第49話 王国の異変そして逃亡
西城香織side
「はぁ、はぁ、はぁ、ライーザさん!大丈夫!?」
「は、はい・・・なんとか・・・サイジョウ殿の方こそお怪我は・・・?」
「うちは大丈夫や!って言うかあいつらなんなん!?うちの秘密のトレーニング中に襲って来て!とりあえず返り討ちにしてしまったけど。」
うちとライーザさんはヴァルハート王国の城を逃げ出し城下町の路地裏を走っていた。
でもあいつらおかしかったな。変な被り物をしててうーとかあーしか言わんかったし。
それにしても城の訓練場にあんなにたくさんの賊が入り込むとかこの国の警備体制はどうなっとんねん!
「わかりません・・・私も就寝前の日課にしている素振りをしていたら背後から急に・・・私が気配を察知出来ない程の手練れなどこの国に何人いるか・・・ぐっ・・・!」
「ライーザさん!?傷が!早く回復魔法を!」
「申し訳ない・・・『清らかなる水の精霊よ。我に従い癒しの水泡にて彼の者の傷を復し癒したまえ。<<ツヴァイヒーリング>>』」
ふわぁ
「これでとりあえずは大丈夫です。ですが魔力の残りが・・・中級の回復はかなり魔力を消費してしまうので・・・」
「うーん。とりあえず城へ戻りたいんやけど。襲われた後まゆまゆの事が気になって部屋に行ったけどおらんかったし・・・」
どうしよ?と思ってとりあえずメーシーせんせかライーザさんの所へ行こうと思ったらライーザさんと中庭で鉢合わせたんや。ライーザさんも襲われたんやって。そっからまた追手が来てこんな所まで来てしまった。
でもあんな状態のまゆまゆを放っておけるはずがないやんか。まずは戻ってまゆまゆを探さんと。
「私も確認したい事があります。城の裏口から行きましょう!」
「その必要はありません。団長。」
うちらの目の前に突然さっきと同じ様な被り物したやつらが大勢待ち構えていた。うちらに気づかれんように先回りしたって事なんか!?
「お前たちの目的は何だ!なぜ私とサイジョウ殿を狙う!?それに先程私を襲った時の剣筋・・・お前、ギャレスか・・・?」
「そ、そんな!ギャレスさんがそんな事するはずは・・・!」
「・・・物事には順序ってものがあるんですよ。」
被り物の男は肯定も否定もせずにそういった。嘘や・・・ギャレスさんがライーザさんを襲うなんて・・・
・・・なんや?何か来るっ!
「ライーザさん!危ない!!」
何か攻撃の気配を感じてとっさにライーザさんを突き飛ばす形で避けた。
ピシィッ!!
「!?これは鞭?だれやあんた!」
「まだ始末出来ていないのかしら・・・じゃなくて出来ていないのか?あの方のご命令だ!さっさとしろ!」
またも被り物を被っている、女の人?あの喋り方に鞭・・・ひょっとして・・・
「なぁ!あんた杏奈ちゃんやないか!?なんでこんな事するん!?」
「わたく・・私はそんな人間では無い!あの方から話さない様に仰せつかっている!おとなしくここで眠って貰いますわ、じゃなくて眠って貰う![ポイズンウイップ]![パラライズウイップ]!」
ピシィ!ピシィッ!
被り物女はそう言いながら鞭の攻撃をしかけてきた。話さないようにってもろに話とるやんけ・・・それにこのスキル。やっぱり間違いあらへん。なんで杏奈ちゃんが・・・
「あの方もあんな心の壊れた女捨て置けばいいものを・・・王女も最近見当たらないし・・・ブツブツ・・・あー!イライラしますわ!」
心の壊れた?それって・・・
キィン!ギン!ザシュ!
「はあっ!せいっ!ヴァルハート王国騎士団長ライーザ・キューラックをなめるなよ!我が剣の錆になりたいやつから前に出ろ!」
向こうではライーザさんが被り物男たちと乱戦になっていた。さすがはライーザさんや。1対多数でもまったく引けを取ってない。
「やはり強いな。お前ら!まともに当たっては勝ち目はない!それに騒ぎが大きくなってもまずい。町の外まで追い込め!」
被り物男は部下にそう指示を出してうちらは物量によって徐々に町の外まで追い出されていった。どんどん城から遠くなっていく。まずいで・・・まゆまゆを何とか探さんとならないのに・・・
「くっ・・・!こいつらチョロチョロと!」
敵はうちとライーザさん相手に正面からは厳しいと判断したのかヒット&アウェイの様に一撃入れては下がり後方から魔法も飛ばしてきた。この飛んでくる魔法がやっかいやな。
「ようやく町の外まで追い出せたな。あの五月蠅いのは・・・よし、来ていないな。お前たち、囲んで一斉にやるぞ!ライーザ団長、覚悟!!」
「チッ・・・!」
「嘘やろ・・・まゆまゆっ!」
「『熱く迸る火の精霊よ。我に従い炎と化したまえ。我が標的を焼き穿て!<<フレイムランス>>』!」
ゴバアァ!
「!?お前たち!下がれ!!」
「『清らかなる水の精霊よ。彼の者達に戸惑いの静寂を。<<アクアミスト>>』」
「なんや!?霧?」
囲まれてここまでかと思った時、突如炎の矢、フレイムランスが飛んできてその後あたりを霧が覆って視界を遮られた。
「ライーザ!カオリちゃん!大丈夫!?」
「メーシー!」
「せんせ!?どうしてここに!?って言うかあいつらなんなん!?」
うちらを寸での所で助けてくれたのは王国で研究者をしててエミリア王女様の先生でうちの投げナイフの師匠でもあるダークエルフのメーシーせんせだった。
「話は後!すぐに追手が来る!まずは距離を取ろう!」
「で、でも!」
「いいから!早く!ここで二人が倒れたらこの国は終わりなんだ!」
「サイジョウ殿。ここはメーシーの言う事に従いましょう。それに・・・いえ、とにかく一旦王都から離れましょう。」
「わ、わかったわ・・・」
うちらはその場を離れ草原まで逃げてきた。岩場の様な所がある。少しだけ休ませてや。
「ふぅ。ひとまずは巻いたかな。でも油断は出来ないけど。」
「メーシー、そろそろどういう事か説明して貰おうか。被り物を被ったやつらは何だ?あの中には何人か手練れがいた。騎士団の隊長クラスだ。それにリーダーらしき男は・・・」
「そうや!あの鞭使いの女、あれ杏奈ちゃんやろ!?なんでうちらが殺されなあかんねん!?」
「多分というか推測の話になるけどいいかな?」
うちらが頷くとメーシーせんせは難しそうな顔をしながら話し始めた。
「半月程前に私たちヴァルハート王国と東の大国ユニバル帝国が同盟を結んだのは知ってるよね?」
「ああ。騎士団長の私も寝耳に水の話で驚いた。よりによって帝国などと・・・!」
そう。うちらがビシエ遺跡で外敵に襲われボロボロの状態で撤退した時から半月後ぐらいに突然国王、なんて名前やっけ?あのオッサン。ああ、そうそう。ガノン・M・ヴァルハートとかいったな。
そいつが「本日を以て我が国と帝国は同盟国となった。」とかいって帝国軍がヴァルハートに駐屯するようになったんや。あいつらうちら勇者にはそれなりの態度取るんやけどヴァルハートの騎士団にはなぜか上から目線で感じ悪いんよ。
「その混合軍のヴァルハート側の責任者に神宮寺がなったんよな?総帥なんて大層な名前つけて。でその右腕に加瀬と。」
うちにもなんとか隊長になれみたいな事言われたけどまゆまゆの事も心配やったから断った。あいつら領土を広げるために他の小さい国に戦争しかけて回ってるみたいでそんなん受けたらまゆまゆの側にいられんし。
「そうなったいきさつもそうだけど騎士団長のライーザも知らないうちにそんな大事が決まったってのがきな臭い。私は王女様からの密命でその辺りを探ってたんだ。私は研究者で軍属じゃないし。」
「そうなのか。最近王女様やメーシーを見かけないと思ったら・・・で、なにかわかったのか?」
「とりあえず帝国の狙いはおおよそだけど・・・!?危ない!<<アースウォール>>!」
ガンガンガン! バリィン!
突然上空から矢が降ってきた。メーシーせんせの防御魔法で防げたけど詠唱短縮のせいかすぐに割れてしまった。
「もう追手が!?さすがに君の所の副団長は優秀だね!」
「!?・・・やはりあれはギャレスだったか。でもなぜ!・・・ッチ!」
ブオン!
ギィン!
ほとんど気配のなかった攻撃をライーザさんがなんとか防ぐと気配の濃くなった被り物の男が立っていた。
「今のも防がれますか。本当に手強い。」
「ギャレスか!お前何故こんな事をしている!?騎士団としての誇りを忘れたのか!?」
「・・・またあの女に来られても面倒だ。・・・かかれ。」
被り物を被った男たちが一斉に襲いかかってきた。うちも本気で相手するしかないんか!?
「ここは私にまかせて!ライーザとカオリちゃんは逃げて!」
「そんな事出来る訳がない!それに相手がギャレスだとすれば私以外では相手に出来ない!」
「うちもやるで!せんせを見捨てられるわけないやん!」
そうや!もう二度と仲間を失う事なんて出来ない!須藤の時みたいなんはもうたくさんや!
「私は大丈夫!とっておきの技があるんだ!ここで皆がやられちゃったら本当に終わりだよ!」
「本当に大丈夫なんだな!?」
「バッチリだよ!」
ライーザさんの問いにせんせがバチコンウインクする。・・・けどなんだかすごく不安になった。
「私が一瞬敵を引きつけるからその隙に!後はもう大森林、獣人たちになんとか保護してもらうしかない!」
「獣人か・・・賭けになるな。」
「せんせ!必ずまた会おうね!もっと色々教えて欲しい事いっぱいあるんやから!!」
せんせはニッコリ笑うと魔法の詠唱をしだした。
「『熱く迸る火の精霊よ。我に従い無数の炎と化したまえ。その火球によりて我が標的達を焼き、焦がし、そして爆ぜよ!<<チェインエクスプロージョン>>』」
チュドドドドドドドン!!!
ぐわあ!
火球に触れるな!爆発するぞ!
せんせの放った魔法が被り物の男たちに向かって飛んでいく。火球に触れた男たちは次々に爆発の連鎖に巻き込まれているようやな。
「早く!走って!」
「行こう!サイジョウ殿!」
「う、うん!それと香織でいいからね!」
うちらは大森林に向けて全速力で走った。せんせが言った獣人に助けを請う為に。
「二人とも。後を、この国を頼んだよ。」
メーシーの決死の魔法から逃れた男は被り物を取りながら少し離れた後方から眺めていた。
「あっしからも頼みますぜ。姉御。」
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