第41話 一網打尽
「来い!ギンさんの、獣老の嫁として無様な姿は見せられん!」
シャアアアアア!!
キン!キン!ギン!
ザク!
「ちっ!普通のリュカンティスより速く重い!」
リュカンティスの爪の連撃を同じく手に装着した三刃の爪で応戦するハビナの頬から赤い鮮血がツーっと流れる。動きにはついていけているようだが。
「[ブーストダッシュ]!はっ!たぁ!喰らえ![ビーストクロー]!」
ザン!ドン!ブシュウ!
ギャウウン!
ブーストダッシュから横に薙ぐような爪の一撃、その勢いのまま回し蹴りを、最後に下からすくいあげるように風の爪スキルか。
流れるような連携が見事だ。俺と闘った時は単純なやつだと思っていたがこれがハビナ本来の戦い方なのかもしれないな。
レオンは炎撃流舞だったがハビナは風系の連撃スキルを覚えそうだ。
リュカンティスの下腹部から胸辺りにかけて三刃の爪痕が刻まれた。かなりのダメージを与えたようだがまだリュカンティスは戦意を喪失させていないみたいだな。
ガルルル・・・ガアッ!!
「まだ向かってくるか![ブーストダッシュ]!・・・これで終わりだ![ファングクラッシュ]!」
ザクン!
ハビナがブーストダッシュで相手の背後に回り込み両手の爪を交差するように相手の首を飛ばした。その際に相手の血飛沫がハビナの顔にピピッと付いたのをみて少し綺麗だと思ってしまった。
あれがファングクラッシュか。かなり強力そうだな。前回あえて受けなくて正解だったようだな。
「はぁ、はぁ、ふぅ。なんとかなったか・・・ギンさん~!見ててくれたか!?私もなかなかやるだ・・・ガハッ!!」
「ハビナ!」
「ハビナちゃん!?」
リュカンティスを倒したハビナが突然脇腹を貫かれ倒れた。
何だ!?何があった!?敵?どこからだ!?
(銀次。囲まれているようだ。20はいるぞ。)
何だと!チッ!
「ガジュージ!敵だ!囲まれているらしい!お前はハビナを頼む!回復魔法は使えるか!?」
「何だって!?気配は無かったのに・・・!回復は多少の心得がある!ハビナちゃん死なないでくれ!『清らかなる水の精霊よ。我に従い癒しの水泡にて彼の者の傷を復し癒したまえ。<<ツヴァイヒーリング>>』」
ふわぁ
ガジュージが詠唱をすると以前見たエミリア王女の回復魔法よりも強い癒しの力を感じハビナの貫かれた脇腹を塞いでいく。中級の回復魔法か。水の守り手と言うだけはある。
「ん・・・ガ、ガジュージ君・・・ごめん、油断してしまった・・父上にまた怒られ・・る・・な・・・」
「ハビナ!おい!しっかりしろ!」
「気を失ったようだ。傷は塞がったけど血が出過ぎている!ここままじゃまずい!一度戻らないと・・・」
「そうしたいのは山々なんだがな・・・!」
ゲヒヒヒヒヒャハハヒャハハ!!
グジュリグジュリ
俺たちの周りに二種類の魔獣が現れた。相当な数だ。リオウの言う通り20体近くいやがる。こいつらがハビナを!
アークゴブリン(蝕)
魔獣
物攻 140
魔攻 80
防 80
敏 140
ハンドレットローパー(蝕)
魔獣
物攻 250
魔攻 0
防 120
敏 80
以前ヴァルハートの遺跡で兵士スコットの命を奪ったゴブリンたちよりも一回り大きいゴブリンと、同じく遺跡で戦ったローパーよりも触手の数が段違いに多いローパーと思われる魔獣だが・・・
「こいつらもあのドス黒いオーラが溢れてやがる。これがリオウの封印が解けた弊害か!?」
(そうだろうな。濃い魔力に当てられ続けた結果変異してしまったのだろう。)
だから(蝕)か。濃すぎる魔力は逆に魔獣をも蝕むという事か。
見ていろよ。速攻で片付けてハビナを助けてみせる。
シュッ!!
ハンドレットローパーがハビナを抱えているガジュージに向けて触手を伸ばして攻撃してきた。恐らくハビナを貫いたのはローパーのこの触手だろう。かなりの物攻があるようだからな。
「遅いんだよ。」
ガシ!
!?
俺はハンドレットローパーの伸ばしてきた触手を掴みこちらに強引に引き寄せた。
「俺も油断してしまった。ハビナ、すまん。」
ブゥ・・ン ズバババババ!!!
ピギィイィィ・・・
「は、速い・・・!それに赤い魔力だって!?」
レオンと戦った時の様に剣状にした魔力を集めハンドレットローパーを細切れにしてやった。ガジュージは初見だったな。かなり驚いているようだが今はそんな状況じゃないぞ。
ギャッハァッ!!
錆びたノコギリの様な得物を持ったアークゴブリンがガジュージの背後から飛び出してきた。
「ガジュージ!後ろだ!」
「五大獣老を、ガジュージ・ネットを舐めるんじゃない![五槍撃]!はああああ!!」
ズドン!
ウギャアァァ・・・
ほう。槍の5連続攻撃かと思っていたが槍本体の周りに闘気の槍が4本付いて合計5本の槍が同時に相手を貫くショットガンタイプの様なスキルだったか。
ガジュージの見た目からして針の穴を通すような5連撃のイメージだが意外と荒々しい戦い方をするんだな。
「ギンジさん!あとはどうする!?1体ずつ潰していくかい?!」
俺とガジュージならそれも出来るが・・・ハビナの様態も気になる。出来ればまとめて倒したい所だ。
「ガジュージ、囲んでいる奴らを出来るだけ一か所に集める事は出来るか?」
「・・・近くは水場、それに周囲の森林の水から力を貸して貰えれば可能かな。ただそうなると僕は魔力切れで使い物にならなくなると思う。本来は川や海で使うスキルだからね。」
なんだ。そんな事は気にしなくていい。ガジュージのスキルでいうとダイタルウェイブって事だろうな。
「大丈夫だ。ダイタルウェイブだろ?魔力の問題は気にするな。ちなみにそのスキルはあいつらを囲んでおくことは出来るか?」
「なっ!なんでわかったんだ!?僕はこのスキルの事は昨日から話していないのに・・・まぁ今は置いておこう。しばらくの間は拘束出来るはずだ!」
「わかった!それで頼む!」
「まかせてくれ!」
ガジュージはそういうとハビナを抱えながら少し開けた場所へと移動した。
「来い!魔獣共!この獣老ガジュージと獣老レオンの娘ハビナを打ち倒してみるがいい!!」
ゲヒヒヒヒギャギャギャ!
グジュリグジュジュピギー!
ガジュージにつられるように濃い魔力によって蝕まれた魔獣がわらわら集まってきた。
うまく引き寄せられたようだ。
「集まったな!ギンジさん!後は頼む!さぁ、大森林に集う水たちよ、水の守り手たる獣老ガジュージが命ずる、全てを飲み込み敵を押し流せ![ダイタルウェイブ]!」
ドドドドドドドド!!
「これは・・・」
ガジュージが槍を高く上げスキルを使うとどこからともなく大量の水渦となってが押し寄せ魔獣を閉じ込め飲み込んだ。こりゃ派手なスキルだな。上級の精霊魔法のようだ。というか上級魔法じゃないのが不思議なくらいだが。
「ぐっ・・・!ギ、ギンジさん!もうすぐ渦が止まり水が流れ出すぞ!」
「ああ!大丈夫、期待以上だ!!」
俺はステータスに任せて高く飛び上がり下で渦に飲まれている魔獣たちを上空から捕えた。
「ハビナ、もう少し待っていろよ。行くぞ!『
ゴバアアアアア!!ガアアアアアアアアア!!!!
ギャアアアアアアア・・・・
ピギィイィイイイイ・・・・
ジュジュジュジュ!シュウウウウ・・・
本気では打たなかったがそれなりの魔力を込めた炎の竜言語魔法だ。本来大森林では使うとまずいが周りが強力な水というのがいい。
魔獣を焼き焦がしながらガジュージのダイタルウェイブで鎮火させていっている。ダイタルウェイブクラスの威力がなければ一瞬で蒸発させてしまうだろうな。
「ふぅ・・・よし。全部片付いたようだな。」
炎の竜がダイタルウェイブと相殺し消えると今までいた魔獣は跡形もなく消えていた。
消し炭になったのだろう。
「な、なんという威力・・・これがドラゴンの力か・・・あ、ぐっ・・・!はぁ、はぁ、魔力が・・・」
ガジュージがハビナを抱えながら力なく膝をつく。全魔力に近い魔力を使ってくれたのだろう。
「お疲れさん。お前のスキル、見事だった。ダイタルウェイブじゃなければ超大規模な山火事になってたぞ。[
「これは・・・!失われた魔力が!な、なんだ?気のせいか元より増えてる様な・・・?」
ガジュージに魔力を送った結果先程までフラフラだったのが見違えるように元気になったな。
「ありがとう。でもあそこまでギンジさんの力を見せられ、魔力を送るなんて芸当を見せられたら僕は・・・はぁ、もっと精進するとしよう。」
あとはハビナをどうするかだな・・・
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