「わー!ご主人様のお家ですか!あたちはご主人様と同じお部屋がいいのです!犬小屋なんて嫌なのですよ!ワンワン!」





確かに。スララの同部屋がどうのってのは置いておいてミズホの言う様に根無し草で毎度毎度誰かの家に泊まり込むってのもな。





「そうだな。確か竜族の住んでいた領地があるんだったか?なんだか荒れ放題らしいが。」





「うむ!以前も言ったが魔獣の住処になっているだろう。整地もしなくてはならないだろうな。だがあの辺りには近くに綺麗な川が流れている。上手く使いたい所だが先の魔獣共が多くてな。」





なるほど。少し様子を見に行ってみるとするか。





「わかった。様子を見にって出来る事があればやってこよう。また一度ここかレオンの所へ戻ってきたいんだがいいだろうか?それと一応確認しておくがさっきのレオンの話じゃハビナはすぐ大森林を出なくてもいいんだろう?」





「ギンジ殿が必要な時に連れて行くがいい!」





「ギンさんが嫌って言っても付いていくからな!」





「まぁ頼りにはしているよ。じゃあミズホ、頼めるか?」





「ピーちゃん&キューちゃんね~。任せて~。」





ミズホがピーー!!っと指笛を拭くとライドホークのピーちゃんとキューちゃんが上空からやってきた。やはり二人ともお利口さんにお座りしている。


久しぶりにピーちゃんの背中に乗れると思うとワクワクしてくるな。





ピュイ!





キュイ!





二人を撫でると嬉しそうに鳴いてくれた。





「な、なんやこのデカい鳥は・・・まさかこれに乗るんか・・・?」





「ライドホークです、カオリ殿。私も実際に見るのは初めてですが。」





ほぼ大森林専用のライドホークだ。人間は見慣れないはずだよな。





「どうする?まぁ住むであろう人間の二人は確定として他には誰が行く?行ってもすぐにゲートで戻って来れるが。」





「私だ!」





元気よく手を挙げたのはハビナか。だろうと思ったよ。





「あたちも!」





スララも初めから勘定に入ってる。





「ほっほっほ。異変の調査に行けなかった分儂も手伝おうかの。」





「サルパか。獣老として領地にいなくてもいいのか?」





「大丈夫じゃよ。特に困る事はあr」





「駄目です!」





「ほ!?なぜじゃハナちゃん!」





サルパの話途中でハナちゃんの結構なカットインが入って来た。


うん。中々のスピードだ。





「サルパ様はお仕事がこーんなに溜まっています!ですので駄目です!」





ハナちゃんが体いっぱい使った手振りで溜まっているであろう仕事を表現した。


これはサルパは動けなそうだ。





「だそうだ。」





「むむむ・・・仕方がない。ギンジ殿、住居が出来たら遊びに行かせておくれ。」





「わかった。じゃあ行くか!ピーちゃん、キューちゃんよろしくな。」





ピュイ!





キュイ!





二人ともいい返事をしてくれて一気に大森林の上空へ飛び上がった。


ちなみにピーちゃんへはもちろん俺。他に西城とハビナ。キューちゃんにミズホとライーザさん、それにスララが乗っている。正直スララはどっちでも負担はないだろうがじゃんけんでそっちに決まった。


・・・ん?なんでミズホがいるんだ?ああ、操舵手か。





「ホンマに飛んでるやん!凄い凄い!」





「な?これは癖になるだろ?」





「須藤の言う通りやな!ピーちゃんは凄いなー!」





「ピーちゃん!カオリの尻はデカくて重くないか?きつかったらちゃんと言うんだぞ?」





「なんやて!ハビナちゃんの胸こそデカすぎてピーちゃんの負担になっとるわ!」





また西城とハビナがわちゃわちゃしている。せっかくピーちゃんの背中でゆっくり出来ると思ってたのに・・・





そんなこんなでしばらく空の旅を楽しんでいると目的である竜族の領地へ着いたらしい。


もう少し飛んでいたかったというのが本音だ。





「ありがとう。二人とも今度は俺一人で乗せてくれ。」





そういうと二人はピュイ!キュイ!と鳴いた。よろこんで!と言ってくれているようだ。








「この辺り一帯が竜族の領地よ~。魔獣がうようよいる気配がするわね~。ギンジ君どうする?」





「いや、ピーちゃんたちは帰ったのになんでお前が普通にいるんだ?鳥族の領地はいいのか?」





「あら~?私の所はみんな優秀だから大丈夫よ~。サルパおじいちゃんと違って仕事も溜めてないし。まぁ一番はこっちのほうが面白そうだから~?」





凄い自由人なんだな。まぁいいか。





「よし。じゃあ西城、ハビナ、ミズホ、スララ、ライーザさんの五人でこの辺りの魔獣を一掃して来い。レベル上げにもなるし。あ、パーティーは組んで行けよ?その方が効率がいいだろう。」





「は?なんでうちらがそんな事せなあかんねん!」





「なんで?お前ら住むところ無いんだろ?俺の領地に寝泊まりさせてやろうって言うんだ。それぐらいやってもバチは当たらないと思うんだが。」





「ぐっ・・・!確かに・・・!」





「わかったら張り切って行って来い。魔力が切れそうになったらここへ来れば回復はしてやれるからな。後、無理はするなよ。ヤバそうなのがいたら戻って来い。この前みたいに(蝕)みたいなのはいないと思うが。まぁミズホはどっちでもいいぞ。」





「ん~。多分この辺りの魔獣はそんなに危険はないはずよ~。ずっと来てないから確証はないけど。まぁちょこっとお手伝いしちゃおうかしら~。」





「わかりました。私はギンジ殿の剣。近隣の魔獣、一掃して参りましょう。」





「あたちも頑張るのです!ワンワン!」





「やればいいんやろ!やれば!」





「うん。その意気だ、カオリ!ヒップアップにもなるぞ!」





「しつこいで!」





とりあえずミズホには鳥の監視を頼んでおいて俺は少し休む事にした。あいつらが戻ってきたら色々やる事があるからな。

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