第47話 子犬→転移魔法
「あたちの名前はスララ!スララ・ララ!あなたがあたちの新しいご主人様なのです!」
うん。ご主人?こいつは何を言っているんだ?
「おい、質問にちゃんと答えろ。それにご主人って何だよ。俺はリオウの敵とつるむつもりは無い。」
「あい。リオウと言うのはご主人の中にいる契約者、ドラゴンの事なのですね?あたちはドラゴンの敵では無くなりまちた!だから次はあなたがご主人様なのです!」
「ギンさんは私のご主人だ!ん?少し違うか・・・とにかく嫁は私だ!」
違うし。というかリオウの存在も解っているのか。敵では無くなったという事は元は敵だったという事だ。それに次、と言うのは・・・
「どうも要領を得ないな。もう少しわかりやすく説明しろ。」
「あい。えーっと、あたちは元ご主人に生み出された聖獣なのです。ドラゴンの、リオウさんの力の封印を守護する為に。」
聖獣はリオウの言う「やつら」が使役していると言っていたからそれはわかる。
リオウの「時」の力の封印を守護する、門番の役割をさせていた。だがなぜ元なんだ?主人が主従関係を解消したと言う事なんだろうか。
「契約の解除みたいなもんがあったのか?」
「あたちが新ご主人に負けた時に身体強化やら魔力供給が切れて元の姿に戻されたのです。もし切れなければ時間を経てまた再臨したのです!でもここでご主人になって貰えないとあたちは消えちゃうのです・・・」
またあれが出て来るのか・・・それはそれで嫌だな。で契約しなければ死ぬと。
だが、勝手に生み出して力の守護を命じ負けたからと言って即お払い箱とはな。
「勝手に異世界に召喚されて弱いからと切り捨てられる、どっかの元勇者みたいだな。お前。」
(境遇としては銀次に近いものがあるかもしれぬな。)
「ギンさん・・・なんとか、ならないかな・・・何かギンさんに不都合があったら私が責任を取るから・・・」
ふてくされるように言った俺の言葉にハビナが心苦しいような顔をして言及してきた。
うーん・・・敵の子飼いの犬だぞ?隠している事もあるようだし。
「スララと言ったか。お前は嘘をついたな?お前の本当の名前はなんだ?なぜ俺の竜眼で名前が見えない?それともう一度言うがやつらの情報を教えろ。嘘だと判断したらお前はここで消える事になる。」
俺の竜眼で見てもこいつのステータスは視えるが名前は????となっている。なぜかはわからないがこいつは偽名を使っている可能性が高い。
「う、嘘ではないのです!あたちの本当の名前は・・・消されまちた。だからあたちはスララなのです!元ご主人の情報も覚えてないのです。多分消されまちた。あまり良い思い出は無かった気がするです・・・」
「・・・・」
判断に迷うな。名前を消された?確かリオウは真名を奪われたと言っていたが・・・リオウを竜眼で視る事が出来れば同じかどうか解るんだけどな・・・
「あ!でも覚えてる事があるのです!窓!たくさんの窓がある場所にあたちもいた事があるのです!」
窓?なんだ?どこかでそんな光景を見た様な気が・・・
(どうするのだ?我は銀次に判断をゆだねる。個人的には五分五分だが。)
五分五分。敵の犬か敵に裏切られた犬・・・か。
「・・・わかった。契約をする。」
「ギンさん!ありがとう!良かったね!スララちゃん!」
「あい!」
「ギンジさん。僕は獣人の勘なんて言ったけど本当に良かったのか?」
「あら~。ギンジ君は心が広いのね~。」
「勘違いするなよ。俺は俺や俺の仲間を裏切ったやつには容赦しない。どこまでも追って逆襲してやる。」
「あい・・・」
「逆に俺は絶対に裏切らない。お前が弱くても、誰に負けても俺は最後までお前と共に歩もう。お前が俺を信じるなら。」
「あい!」
「行くぞ。[
俺は魔力剣で手首を切り流れた血を聖獣、スララに飲ませた。
「これが・・・ハビナちゃんにも施した契約・・・」
契約完了後スララはぐーっと伸びをした。ホントに子犬みたいだ。
「あわわ!急に力がもりもり出てきたのです!」
うまくいった様だな。
????
聖獣
レベル 23(隷属)
物攻 300
魔攻 370
防 180
敏 160
スキル ハウリング 竜言語魔法(火・水・時)
称号 ゲートキーパー 力の器 隷属者
相変わらず名前の部分は視えないが・・・おや?ハビナと違って全てのステータスが2倍になっている訳ではないようだ。敏あたりは変わってないし。だが戦力的にはかなりのものだと思う。見た目は子犬なんだけどな。
・・・!?ちょっと待て!なんだこれ!?
「リオウ!こいつのスキル欄に竜言語魔法とあるんだが・・・」
(ほう。一応理屈を知って魔力量次第では使えてもおかしくはないが。我の時の力に触れ続けていた事によるものかも知れぬな。)
そうなのか・・・だが俺のスキル欄には載ってないぞ。そもそも魔法についてスキル欄に載っている奴を視た事がない。
「ご主人様!ありがとうなのです!これからはご主人様の為に精一杯頑張りますなのです!」
スララはまたも目に涙をいっぱいに浮かべて頭を下げた。まぁとりあえずいいか。
「ああ、頼むぞ。お手。」
「あい!」
シュバ!
「おかわり。」
「あい!」
シュババ!
うん。犬だな。
「スララちゃんカワイイー!」
「クソッ!もふもふが抑えきれない!」
ガジュージのキャラがぶれているような気がするが大丈夫なのか?
「ホントかわいいわ~。あら~?・・・なんですって!?ギンジ君!ちょっといいかしら?」
ハビナとガジュージと一緒にスララを愛でていたミズホが急に血相を変えて近くにやってききた。
「どうした?何かあったのか?」
「大ありよ~!鳥からの連絡があってレオンちゃんの領地に人間が二人入り込んだらしいわ。」
「何!?父上の所に人間が!?」
「そうなのか。何か問題でもあるのか?人間二人くらいお前たちならなんとでもなるだろ。」
はっきりいって獣人のスペックは人間より高い。めったな事が無い限りやる事はあってもやられるなんて事はほとんどないはずだ。しかもよりによってレオンの所とはな。その人間も運が悪い。
それにしてもミズホの鳥は便利だな。俺にも連絡用の鳥が欲しい。
「問題あるのよ~!その人間ってのがなんだかボロボロで逃げてきた感じみたいなんだけどその内一人が自分は勇者だって言ったんですって!」
「なんだと!?勇者、そう言ったのか!?」
「ええ。確かにそう言ったみたい。」
「勇者・・・!守るべきギンさんを裏切り殺そうとした!絶対に許さん!」
「ご主人様の敵なのですか?だったらあたちにとっても敵なのです!ワンワン!」
「僕は勇者の事は良く知らないがギンジさん以外の人間を信用する気は今の所は無いな。」
勇者だって!?俺が生きているのをどこからか知って始末に来たか・・・だがボロボロで逃げてきたらしいが・・・ちゃんと確認する必要があるな。
「わかった。すぐに戻ろう。ミズホ、ピーちゃんとキューちゃんを呼んで・・・」
(まて、銀次。以前言ったであろう。転移の竜言語魔法が「時」の力が戻れば使えると。)
そうか・・・リオウがビシエ遺跡に設置したと言っていた魔法陣が「時」の力を利用したものだと言っていたな。
「そうだったな。リオウ、頼む。転移の竜言語魔法を教えてくれ。」
(うむ。だが一度行った事のある場所へしか行けぬぞ。では転移の竜言語魔法、それは・・・)
「よし、わかった。皆、こっちへ集まってくれ。これからレオン邸に転移で飛ぶ。」
「転移だって!?伝説でしか聞いた事がないぞ。それもドラゴンの・・・ギンジさんの力か・・・」
ガジュージたちも驚いているようだ。やはり転移の魔法は一般的ではない様だな。
「そういう事だ。じゃあ行くぞ。『
シュゥゥゥ
ゥゥゥゥン
転移の竜言語魔法を使った俺たちは一瞬でレオン邸前の広場に転移した。
これは便利だ。ん、でも魔力の消費がなかなかあるようだな。
「わ!私の家だ・・・!あそこから一瞬で・・・!」
「あら~。ピーちゃんたちの出番が減っちゃうわね~。」
「言葉もないな・・・」
「さすがご主人様なのです!ワンワン!」
「理屈と魔力量さえあればスララも使う事が出来るみたいだぞ。それに俺はピーちゃんに乗って移動する方が好きだ。」
転移は便利は便利だがピーちゃんに乗せて貰ったあの空の気持ちよさは別格だからな。
レオン邸の前には難しい顔をしたレオンが待っていた。が俺たちが急に現れた事に気づいて目を丸くしながら近づいてきた。
「ギ、ギンジ殿!?それにお前たち・・・先程少し前に鳥を飛ばしたというのに・・・一体どこから来たのだ!?」
「父上!ただいま戻りました!森の異変、無事に収めて参りました!」
「そうか!ご苦労だったな!流石ギンジ殿だ!してその頭の上の犬は何だ?」
スララめ。またいつのまに頭の上に・・・
「スララ!降りろ!とりあえず説明は後だレオン。人間が入り込んだらしいな。」
「あ、ああ!一応捕えてはあるが・・・つれて来るか?」
俺が頼むと言うとレオンは部下に命じて屋敷から縄で縛られた二人の人間を連れてきた。あれは・・・まさか、あの二人が・・・
「暴れる意思と体力は無いようだが一応縛ってある。どうだ?ギンジ殿。一人はギンジ殿と同じく勇者と名乗っているのだが・・・」
「はぁ、はぁ、お、押さんでええって・・・自分で歩けるわ・・・」
「ぐっ・・・!夜襲だったとは言え私とした事が・・・」
「縄を解いてやってくれ。一応知り合いだ。何かあれば俺が始末する。」
「始末ってあんた、随分やない・・・か・・・・え?あんた・・す、須藤か!?」
「・・・!?ギンジ殿!?生きて!生きていたのですか!?」
「ああ、生きていたさ。西城、ライーザさん。」
連れてこられたのは俺と同じ世界からこの世界に召喚された同期の西城香織、それと俺たちを召喚した張本人、いや、張本国ヴァルハート王国騎士団団長のライーザ・キューラックだった。
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