第40話 (蝕)

獣人族の族長たちとの食事会の翌日、俺、ハビナ、ガジュージの3人で以前リオウが封印されていた湖へ向かう事にした。





「では父上行って参ります!父上の娘として、戦士として!」





「おう!ギンジ殿とガジュージよ。よろしく頼むぞ!」





「わかりました。レオンさん。朗報をお待ちください。」





「元々俺が原因だろうからな。なんとかしてみる。」





レオン邸の広場の前にはサルパの付き人であるハナちゃんとライドホークのピーちゃんが待っていてくれた。またピーちゃんに乗れるのか?だったら嬉しいが。





「お疲れ様でした。サルパ様、ギンジさん、いえ五大獣老になられたようですのでギンジ様とお呼びした方がよろしいですね。これから新しく発見されたという例の湖へ行かれるのですね?」





「俺の方はそのままでいい。様なんて呼ばれる程の人間じゃない。」





「それは・・・」





「ハナちゃんや、ただいまじゃ。そう言う事じゃな。ギンジ殿が良いと言っておるのじゃからそのままでもいいんじゃないかの?」





「わかりました。ありがとうございます。ギンジさん。」





「おお!ハナちゃん!久しぶりだな!ハナちゃんの言われた通りにしたら結婚できる事になったぞ!」





「わぁ!それは良かったね!ハビナちゃん!ね?私の言った通りでしょ?男の人は皆大きい胸が大好きなんだから!」





ハビナがハナちゃんに飛びついている。やっぱりハビナが言っていた友人とはハナちゃんだったか。





「だから俺は了承してないって言ってるだろ!それにハナちゃんも変な事教えるな!男だって皆が皆そうじゃないぞ!」





「えっ!?」





ハナちゃんは、嘘・・だろ・・・?みたいな顔している。何それ。





「ハ、ハビナちゃん!僕は・・・」





「じゃ、じゃあギンさんは大きい胸の女性は嫌いなのか!?わわわ、私の事は嫌いなのか!?」





えぇ・・・





あ、ガジュージが白目向いてるけど。あいつ奥手なんだな。





「そうじゃないが・・・はぁ。もういい、さっさといくぞ。またピーちゃんにお世話になっていいのか?」





ピーちゃんはピュイっと鳴いてお座りしている。相変わらずお利口さんだな。





「あら~、ピーちゃん。元気にしてた?サルパおじいちゃんに乱暴に扱われてない?」





ピュイ!ピュイ!





ミズホがピーちゃんを挨拶しながら撫でている。元々鳥族から借りているって話だったな。今のピュイ!ピュイ!は何の意味だろうか。





「ふ~ん。ならいいけど。ピーちゃんには体格にもよるけど頑張って4人、無理させたくないから本来は3人程で乗ってほしいわね。家に帰るハナちゃんとおじいちゃん、調査に向かう3人かぁ。もう一羽呼ぶ必要がありそうね。」





ピ――!!





キュイー!





ミズホが指笛を吹くとピーちゃんと同じくらいの大きさのライドホークがもう一羽広場に降りてきた。





「紹介するわ。キューちゃんよ。」





キュイ!





キューちゃんと呼ばれたライドホークはピシっと敬礼しているかのようにお座りしている。ピーちゃんはカワイイ系キューちゃんはしっかり者みたいな印象を受けるな。





「じゃあピーちゃんには操舵手のハナちゃんとギンジ君と・・・」





「私だ!」





ハビナが凄い勢いで挙手している。こいつの物好きにも困ったな。





「わかったわ。じゃあ残りはキューちゃんへ乗ってね~。」





「ガジュージよ。泣くでない。お主も五大獣老であろう。」





「・・・大丈夫です。」





うーん。俺が悪いみたいになってなきゃいいが。





「それじゃ行きましょ~。」





ピュイ~! キュイ~!





二人は一鳴きすると前回同様力強くはばたき大森林の上空へ飛び上がっていく。


極力揺れないようにしてくれているようでまた仰向けでピーちゃんの背中に寝転んだ。





「相変わらず空を飛ぶってのは気持ちがいいな。」





「ハビナちゃん。こういう時は「いや~ん!私高いところ怖い~!」って殿方に抱きつくのが自然かつ効果的だよ!」





「む!そうなのか!・・・ギンさん!いや~ん!私高いところぶべっ!」





「静かにしろ。揺れたらピーちゃんが困るだろう。」





「!?」





またハナちゃんがハビナにおかしな事を教えているようで寄ってきたハビナをチョップした。


ハナちゃんが、きかない・・だと・・・?みたいな顔してるけどハナちゃんのその情報はどこから来てるんだ?





そんなこんなで2時間弱で目的の場所近くまでついたようだ。楽しい時間はあっと言う間に過ぎてしまうな。








「到着~。じゃあ3人とも後は頼んだわよ~。何かあったら分かるように鳥たちに言っておくから。」





「ほっほっほ。ギンジ殿とガジュージの五大獣老が2人もいるんじゃ。めったな事はあるまいて。」





それもそうね。と言いながらミズホたちは一度帰って行った。夕方前には迎えに来てくれるそうだ。





「では湖まで向かうとしようか。ハビナちゃんは僕たちの後ろに控えていてくれ。」





「ガジュージ君!私も獣人の、獣老レオンの娘だ!心配してくれるのはありがたいがそれは失礼にあたるぞ!」





「そう、だね。すまなかった。頼りにしているよ。」





「それで、ここはどのあたりなんだ?」





「ピーちゃんたちの降りられる場所がここが一番近かったからね。湖まで少しだけ歩く事になる。」





ガジュージの案内に従って森を進んでいった。





それなりに歩いただろうか・・・・これは恐らく気のせいでは無いな。


明らかに先程と違い魔力と言うか瘴気の様なものが濃い。





(何も考えず銀次と契約してしまったからな。後に問題が起きぬようにして行くべきだったな。)





あの時は俺が色々せっぱつまってたからな。リオウの責任とは言い切れないだろう。





「これ程とは・・・すでに獣はほとんどいなそうだ。魔獣がいつ現れてもおかしくないくらいに森の一部が変異している。」





「私も大森林に住んでいて森が怖いと思う事ほとんどないと自負しているんだが・・・」





ガジュージもハビナも驚いているようだ。あ、そうだ。聞いておきたいと思っていたことがあるのを思い出したぞ。





「なぁ、ガジュージ。大森林では外敵って現れないのか?」





俺がここに至るまでになった直接の原因を作ったやつらだ。あいつらが現れなければ俺は裏切られることもなかった・・・そんな事はないか。勇人の感じからすれば遅かれ早かれ動きがあっただろう。





「外敵・・・と人間は言うのか。極まれに空間と割るように現れる気味の悪い魔獣の事だね?」





ふむ。獣人の中ではあれは魔獣と同じくくりなのか。ヴァルハートでは魔獣と外敵は違うようなニュアンスだったが。





「確かに普通の魔獣より手強いけど獣老、もしくはハビナちゃんクラスなら倒せると思う。」





「うん。あれ、外敵ってのが出ると父上も討伐に参加するけどまあまあだなとか言っていた気がする。」





レオンクラスだと余裕なのか。そう考えると今の俺なら相手できそうだな。あの人型外敵はどうか解らないが・・・あれは異常だった。





「そうなのか。あいつらの目的って一体・・・っ!?ハビナ!!」





外敵について話していると何者かがかなりのスピードでハビナから襲いかかってきた。


伏せるように喚起したかったが間に合わないと思いハビナごと地面に倒れこむ形で避ける事にした。なんとか躱せたようだ。





「きゃ!ギンさん急に・・・?意外と積極的なんだ///」





「ハビナちゃん!馬鹿言ってるんじゃない!敵襲だ!」





ガジュージはすでに戦闘態勢を取っている流石獣老と言ったところか。





「あれは!リュカンティス!?だがあの色は・・・!」





姿を現したリュカンティスと呼ばれた魔獣は俺の知ってる言葉でいえばライカンスロープ、つまりは人狼の様な姿をしていた。


だが形は人狼のそれだが体中からドス黒いオーラの様なものが立ち上っている。体中からオーラが溢れていて体を覆い目が赤く光っている事が解るのみだ。





リュカンティス(蝕)





魔獣








物攻 180





魔攻  0





防  150





敏  130








ステータスを確認してみるとなかなかの値を持っている。(蝕)ってなんだ?何かに蝕まれているって事か?おや?レベルがない?魔獣にはレベルの概念がないのか?





グルルルウルウウウ・・・ガアアアアア!!





リュカンティスは俺たち3人を品定めするように見回すとハビナに向かって一直線に突進してきた。魔獣の癖に戦力を計るか。





「ハビナ!行けるか!」





「うん!ギンさん!大丈夫!」





「ギンジさん!ハビナちゃんを危険な目に合わすわけには!」





「あいつが大丈夫と言ったんだ。ヤバそうなら必ず助ける。」





「しかし・・・!」





ハビナは戦士として戦うと言った。ならば見守る事も必要だろう。数値的にはハビナの方が有利だ。それにスキルもあるしな。

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