第36話 続・湯けむり乱舞

ハビナとしばらく押し問答としていてふとサルパがいない事に気が付いた。


さっきまでほっほっほ。なんて笑いながらこちらを見ていたはずだが・・・





「お前いい加減にしろ!レオンを見ていなくていいのか!?あとサルパがどこに行ったか知らないか?あいつがちゃんと説明してくれないと他の族長がきた時にこうなったら面倒だ。」





「うん。父上は強いから大丈夫だ!サルパ様?さっきまでいた気がするけど・・・あっ!あそこにいるのがそうではないか?」





ハビナの指さす方を見て見ると屋敷の入口からサルパが男女二人の獣人と一緒に入ってくるのが見えた。





「サルパ!こいつをどうにかしてくれ。あとそこの二人は誰なんだ?」





そう言うとサルパと一緒に来た獣人のうち槍を持った男の獣人が鋭い目つきでギロリと睨んできた。





「こいつがレオンさんを?賢人殿も嘘が上手い。」





「おぉ。ギンジ殿、すまんすまん。これハビナ嬢。他の族長も到着したでの。その辺にしておきなされ。レオンもどうにかせねばな。カジュージや、お主もまず話をちゃんと聞くことじゃ。」





カジュージと呼ばれた獣人は俺から視線を外しふんっとそっぽを向いて腕を組んでいる。恐らくは鰐の獣人だろう。口が大きく裂け牙もあるし皮膚の一部が鰐皮のようになっている。恒例のステータス確認といくか。





カジュージ・ネット





獣人 鰐族 男性





レベル 50





物攻 300





魔攻 200





防  200





敏  180





スキル 五槍撃 鰐噛(ローリング) ダイタルウェイブ





称号 鰐族族長 5大獣老 水の守り手





レオンと比べると物攻が少し低いが物攻魔攻防とバランスがいいステータスだと思う。


スキルはパッと見て解るものが五槍撃ぐらいか。槍持ってるし五連の突きだろうな。


鰐噛って実際に噛むのか槍のスキルをそう呼んでるのかわからないな。ローリングって事は回転を加える事も出来ると。


後は称号の水の守り手、これは大森林の水場を取り仕切ったりしているのだろうか。





「こんにちは。人間の勇者さん。あらあら。そこに寝てるのはレオンちゃん?ホントにレオンちゃん負けちゃったの??」





そう言いながら女の獣人、うーん。なんの獣人なのかわからないな。色が白くてスラッとしている。鳥系ってのは翼で解るんだが・・・





「一応そうなるな。疑うんなら本人に聞いてみればいい。いつ起きるのかは知らないがな。」





「へぇ~。凄いわねぇ~。サルパおじいさまに聞いたけどあの獣見知りのピーちゃんが一発で背中に乗せてくれたんですってね。そうさせる何かがあなたにはあるのかしら?」





凄く綺麗な人だが舐めるような視線でジロジロみるのはやめてほしい。だったら覗き見する様でどうかと思う所もあるけどこっちも観察だ。





ミズホ・アーニフェンデ





獣人 鴇族 女性





レベル 55





物攻 320





魔攻 320





防  100





敏  200





スキル 陽炎鎌 大車輪 脊黒羽





称号 鴇族族長 5大獣老 魅惑の戦乙女








鴇族?あぁ、トキか。現実世界でじゃ生の鴇なんて見た事ないからなぁ。こっちでも珍しいのだろうか。





って言うかステータスは見た目とは大違いでバリバリのアタッカーじゃねーか。レオンより低いが鰐族のガジュージより高い物攻。サルパが獣老の中で一番かと思っていた魔攻もその上をいく。


スキルについては不明なモノばかりだな。陽炎鎌とあるから鎌を使うんだろうが俺が良く知ってる鎌なのかゲームで度々出てくる大鎌なのか。


それに大車輪ってなんだ?回るのかな?脊黒羽とかさっぱりだし。


称号にある魅惑の戦乙女も想像できないな。謎の多い女性だ。





(む。こいつは鴇族か。恐らくだが純血種はもはやこの娘しか残っていないはずだ。鴇族の羽は魔力が豊富に蓄えられているため一時、人間に乱獲されたのだ。不憫で一度我も鴇族と共に闘った事もあるがその後自然と減っていってしまった。)





そうなのか。ホント人間ってその辺り見境ないよな。少し申し訳なく思う。





「サルパから聞いてないのか?俺はドラゴンと契約したんだ。ピーちゃんはその辺りを感じたのかも知れないな。で、あんた、ミズホさんは鴇族なんだな。」





「!?・・・あらぁ~。良く知ってるわね。初めての人で私の事わかる人ほとんどいないのよ?」





「こいつ何者だ!?まさか本当に・・・!」





ミズホとカジュージはそうとう面食らったようだ。そりゃあ見ず知らずのしかも人間に素性を当てられたら気味が悪いと思うけど。





「それはそうだろうな。その綺麗な見た目でバリバリのアタッカーなんてな。陽炎鎌ってどんなスキルなんだ?想像できん。」





「これは信じるしかないみたいね。隠し事も出来そうにないわ~。」





俺が視えるのはステータスだけだけどな。心の中が読める訳じゃない。





「余計な労力を使わなくて済むしそうしてもらえると助かる。そこのレオンみたいな事はもうめんどくさい。それに俺と契約したドラゴン。リオウと言うんだがそいつが言うにはあんたの種族ももうあんただけなんだろう?あまり戦場で無茶しないほうがいいんじゃないのか?」





「・・・・ありがとう。解ってはいるんだけどね~。いいわ。私はあなたに協力しましょう。私たちの為に闘ってくれたドラゴンと契約しているのなら鴇族にとっては敬うべき相手です。なんでも言ってちょうだいね~。」





ミズホは信じてくれたようだ。良かった。後は鰐のおっさんだが・・・





「あんたはどうだ?鰐族の族長。」





「・・・・」





「やるというのなら相手にはなるぞ。あまり気は進まないが。」





「ガジュージ様!この方、ギンさんは信用できる方だと思います!父上が無理に戦いを挑み相手をしただけなのに最後は父の命を救ってくれたのです!」





ハビナが信じて貰えるよう援護してくれた。サルパのじいさんも何か言ってくれよな。





「ハビナちゃんがそこまで言うのなら、と言いたい所だが僕はレオンさんに直接聞いてみたい。レオンさんが従うのなら僕もそうする。レオンさんが反目するのなら僕もそうするだろう。」





「ガジュージ様・・・」





「レオンを崇拝しているのか。だが俺の見たところレオンとはパワーで若干劣ってはいるがかなりいい勝負するんじゃないのか?蒼炎の武人になった時のレオンは強かったからどうかわからんが。」





「なっ・・・!貴様、蒼炎のレオンさんに勝ったというのか・・・!いいだろう。その辺りも含めてレオンさんの指示を仰ぐ。」





(ふむ。我の見立てだとこの鰐族の若者はまだ力が眠っているようだな。鴇族の娘についても何か隠しているな。ちなみにさきの獅子族も伸びるぞ。親子共にな。)





へぇ。ステータス上で視えない何かがあるのか。リオウの目と俺の竜眼は違うのかな?やはりオリジナルという事か。竜眼だけに頼っているといつか痛い目を見るかもしれないな。気を付けよう。





「ならばレオン坊が起きるまでゆっくりさせてもらうとするかのう。ここに露天風呂は無いが普通の風呂はあったじゃろう?」





「うん。サルパ様のところのお風呂にはかなわないけどなかなかの大浴場はありますよ。」





サルパの問いにハビナが答える。ん?サルパの顔がにやにやしているが・・・まさか、サルパのやつ露天風呂でなくても湯けむり乱舞が使えるのか。





「うひょひょひょ。皆の者も疲れたろう。まずは汗を流してさっぱりしてからじゃて。ささ、ハビナ嬢もミズホ嬢も遠慮せずにな。」





あの顔。間違いないな。





「おい、女性陣。施錠はしっかりしておけよ。」





「ん?私とミズホ様がいる風呂に覗きに入るような命知らずは獣人にはいないと思うよ?」





「あら。そうねぇ~。もしそんなのがいたら私の鎌が大事な所をサックリ逝っちゃうかも~。」





女性陣はふふふっと笑いながら浴場へ向かっていった。





「おい、サルパのじいさん。あんた、やるのか?あのミズホっていう鴇の獣人は多分半端じゃないぞ。」





「うひょひょひょひょ。ワシの湯けむり乱舞を舐めるでないぞ!ここで怖気づいては賢人の名がすたるわい!」





賢人はそんな事しないけどな。





「そうか。せいぜい死ぬなよ。」





その後大浴場では








きゃあ!だ、誰か、誰かいるわ!





あんっ変なところ触らないで!





ひゃう!そこはダメ!





うひょ~!!他の種族はまた違った味わいがあってええの~!





誰だ!ギンさん以外だったらボコボコにしてやる!





ハビナちゃん、落ち着いて気配を感じるのよ!私がおばあちゃんに聞いた通りなら、こうすれば・・・





(甘いわ!ワシの湯けむり乱舞は無敵よ!ほ~れ!ほ~れ!うひょひょひょひょ!・・・むむっ!・・・なんじゃと!?湯けむりが、急速に高まった冷気によって湯けむりが薄くなってきておる!このままではマズイ!?)





・・・・・・





あら、サルパおじいちゃん。こんな所で何をしてるのかしら?





ち、違うんじゃ!ミズホ嬢!いつの間にか迷ってしまって・・・相変わらず綺麗じゃのぉ・・・





サルパ様?ボケるのにはまだ少し早いのではありませんか?





ハ、ハビナお嬢ちゃん!あぁ、大層なお胸をお持ちじゃの、う、うひょひょ・・・





おらぁ!このエロ猿じじい!死にさらせ!だったらギンさん連れてこい!





ぎゃあ!





おじいちゃん?私の鎌よ~く切れるのよ?忘れちゃった?





い、いやっ!そこは!あああああ!!・・・








大浴場にサルパの絶叫が響いたのだった。

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