第44話 門番




「おい。リオウ。なんでそんな重要なものがリオウが封印されていた所と同じ場所に普通に置いてあるんだよ。」





俺はてっきりこの世界をくまなく探して・・・みたいに考えていたのに。





(むう。我にも解らぬ。封印されていた間そんな気配は全くなかったのだが・・・)





「あれじゃないか!?灯台元暗し的な!」





えぇ・・・ハビナはそう言うがほんとにそうだとしたら確かにそういった効果はあるかもな。森の異変なんてなければ絶対にここは探さないぞ。宝箱の二重底とは違うと思う。





「いったい何を驚いているんだ?僕にも説明してくれ。」





そうか。ガジュージはリオウの声は聞こえないんだった。





「ああ、俺とリオウの探していた・・・そうだな、リオウの力の源の一つみたいなものだ。」





「なんだって!?これがドラゴンの・・・!うわっ!熱っ!何だ!?」





ガジュージが手にしていた水晶玉のような物体が突如強く発光しだした。ガジュージは驚いて手を放してしまい水晶玉は湖の中に再度落ちて行った。





「ガジュージ君!大丈夫か?」





「ハビナちゃん、突然あれが熱くなって・・・すまない。もう一度取って来るからもうしばらく待っていてくれ。」





ガジュージがそう言いながらもう一度湖へ入ろうとした瞬間。








ゴッ!!!








湖から強い光と共に赤い魔力の柱が天に向けて立ち上った。





「な、なんだ!?ガジュージ!湖から離れろ!」





「次から次へと!今度は何が起きた!」








アオオオォォオオン!! グルルルルルル!! ガアアアアアアアア!!








光と魔力の柱が収まったかと思いきや目の前には巨大な三つ首の魔獣が大きな咆哮と共に現れていた。





(こ、こいつは!)





「で、デカい・・・!三つの頭を持った犬の魔獣・・・!」





「ハビナちゃん!下がって!この力・・・危険だ!」





「いやだ!私もギンさんのおかげで少しは強くなった!ちょうど3対3だ!私も戦うぞ!」





「リオウ!あれはなんだ!?元はお前のものだろう!?倒してもいいのか!?」





(あれは魔獣ではない。やつらの使役する、聖獣とでも言おうか。異変を引き起こした原因はこいつだな。倒さねばなるまいがかなり強力だぞ。)





やつらだって?リオウが復讐すると言っていた連中の使い魔みたいなもんか。


確かに相当なプレッシャーだが・・・








????





聖獣 





レベル 70





物攻 600





魔攻 500





防  250





敏  160





スキル ハウリング 地獄の業火 ソニックスライサー





称号  ゲートキーパー 








名前の部分がノイズの様にちらついて確認出来ない。それに魔獣には無かったレベル、スキル、称号が記載されている。やはり普通の魔獣じゃないようだな。





「ハビナ!ガジュージ!こいつをぶっ倒しても問題ないらしい!物理魔法共に攻撃力が異常に高い!そこまで素早くなさそうだが一撃でも貰ったら致命傷になるぞ!」





攻撃、魔法共に喰らったら俺以外は防御をぶち抜かれるだろう。





「わかった!僕たちは左右の頭を何とかする!ギンジさんは中央を頼む!」





「パワーアップした獅子の力、受けて見ろ!」





「ああ、二人とも気をつけろよ!」





3人がそれぞれの相手に向かって散開した。


このケルベロスの様な聖獣のスキルにはハウリング 地獄の業火 ソニックスライサーと3つのスキルが記載されていたな。


地獄の業火 ソニックスライサーは合っているかは別として何となく予想は出来る。だがハウリングってのが難しい。


遠吠えと言う意味もあるし音響関係のハウリングかもしれない。効果も予想しづらいため注意が必要だろう。





ガルルルルル!!





ゴバァ!!





俺と対峙している三つの頭の真ん中がかなりの大きさの火球を吐いて攻撃してきた。


こいつが[地獄の業火]とか言うスキルだな。





「森で火は厳禁だぞ!『激流爆翔げきりゅうばくしょう』!」





先ほどは俺が火を使っていたわけだがそれはガジュージのサポートがあったからだ。





ドドドンッ!!





「チッ・・・!相殺か!もう少し魔力を込めるべきだったな。」





三頭聖獣、呼びにくいからケルベロスとするか。ケルベロスの放ってきた大火球に水の竜言語魔法をぶつけた。


リオウはこの高水圧の竜が立ち昇るような水の竜言語魔法がなかなかのお気に入りだと言っていたな。





ゴバァ!!





ケルベロスは連続で再度、[地獄の業火]を放ってきた。この威力でこの連射性か。確かにやっかいだ。





「しつこいんだよ!少し本気で行くぞ!『殲滅する光アトミックレイ』!!」





フォン





シュゴオオオオオ!!ガアアアアアァァァ!!





ガルルルル・・・





俺は大火球ごと光の竜言語魔法でケルベロスの真ん中頭をぶち抜いた。竜言語魔法の中でも俺はこの『殲滅する光アトミックレイ』が気に入っている。


範囲、威力の調整がしやすく絞れば貫通性のあるレーザーみたいにも出来るし拡散すれば範囲殲滅も出来る。範囲殲滅なんてやった事ないけどな。


それに銀色の竜をかたどった光線は綺麗だ。





「よし。じゃあまずガジュージの所に応援に行くとするかな。」





「さっすがギンさん!私も負けていられないな!くっ・・・!さっきから風刃がうっとおしい!・・・!?ギンさん!!後ろだ!!」





ハビナが急に叫んだ。なんだ?・・・ッッ!?





ガルルルル!!!





ゴバァ!!





「確かに消し飛ばしたはずだ!・・・ぐおっ!・・・ハァッ!!」





竜言語魔法で消滅させたと思っていた真ん中ケルベロスが復活し再々度[地獄の業火]を吐いてきた。


俺は急遽、手に魔力剣を形成し火球を受け止め足に魔力を強く纏わせ火球を上空へ蹴り上げた。


まさかゲームでよくある本体は右とか同時撃破じゃないと無限に復活するとかじゃないだろうな!?








「はぁ、はぁ、クソ!攻撃が重すぎて避ける事しか出来ない!それにこの耳障りな音で集中力が乱れる!」





ガジュージはかなり苦戦しているようだ。ガジュージ側に意識を向けるとキィィィィィンと甲高い音がケルベロスの頭から発せられている。


あれが[ハウリング]か。音響の方だったか。


本来ハウリングはマイクに向かって出した声がスピーカーから出てその音が再度マイクに入りループし共鳴する事によってかなり耳障りな音が出る理屈・・・だったはず。正確には違うかもしれないがこんな感じだろう。


それを一体でやるという事は他の頭がスピーカーの役目をしたりしているのだろうか。








「やあぁっ![ビーストクロー]!なかなかタフだな!・・・でも今閃いたぞ!私にも父上の血が流れている!はあぁぁぁぁ![疾撃流舞しつげきりゅうぶ]!」





フォン フォン 





あれは・・・ハビナの両手の爪に風の刃が纏った。やはりレオンの炎撃流舞と同様にハビナは風の連撃スキルを覚えたか。





「行くぞ!!でやああああ!!!」





ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュオォ!!





ザンザンザクザクザク!!





ガアアアアア・・・





ハビナの疾撃流舞がクリティカルヒットしケルベロスの頭の一つは倒れた。やはり[血の契約]によって強化されたハビナの攻撃力、速さはかなりのものだな。


だが・・・





「や、やった!だがもう油断しないぞ!・・・ッチ!こちらもギンさんの方と同じか!」





ガアアアアアア!!





ビュンビュンビュン!








やはり・・・倒したと思った頭が淡く赤い光がポウっと光ったかと思うと俺の方と同様に復活してソニックスライサーを飛ばしてきた。





「ギンさん!どうすればいい!?」





「ギンジさん!悔しいがこちらもあまり持たないかもしれない!」





どうする?まだ倒していないガジュージ側を潰してみるか?だがそうすると少しの間ハビナが2頭相手をする事になる。さすがに2頭同時は厳しいだろう。





「リオウ!どうすればあいつを倒せる!」





(先程から魔力の流れを探っているのだが3つの頭に核が一つずつあるようだ。同時に破壊せねば他の核が修復してしまうようだな。)





同時撃破系か!クソ!俺の一番嫌いなタイプのボスだ。どうする?『殲滅する光』で焼き払うか?そうすれば倒せるだろうがこの辺りが湖を含めて使い物にならなくなるだろうな。獣人たちの為にも出来ればしたくないが・・・





ドカ!!





「ぐ・・!うわあっ!!クソ・・・!」





「ガジュージ!」





「ガジュージ君!しっかりしろ!」





ガジュージがケルベロスの掌で張り倒された。幸い爪で引き裂かれてはいないようだが・・・ガジュージの所がステータス的に厳しい。


[血の契約]を使うか?いや、攻撃が激しくそんな余裕はないだろう。





なにか策は無いか・・・








「[脊黒羽せぐろばね]!!」





ドドドドドドドド!!





アオオォォオン!! グルルルル!! ガアアアアア!!





突如ケルベロスに黒い羽が降り注いだ。かなり苦しがっているが・・・なんだ!?一体誰が・・・


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