第35話 決着

レオンに向かって走り出した直後。





(む。銀次よ、あの蒼い炎には注意せよ。なかなかの威力を秘めている様だぞ。)





「確かに見るからに喰らったらヤバそうな見た目だな!」





俺はリオウの助言もあって拳型に集めていた魔力をさらに集めてグローブ状になるように調整した。あの蒼炎を直接喰らったり触ったりしたらまずそうだと判断してだ。





ガン!ガン!ゴン!シュオ!ガン!ゴン!





「ガオオオオ!!!受けてばかりでは俺は倒せんぞ!!」


(もっともこの俺、レオンの拳をここまで受け続けられる人間がこの世界に何人いるか、だがな。)





次々と流れるようにレオンから拳が飛んでくる。攻撃も重たくなっている気がするぞ。


レオンのスキル獅子の咆哮は自己バフの効果も秘めているのだろう。


竜眼りゅうがん(そう名付ける事にした)でステータスの確認をしてみたいがレオンの手数がその余裕を与えてくれない。





「ぐっ・・・!この!いい加減しつこいんだよ!!『殲滅する光アトミックレイ』!」





ヂュン!





ブシュウ!





レオンの言う通り守るだけじゃ勝てないという事で竜言語魔法の威力を最小限、範囲も極力狭めた結果、範囲殲滅のアトミックレイが細いレーザーの様になってレオンの肩を貫通した。上手く調整できたようで安心だ。





「ぐあっ!!な、なんだ!?その魔法は!この俺の身体をたやすく貫通させるとは・・・!」





「父上!スドウギンジ、いえ!ギンさんの力はよくわかったでしょう!?これ以上その状態を維持していると身が危険です!」





ギンさん?それは俺の事か?ハビナの奴変な略し方しやがって。


レオンの[獅子の咆哮レオ・ハウリング]によって得られる能力ブースト状態は何か制限があるみたいだな。確かに制限なしでパワーアップなんて都合がよすぎるからな。





「黙れハビナ!父の勇姿とくと目に刻み付けよ!オ゛オ゛オ゛オ゛!!ガアアアアア!!」





ドン!





レオンの蒼炎の闘気がより一層強く大きく立ち上っている。


決着を着けようという訳か。





(銀次。あの蒼炎の闘気はやつ自身の魔力を燃やしているようだ。長時間維持すれば魔力が尽きそれ以上となると生命を燃やす必要がある。だがそのリスクに見合った力がありお前の防御力以上の攻撃力があるかもしれぬ。)





「なるほど。背水の陣という訳か。」





リオウの分析によるとそういう事らしい。さてどうする?竜言語魔法を周りを考えずに使うかこちらも覚悟を決めて肉弾戦で受けるか。





(我が言っていたもう一つの特性を使うがいいだろう。それは・・・)





「・・・なるほどな。ステータス自己変動か。面白そうだ!」





リオウによると自分のステータスの範囲で値を自由に割り振ることが出来るという。現状俺のステータスがこうだ。





ギンジ・スドウ





人間 男性





レベル 25





物攻 600





魔攻 600





防  600





敏  600





スキル オートMリカバー 双飛竜 差し伸べる手 血の契約





称号 転移者 勇者 契約者





リオウとの契約によってステータスがおかしなことになっている。レオンの攻撃も余裕で受けられるだろうがレオンの命を懸けたスキルによってこれに近いもしくは上回る可能性があるだろう。


これに先程リオウに聞いた自己変動をしてみる。





レベル 25





物攻 1000





魔攻 200





防  900





敏  300





全体の総量は変えられないが好きなように変更できるという事か。元の高いパラメータのおかげで前衛、後衛何でもこなせそうだ。


今回は攻撃と防御に値を振ってみた。敏捷は急に高くなりすぎて正直いって体が上手くついて行かない部分があった。がこれでも以前の西城より高いんだよな。





(どうだ?これは大層便利だぞ?おそらくというか感覚でしかないが他のドラゴンはこの特性は持っていないように思うぞ。)





「ああ!リオウ。これは最高に使えそうだ!」





(そうであろう!)





俺の中にいるリオウが胸を張ってえばっている、ような気がする。見えないから多分でしかないけどな。








「これで最後だ!我が渾身の一撃受けてみよ!」





「来な!聞き分けの悪い動物にはしつけが必要だ!」





「なめるなぁぁぁあ!!蒼炎の塵となれぇぇぇぇぇ!!!」








ドゴオオオオン!!








レオンの蒼炎を纏った一撃を俺は避ける事はせずに両手で受けた。


防御の値をステータス振分で高めているのにもかかわらずなかなかに重い。


変動させていなかったら死ぬことはないと思うがかなりのダメージを貰ったかも知れないな。





「これでも通らんか・・・!!」





「いや、かなりヒヤッとしたがな。・・・フッ!」





ズドン!





「父上!」





「レオン!」





俺はレオンの拳を受けていた両手を素早く離しそのまま掌底を顔面へ叩き込んだ。


レオンはそのまま仰向けに倒れ天を仰いでいる。








「ぐ・・こ、ここまでか・・・俺の命と引き換えにしてやろうと思ったんだが・・・ぐ、ぐおおおおおお!!」





レオンの身体を覆う蒼炎の闘気が消え元に戻るかと思いきやレオンの身体は蒼いまま苦しそうに呻きだした。





(限界を超えた代償だな。自身の炎がこやつを焼こうとしているようだ。抑えるだけの魔力も力に変えてしまったのだろう。)





「そうか・・・こいつはもう・・・回復魔法も効果がないのか・・ん?これは・・・」





「父上!だから危険だとあれほどっ・・・!」





「ハ、ハビナか・・・どうやら俺はここまでのようだ・・・お前の見つけた人間は俺より強いようだな・・・よかろう・・お前たちの結婚を認めよう・・・スドウギンジ、いやギンジ殿・・・ハビナを娘をどうかよろしく頼む・・・出来れば獅子族のやつらの事も面倒をみてくれると助かるぞ・・・」





「父上っ!死んではなりません!」





レオン様!





レオン様の勇姿末代まで語り継ぎます!





結婚を認めようって勝手に話を進められても困る。全くこういう手合いは人の話を聞かないからなぁ。





「レオン。勝手に話を進めるな。俺は結婚する気も獣人の族長をやるつもりはないんだよ。」





「そうか・・・それを決めるのも勝者だが・・・出来る事なら鍛えなおしてもう一度お前と闘いたかったぞ・・・」





「ならそうすればいい。[差し伸べる手マジックギフト]」





スキルを使うと俺の手から優しい銀色の光がレオンに向けて流れ始めた。レオンに対して出来る事がないか考えていたらこのスキルの使い方が頭に流れてきた。





「む・・・こ、これは!魔力を使い果たしていた体に魔力が流れ込んでくる!これなら制御出来るぞ!おおおおおおお・・・・ふぅ、ふぅ、な、なんとかなったか・・・」





「父上!父上!ギンさん!父上は!?」





「恐らく眠っただけだろう。その内目を覚ますだろう。」





「わああああぁぁぁ!!ありがとうギンさん!倒した相手を助けてくれるなんて!スキ!」





ハビナが泣きながら俺に抱きついてきた。く、くそ!胸があたる!





「や、やめろ!レオンがまた起きてくるぞ!」





そんなの関係ないと言わんばかりにハビナはぐいぐいとそのデカい胸を押し付けてくる。こいつわざとだな!?呼吸をフー、フーと荒くしている。





ああ!ハビナ様が発情している!?





くそぅ!人間め!





でもレオン様より強いんだぞ・・・?





殺、せないよなぁ・・・





他の獣人もあきれている。なんというか一人で倒れているレオンが不憫になってきたな。

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