第45話 助太刀

突如上空から黒い羽が三頭の聖獣ケルベロスに降り注ぎダメージを与えている。


脊黒羽?確かそんなスキルをどこかで見た気が・・・





「じゃ~ん!ミズホお姉さんの登場ですよ~!すごい魔獣ね。みんな大丈夫?」





「ッ!ミズホか!」





そうだ。脊黒羽というスキルはミズホのステータスを見た時に記載してあったものだ。


だがミズホはサルパと一緒に戻りここへ来るのは夕方以降だと言っていたはずだが。





「み、ミズホさん・・・!」





「ミズホ様!?どうしてここに!?」





「あら~。何かあったら鳥が知らせてくれるって言ったじゃない?鳥たちが凄い魔力を感じたって教えてくれたから心配になって急いで飛んできたのよ。久しぶりに全力で飛んだから疲れちゃったわ~。」





ミズホは配下の鳥たちからの報告を聞いて駆けつけてくれたって事か。ありがたい。


これでガジュージを援護して貰えれば何とかなりそうだ。





「助かる!ガジュージの援護に回ってくれ!こいつらは3頭一度に倒さないと復活してしまう様だ!」





「わかったわ。さ、ガジュージ君。一度回復魔法で回復させておきなさい。その間はまかせてね。」





「すみません・・・すぐに戻ってきます!」





ガジュージは回復させるために一度下がるようだ。





「さ~て。鴇族の大鎌、受けて見なさい。おっきいワンちゃん?」





アオオオオオオン!!





キィィィィィン





ケルベロスはまたも[ハウリング]を使って集中力を乱してきた。





「・・・五月蠅いわね。このせいでガジュージ君はなかなかスキルを使えなかったわけね。でもお姉さんには効かないわ!」





ブオン!





「ミズホさん!?」





ケルベロスの巨大な掌による横なぎにミズホが直撃した、かに見えた。





「光の屈折と大気の流れ、そこに存在すれど存在しないもの。目に映るものが全てだと思わない事ね![陽炎鎌かげろうがま]!」





ズシャァ!!





ア゛オオオ゛オ゛ン!!





ケルベロスの攻撃が直撃したと思いきやそこにいたミズホはまるで陽炎の様にゆらりと掻き消え、次の瞬間にはケルベロスの顔の目の前に現れその大鎌を振るった。


あれが陽炎鎌か。俺の目にもいつ移動したのかわからなかったぞ。超スピード等のたぐいではなく別の方法での残像だろう。消えるまでは気配があった。まさか質量のある・・・





「さすがミズホさん!久しぶりに見たよ、陽炎鎌。全く存在が掴めないな。」





ガジュージも戦線に復帰できたようだ。





「あら~。これ使うとなかなか疲れるのよ~。脊黒羽も使っちゃったしね~。」





ケルベロスはまたもミズホの攻撃から復活してきているようだ。


俺も再度頭を潰して時間を稼いだ所だがどういう事だ?明らかにケルベロスの攻撃、速度、防御が落ちている様に感じるな?


だがこのまま個別に闘っていても埒が明かない。よし。





「皆!この隙に少し集まってくれ!」





俺はハビナ、ガジュージ、ミズホに集まってもらった。わずかな時間だが作戦会議だ。





「ギンさん、どうした!?こいつやっぱり何度攻撃しても復活してくる!このままじゃ厳しいかもしれない。」





「そうだな。少しだけ待っていてくれ。ちょっと確認したい事がある。」





俺は竜眼でケルベロスのステータスを確認してみる。





????





聖獣 





レベル 70





物攻 300(↓)





魔攻 250(↓)





防  125(↓)





敏   80(↓)








スキル、称号は省いたがやはりな。ステータスが著しく低下している。約半分だ。しかも(↓)と付いている。どういう事だ?





「やつのステータスが半分になっている。気づいたか?」





「うん。確かに・・・さっきより全然やりやすくなっている。スキルそのものはやっかいはやっかいだが。」





ハビナもそう感じていたらしい。





「あら~。それは私の脊黒羽せぐろばねの効果じゃないかしら?私のこの白い羽を黒く変化させて放つ脊黒羽は相手のステータスを下げる特性があるのよ~。」





そうなのか。聖獣相手にも半減させるというのか。こいつも中々にチートだな。





「そんな効果が・・・知らなかった。」





「あら~。それはそうよ~。誰にも言ってなかったから。自分の秘密をペラペラ話したりしないでしょ?それにさっきも言ったけどこれ結構魔力使うのよ~。」





ガジュージも知らなかったのか。という事は五大獣老と言えども皆知っている訳ではなさそうだな。まぁミズホの言う事も最もだ。俺の竜眼も万能じゃない、中身までは解らないのだがそれでも相手を知れるというのはアドバンテージがデカい。





「ミズホの能力だったのか。助かる。[差し伸べる手マジックギフト]・・・これで魔力は回復出来たか?」





「あら~?あら~。ギンジ君、凄いわね~。相手に魔力を送るなんて。お姉さんこれでもっと頑張っちゃう!それにハビナちゃん何だか凄い強くなってないかしら~?どうしたの~?」





「ああ、頼むぞ。ハビナについては後で話す。それであいつのステータスが下がっている今がチャンスだ。一斉攻撃をしかけて三つの頭の同時撃破を狙おうと思う。そうすればあいつは復活せずに倒せ、大森林の異変も止まるはずだ。」





「そうだな。今が好機という事か。」





「うん。わかった!」





「そのために来たんだしね~。頑張りましょ~。」





皆了承してくれたようだ。





「受け持ちはさっきと同じでいいな?ガジュージとミズホは左、俺が真ん中、ハビナが右を叩こう。各自高威力スキルで撃破してくれ。じゃあ行くぞ!」





「「「わかった!(わ~!)」」」





各自倒すべき相手に向かって走り出した。俺は・・・まぁステータス変動は使わなくていいだろう。やり過ぎて周囲に被害が出ても良くないしな。


あ、でも敵を一瞬ひるませるってのはやっておいた方がいいか。





「これでも喰らってろ!<<ファイヤーボール>>×6!・・・よし。皆!今だ!」





アオオォォオン!! グルルルル!! ガアアアアア!!








「鰐族族長ガジュージ参る![鰐噛ダイルバイト・転]!」 ブシュシュシュシュ!!





ガジュージの放った槍が相手に突き刺さりその槍が高速回転してケルベロスを抉る。





「あら~ガジュージ君気合十分ね!じゃ~私も[大車輪]!」 ザザザザザン!!





今度はミズホが鎌を大きく体操選手のバトンの様に振り回し弱っているケルベロスを切り裂いた。





アオオォォォン・・・








「ギンさんのおかげで私は前よりも強くなった!だがまだ上を目指す!ギンさんの嫁として!はあああぁあぁ![疾撃流舞]!」 ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュオォ!!





ハビナも先程覚えた疾激流舞で相手を切り刻んでいく。





グルルルルゥ・・・








「みんなやるな!俺も一つ見せるか!初めて使うが大丈夫だろう。おおおお!紅魔爆掌こうまばくしょう!」 ドン!! キュイィィン・・・ドォン!!





ガアアアァァァ・・・





よし。上手く言ったぞ。紅魔爆掌なんて自分でも少し恥ずかしいネーミングを付けてしまったが要は俺の赤い魔力を手に集めて相手を殴りその魔力を増幅して内部から破壊するって感じだ。


以前俺の赤い魔力が暴走して木偶や天井を消滅させた事を思い出したので使えるかと思っていたのだ。でも直接魔力をブチ込むのは思った以上に魔力を消費するな。


使い勝手は悪そうだ。

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